この研究は、ポルトガルの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Public Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何のための研究か
働く人の身体寸法(人体計測データ)や栄養状態の情報は、作業環境や作業台の設計、職場の健康対策を考えるうえで欠かせない基礎資料です。研究チームは、こうしたデータが仕事に関連する不調や事故の予防につながると位置づけています。
なかでも小売業は、働く人の顔ぶれが多様であることに加え、長時間の立ち仕事や手作業による荷物の取り扱いなど身体的な負担の大きい場面が多く、検討する意義が大きい分野だと著者らは述べています。この研究は、ポルトガルの食品小売企業で働く人々の人体計測データベースを作成し、あわせて栄養状態を評価することを目的としたものです。得られた情報は、作業台や作業内容の設計を見直す根拠として、また働く人の健康を支える取り組みの土台として使うことが想定されています。
どのように調べたか
調査は、ある一時点の状態をまとめて把握する横断研究として行われました。対象となったのは、ポルトガル北部のスーパーマーケットで働く155人で、内訳は女性117人、男性38人、年齢は18歳から64歳までです。
一人ひとりについて、28項目の人体計測(身長や座った姿勢での肘の高さ、腰まわりの幅など、身体各部の寸法)と、7項目の身体組成に関する指標が測定されました。
報告された主な結果
論文によると、平均的な寸法は全体として男性のほうが女性より大きい傾向が見られました。ただし例外があり、腰の幅(hip breadth)と座位での肘の高さについては、この傾向があてはまらなかったと報告されています。
体重の状況については、過体重(標準より体重が多い状態)の割合は男性で高く、一方で肥満は女性により多く見られたとされています。著者らは考察のなかで、対象者全体として体重が過剰な人の割合が高く、身体活動の水準が低いことを指摘しています。
この報告が示すこと
著者らは、こうした結果をふまえて、人体計測データを最新のものに更新していく必要があると述べています。また、体格の違いを幅広く受け止める設計の考え方(インクルーシブな人間工学的設計)と、職場での健康増進の取り組みを組み合わせて進めることの重要性を強調しています。
働く人の身体の実測データと栄養状態をあわせて把握することが、その職場に合った作業環境を考えるための出発点になる、という視点を示した研究といえます。
著者:Tânia T. Silva(ALGORITMI Research Center/LASI, University of Minho)、Eduarda Dias(Department of Environmental Health, ESS, Technical University of Porto)、Inês Lapa(ALGORITMI Research Center/LASI, University of Minho)、D-Filipa Ferreira(ALGORITMI Research Center/LASI, University of Minho)、Paulo C. A. Filho(ALGORITMI Research Center/LASI, University of Minho)、Ana Colim(ALGORITMI Research Center/LASI, University of Minho)、Pedro Arezes(ALGORITMI Research Center/LASI, University of Minho)、Paulo Carvalho(RISE-Health, Center for Translational Health and Medical Biotechnology Research (TBIO) ESS, Technical University of Porto)、Matilde A. Rodrigues(ALGORITMI Research Center/LASI, University of Minho)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tânia T. Silva, Eduarda Dias, Inês Lapa, et al. Anthropometric and nutritional analysis of Portuguese retail workers for ergonomic design applications: a cross-sectional study in northern Portugal. Frontiers in Public Health 2026-09-17. DOI: 10.3389/fpubh.2026.1822394. 原著ライセンス:CC BY.