この研究は、中国、ジンバブエの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

サナギタケ(Cordyceps militaris)は、昆虫に寄生して育つキノコの一種で、食品や生薬の素材として使われてきました。この研究で著者らが取り上げたのは、その中に含まれる「多糖」と呼ばれる成分です。多糖とは、糖の分子がたくさんつながってできた大きな物質のことで、でんぷんや食物繊維も多糖の仲間にあたります。

著者らは、サナギタケの多糖が血液を固まりにくくする働き(抗凝固作用)を持つかどうかを明らかにし、機能性food素材や生物医学分野で利用するための科学的な手がかりを得ることを目的としたと述べています。

どのように調べたか

研究チームはまず、水で成分を抽出したうえでエタノールを加えて沈殿させる方法により、粗い状態の多糖(CC-1と呼ばれるもの)を取り出しました。次に、パパイン(タンパク質を分解する酵素)で余分なタンパク質を取り除き、透析という操作で不要な小さい分子を除いて、精製した多糖CC-2を得ています。

得られたCC-2については、成分の内訳(糖の総量、ウロン酸、タンパク質)を化学的な測定法で調べ、分子の大きさをゲル浸透クロマトグラフィーで、構成している糖の種類を高速液体クロマトグラフィーで分析しました。さらに赤外分光法や紫外分光法、走査型電子顕微鏡によって、構造や見た目の特徴を調べています。

血液を固まりにくくする働きについては、試験管内で、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン時間(TT)という3種類の凝固にかかる時間と、フィブリノゲン(FIB、血液が固まるときに働くタンパク質)の量を測定して評価しました。これらの時間が長くなるほど、血液が固まりにくい状態であることを示します。

報告された主な結果

精製した多糖CC-2の収率は2.16%でした。粗多糖CC-1と比べると、CC-2では糖の総量とウロン酸の含量が有意に高く、タンパク質の含量は減っていたと報告されています。分子量は5908.612 Daで、構成する糖はおもにラムノース、グルクロン酸、グルコース、ガラクトース、キシロースで、モル比はおよそ5:1:4:11:4でした。赤外分光の結果からはアセチル基とフラノース環構造の存在が示され、電子顕微鏡では不規則な塊と球状の粒子からなる微細構造が観察されています。

試験管内の試験では、CC-2はPT、APTT、TTのいずれも有意に延長し(P<0.001)、その延長はそれぞれおよそ2.10倍、2.46倍、2.79倍だったと報告されています。またフィブリノゲンの量も有意に低下させ(P<0.001)、この低下作用は陽性対照として用いられたブレビスカピンより優れていたとされています。

この報告が意味すること

著者らは、サナギタケの多糖が試験管内で明確な抗凝固作用を示し、複数の経路が関わる可能性のある仕組みと、はっきりとしたフィブリノゲン低下作用を伴うと結論づけています。3種類の凝固時間がそろって延長したことが、単一の経路だけでは説明しにくいという見方の根拠になっています。

今回示されたのは、あくまで試験管内での測定結果と、精製した多糖の化学的・構造的な性質です。それでも、これまで食品や生薬として使われてきた素材の成分について、どのような糖からできていて、血液の固まり方にどう影響するのかという基礎的な情報がひとまとまりの形で報告された点に、この研究の意義があります。

著者:Cai-Fang Li(Department of Pharmacy, Xinxiang Central Hospital)、Li-gan Lu(Henan University Hospital, Henan University)、Jun-shang Liu(National R&D Center for Edible Fungus Processing Technology, Henan University)、Cheng-qi Liu(National R&D Center for Edible Fungus Processing Technology, Henan University)、Yan Ma(College of Agriculture, Henan University)、Shuang‐Shuang Zhang(National R&D Center for Edible Fungus Processing Technology, Henan University)、Zi-heng Jin(Henan Key University-Enterprise R&D Center for Special Foods)、Changyang Ma(Henan Key University-Enterprise R&D Center for Special Foods)、Jinmei Wang(Henan Key University-Enterprise R&D Center for Special Foods)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cai-Fang Li, Li-gan Lu, Jun-shang Liu, et al. Extraction, purification, characterization, and in vitro anticoagulant activity of polysaccharides from Cordyceps militaris. Frontiers in Nutrition 2026-09-17. DOI: 10.3389/fnut.2026.1915697. 原著ライセンス:CC BY.