掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: DataCite
研究の目的:卵の殻は原料になるか
ヒアルロン酸は、工業的には鶏のとさかから取り出す方法と、微生物に作らせる方法で生産されています。著者によると、どちらも費用がかかるため、より手に入りやすい原料が探されています。その候補の一つが、食品工場などから廃棄物として出る卵の殻です。
注目されているのは、殻の内側に張り付いている薄い膜(卵殻膜)です。論文によれば、この膜は卵の重さの約1%を占め、成分の約90%がたんぱく質で、ある特許の情報では5〜10%のヒアルロン酸を含むとされています。この研究は、卵の殻からヒアルロン酸を取り出すためにこれまで報告されてきた方法を比べ、それを背景に著者自身の実験結果を評価することを目的としています。
これまでに報告された方法と収量
著者がまとめた文献によると、ほとんどの方法は、まず膜を殻の硬い鉱物部分から分離することから始まります。分離は機械的な方法、薄い酸、または酵素で行われ、膜を回収できる割合は物理的な方法で85〜95%、化学的・酵素的な方法では最大98〜99%と報告されています。
次に、たんぱく質を分解する酵素で膜のたんぱく質を壊し、ヒアルロン酸を液体中に溶け出させます。ある特許では、パパインやペプシンなどの酵素を使い、得られたものをアルコール(エタノール)で沈殿させ、アセトンで洗って精製しています。
文献に報告された収量は、膜1グラムあたり、トリプシンで44.8ミリグラム、ペプシンで38.8ミリグラム、パパインで39.0ミリグラムでした。著者は、酵素を1種類ずつ使った場合の結果はほぼ同程度(39〜45ミリグラム)であるとしています。一方、パパインとパイナップル由来の酵素ブロメラインを組み合わせると62.2ミリグラム、酵素処理に超音波を併用した方法では膜の重さの5.1%と、収量が膜の重さの5〜6%程度まで高まると紹介しています。
著者の実験:殻をそのまま煮る方法
著者自身の実験では、膜を分離せず、砕いた卵の殻150グラムを0.9%の食塩水で12時間煮る、という簡単な水による抽出を試しました。その結果、乾燥した生成物が9.3グラム(殻の重さの6.2%)得られました。
しかし、加熱しながら重さの変化を調べる熱分析によると、この生成物のうち有機物は約25%にとどまり、殻の重さに換算すると約1.5%でした。残りは殻の主成分である炭酸カルシウムでした。さらに、この有機物には膜のたんぱく質も含まれるため、ヒアルロン酸そのものの量はこれより少ないと著者は述べています。つまり、殻を煮るだけの方法では、鉱物分を多く含む生成物になってしまうという結果でした。
研究から分かること
著者は、卵の殻からヒアルロン酸を得るには、膜の分離(または酸による炭酸カルシウムの溶解)、酵素によるたんぱく質の分解、アルコールによるヒアルロン酸の沈殿という三つの段階が必要だと結論づけています。殻を水で煮るだけの簡単な抽出はこれらの段階の代わりにはならない、というのがこの研究の示した点です。廃棄物である卵の殻を原料として活用するには、膜を扱う手順を踏むことが重要であることが、文献との比較と著者の実験の両面から示されています。
原著論文の著者・所属:Alieva Shakhzodakhon
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alieva Shakhzodakhon. EGGSHELL AS A SECONDARY RAW MATERIAL FOR HYALURONIC ACID PRODUCTION: COMPARISON OF ISOLATION METHODS. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-10-08. DOI: 10.5281/zenodo.23242067. 原著ライセンス:CC BY.