この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとした研究か

体重と身長から計算するBMIではなく、体に占める脂肪の割合である体脂肪率(BFP)を基準に肥満を判定した場合、大学生において肥満と抑うつがどう関係するのかは、これまではっきりしていませんでした。また、肥満と抑うつが同時に見られる状態で腸内細菌にどのような違いが生じるのかについても、十分に調べられていなかったと研究チームは述べています。

そこで著者らは、大学生を対象に、肥満と抑うつが併存する割合を調べるとともに、体脂肪率で定義した肥満が抑うつと関連しているかどうかを検討し、さらに両者が重なった人の腸内細菌の特徴を探索的に調べました。

どのように調べたか

研究チームは906人の大学生を集め、肥満と抑うつが併せて見られる割合と、体脂肪率で定義した肥満と抑うつとの関連を分析しました。関連の分析にはロジスティック回帰という統計手法が用いられ、年齢などほかの影響要因を調整したうえで関係の強さが検討されています。

続いて、群ごとに年齢と性別の分布がそろうように104人を選び、4つのグループに分けました。肥満があり抑うつもある群(G1)、肥満はなく抑うつがある群(G2)、肥満はあるが抑うつはない群(G3)、どちらもない群(G4)です。それぞれの便の検体について、腸内にどのような細菌がどれくらいいるかを調べる16S rRNA遺伝子配列解析が行われました。

報告された主な結果

肥満と抑うつが併存していた割合は9.71%でした。共変量を調整した後も、体脂肪率で定義した肥満は抑うつと有意に関連しており、オッズ比は1.62(95%信頼区間1.10〜2.38)と報告されています。オッズ比は、ある特徴を持つ群でその状態が見られやすいかどうかを表す指標で、1より大きいほど関連が強いことを意味します。

腸内細菌については、一人ひとりの腸内にいる細菌の多様さを示すα多様性に群間の有意差は見られませんでした。一方、人と人との間で細菌の構成がどれだけ違うかを示すβ多様性では、G1とG4の間に有意な差が認められました(P<0.05)。細菌の種類ごとの構成を記述的に見たところ、G1ではAkkermansiaが減少し、FusobacteriumとCollinsellaが増加するなど、いくつかの属の相対的な量に違いがあることが示唆されました。

また、細菌の遺伝子情報から働きを推定するPICRUStという手法による解析では、G1とほかの群との間で、推定される代謝経路に違いがあることが示唆されました。そのなかには、細菌の外膜成分であるリポ多糖の合成に関わる経路の推定存在量が、G2やG4より高いという結果が含まれています。

この研究が示す意味

著者らは、大学生において体脂肪率で定義した肥満が抑うつと関連していたと結論づけています。一方で腸内細菌に関する結果については探索的なものであると位置づけ、肥満と抑うつが同時に見られる状態が、腸内細菌の構成の違いや推定された機能上の違いと関連している可能性を示すにとどまると述べています。さらに、機能や炎症を直接測定したうえで、より大規模かつ長期にわたって追跡する研究が必要だとしています。

体重だけでは捉えにくい体脂肪の量という観点から心の健康との関わりを見た点、そして両者が重なる状態に腸内細菌という切り口を持ち込んだ点が、この報告の特徴と言えます。

著者:Yingli Xu(School of Public Health, Ningxia Medical University)、Zhenchi Niu(School of Public Health, Ningxia Medical University)、Long Zhou(School of Public Health, Ningxia Medical University)、Wenqing Ding(School of Public Health, Ningxia Medical University)、Jing Li(School of Public Health, Ningxia Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yingli Xu, Zhenchi Niu, Long Zhou, et al. Associations of body fat percentage-based obesity with depression and comorbidity-related gut microbiota features in college students. Frontiers in Nutrition 2026-09-17. DOI: 10.3389/fnut.2026.1906822. 原著ライセンス:CC BY.