メンマなどの原料としても知られる発酵タケノコは、自然の微生物に任せて発酵させると仕上がりの味や品質にばらつきが出やすく、発酵の過程で亜硝酸塩が一時的に増えてしまうことも課題とされています。これを解決する手がかりとして、特定の乳酸菌をあらかじめ選んで加える『スターター培養』という方法があります。今回紹介する研究では、単独または複数の乳酸菌を組み合わせてタケノコを発酵させ、酸味の変化や香りの成分、そして安全性に関わる亜硝酸塩の挙動がどう変わるかを調べています。

どんな乳酸菌をどう使ったのか

研究チームは、Leuconostoc mesenteroides、Limosilactobacillus fermentum、Lactococcus cremorisという3種類の乳酸菌を使い、それぞれを単独で加えた場合と、組み合わせて加えた場合とで、タケノコの発酵の様子を比較しました。特に注目されたのは、Leuconostoc mesenteroidesとLactococcus cremorisを組み合わせた区分(記事内ではMCと呼ばれています)です。この組み合わせでは、酸の生成が進みやすくなったほか、発酵中に一時的に高まる亜硝酸塩のピーク値が、比較対象と比べて72%低下し、そのピークが現れるタイミングも24時間早まったことが報告されています。単独の菌株ではこうした亜硝酸塩の抑制効果はここまで明確には見られなかった点も、複数菌株を組み合わせる意義を考えるうえで重要な結果です。

香りの成分はどう変わったのか

乳酸菌を加えて発酵させたタケノコでは、有機酸の含有量が増える一方で、香りの主成分が酸系の香りからアルデヒド系の香りへと変化したことが示されています。中でもMC(Leuconostoc mesenteroidesとLactococcus cremorisの組み合わせ)の区分では、ノナナール、オクタナール、(E)-2-ノネナールといった代表的なアルデヒド類の『匂いへの寄与度(オドーアクティビティ値)』が最も高くなったとされています。さらに、単独の菌株ごとに異なる香りの特徴もみられました。Limosilactobacillus fermentumやLimosilactobacillus mesenteroides単独の発酵では不飽和アルデヒド類が増える傾向があり、これは酸性の環境下で植物由来の酵素の働きが強まり、香りのもとになる成分が引き出されやすくなったためではないかと考察されています。一方、Lactococcus cremorisを使った発酵では、β-グルコシダーゼという酵素の働きにより、糖と結びついた状態で存在していた前駆物質からリナロールという香り成分が遊離してきたと説明されています。

この研究をどう読むか

この研究は、特定の乳酸菌の組み合わせを使うことで、発酵タケノコの酸味の出方や香りの特徴、さらには亜硝酸塩の挙動をある程度コントロールできる可能性を示したものです。ただし、これはひとつの研究で得られた結果であり、実際の製造現場での再現性や、他の品種・条件での効果まで確定したわけではありません。健康への効果や安全性の保証を断定するものではなく、あくまで発酵食品の品質を安定させるためのスターター設計の一つの手がかりとして報告されている点に留意してください。

まとめ

今回の研究では、乳酸菌の種類や組み合わせを工夫することで、発酵タケノコの酸味・香り・亜硝酸塩の生成パターンが変化することが示されました。特にLeuconostoc mesenteroidesとLactococcus cremorisを組み合わせたスターターは、安全性に関わる亜硝酸塩の低減と、好ましいとされるアルデヒド系の香り成分の増加の両方に関わっている可能性が示唆されています。発酵野菜の品質を安定させる技術として、今後さらに検証が進むことが期待される分野といえるでしょう。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Qian Zhu, Mengling Peng, Jiayu Gu, et al. Effects of single and mixed lactic acid bacteria inoculation on physicochemical properties and volatile flavor compounds of fermented bamboo shoots. エルダブリューティー (2026). DOI: 10.1016/j.lwt.2026.119800. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.