この研究は、ガーナの研究機関の研究論文です。

掲載誌:PLOS Climate

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ガーナ北部は半乾燥地域にあたり、農業の多くが雨に依存しています。著者らは、気候変動によってこの地域の干ばつへの弱さ(脆弱性)が強まり、作物生産や食料安全保障、農村の暮らしに深刻なリスクをもたらしていると指摘しています。

この研究の目的は、干ばつに対する脆弱性とその影響を評価するための実証的なモデリングの枠組みを構築することです。評価は2026〜2050年、2051〜2075年、2076〜2100年という三つの期間について、温室効果ガスの排出が比較的抑えられる想定(SSP1-2.6)と、排出が高い水準で続く想定(SSP5-8.5)という二つのシナリオのもとで行われました。

何を、どのように調べたか

研究チームは、国際的な気候モデル比較プロジェクトCMIP6に参加する五つの気候モデル(MRI-ESM2-0、EC-Earth3、IPSL-CM6A-LR、CESM2、HadGEM3-GC31-LL)の出力を用いました。これらはモデル特有の偏りを補正したうえで、0.25度という細かい空間解像度に落とし込んで使われています。

そこに複数の干ばつ指標が組み合わされました。降水量の多寡を標準化して表すSPI(標準化降水指数)、降水と蒸発需要の関係をみるRDI(偵察型干ばつ指数)、衛星観測から植生と水分の状態を捉えるNDDI(正規化干ばつ指数)、土壌の水分状態を示すSMI(土壌水分指数)です。さらに、衛星MODISから得た植生の活性度の指標であるNDVI(正規化植生指数)、人口密度、土地利用・土地被覆のデータを地理情報システム(GIS)の手法で統合し、複合的な干ばつ脆弱性の地図を作成したと報告されています。

用いた気候モデルは参照データセットと照合して検証され、年降水量については相関係数0.95、二乗平均平方根誤差3.4ミリメートル、気温については相関係数0.99、同誤差0.47〜0.74度という良好な再現性を示したとされています。

主な報告結果

著者らは、干ばつの厳しさが今後強まると予測しています。2100年までに平均気温は2.0〜3.9度上昇し、降水量は最大で19パーセント減少するという結果が示されました。

作物への影響については、トウモロコシ、ミレット(雑穀)、ソルガム、ラッカセイの収量が2050年までに25〜60パーセント低下すると見込まれています。なかでもトウモロコシは干ばつの厳しさとの負の相関が最も強く(相関係数マイナス0.72、p<0.01)、この傾向はマン・ケンドール検定によって95パーセント信頼水準で確認されたと報告されています。

脆弱性の地理的な分布については、調査対象地域のおよそ84パーセントが「高い脆弱性」に分類されました。その背景として著者らが挙げているのは、適応能力が限られていること、農業の80パーセント超が雨水に依存していること、49パーセントを超える世帯が食料不安を抱えていること、耕作地の利用が23パーセント未満にとどまること、水域が地域面積の5パーセント未満しかないことです。

一方で著者らは、降水量の予測には大きな不確実性が残っており、気温の傾向についてもモデル間で食い違いがみられることを述べ、気候影響のモデル化には難しさが伴うと認めています。

この研究が示すこと

この研究は、ガーナ北部において干ばつのリスクが地域全体に広く及ぶ可能性を、複数の気候モデルと干ばつ指標を組み合わせて地図の形で示したものです。

著者らは結論として、地区(ディストリクト)単位での干ばつへの備え、太陽光を利用した灌漑、指数型保険(気象の指標に連動して保険金が支払われる仕組み)、気候変動に適応した農業、そして国連防災機関(UNDRR)や仙台防災枠組の優先事項に沿った災害リスク軽減の取り組みが、この地域の強靭性を高めるうえで急務だと述べています。

著者:Theophilus Francis Kofitio(Ghana Irrigation Development Authority (ITID-GIDA))、Peace Korshiwor Amoatey(School of Engineering Sciences, University of Ghana)、Evans Asenso(School of Engineering Sciences, University of Ghana)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Theophilus Francis Kofitio, Peace Korshiwor Amoatey, Evans Asenso. Drought vulnerability assessment and its severe impact on crop production and livelihood of people: An empirical modelling of northern Ghana. PLOS Climate 2026-09-25. DOI: 10.1371/journal.pclm.0001038. 原著ライセンス:CC BY.