この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of the Science of Food and Agriculture
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ「加熱しない」保存技術を調べたのか
殻付き卵は、殻にある無数の小さな穴(気孔)を通じて水分と二酸化炭素が少しずつ抜けていきます。その結果、卵白のpHが上がり、卵白を包むゲル状の構造がゆるんで水っぽくなり、卵黄を包む薄い膜(卵黄膜)も弱まって卵黄が平たくつぶれていきます。著者らは、こうした劣化が卵の商品価値を下げるだけでなく、微生物汚染を受けやすくする点でも問題だと整理しています。
そこで注目されているのが、熱を使わない保存技術です。この研究では、超音波(人の耳に聞こえない高い周波数の音波)と電解水(食塩水を電気分解して得られる殺菌性のある水)という二つの手法を取り上げました。著者らは、それぞれを単独で使った場合と、二つを同時に使った場合とで、貯蔵中の卵の内部品質や加工特性がどう変わるのかを比べることを目的としています。
どのように試したか
使われたのは、洗卵していない産みたてのロマン・ホワイト種の卵です。ひび割れのあるものは除き、室温(22±2℃)で湿度を管理しない条件のもとに5週間置いて、毎週の変化を追いました。
卵は4つのグループに分けられました。何も処理しない対照群、200ワットの超音波を2.5分間かけた群、有効塩素50 mg/Lの電解水(pH 7.5)に2.5分間浸した群、そして電解水に浸したまま同じ条件で超音波をかけた併用群です。
測定したのは、重量の減り方、卵白の高さと卵重から算出するハウユニット(卵白の質を表す代表的な指標で、新鮮なうちは80程度あり時間とともに下がります)、卵黄の高さと直径の比である卵黄係数(新鮮な卵では0.45前後)、卵白と卵黄のpH、水溶性固形分、卵白を泡立てたときの起泡力と泡の安定性、そして卵殻の破壊強度と卵黄膜の強度です。データは3反復の平均として統計処理されました。
報告された主な結果
著者らによれば、すべての処理群が対照群より品質の保持に優れていました(P<0.05)。最も効果が高かったのは電解水と超音波の併用群で、5週間後の重量減少は6.98%(対照群は9.38%)、ハウユニットは48.82(対照群は37.38)、卵黄係数は0.22(対照群は0.15)でした。単独処理では超音波群がハウユニット45.47、電解水群が42.82と報告されています。
pHについても、併用群では上昇が最も抑えられました。卵白のpHは対照群で9.42まで上がったのに対し、併用群では9.18にとどまりました。卵黄のpHも対照群の6.44に対して併用群は6.23でした。卵白の水溶性固形分は、卵黄から水が移動することで貯蔵中に増えていきますが、対照群の17.37%に対し併用群は16.05%と、その進行が緩やかでした。
一方、泡立ちに関する特性では傾向が少し異なります。貯蔵終了時の起泡力は対照群の475に対し、電解水群770、超音波群793、併用群788で、超音波を含む処理が卵白の機能性を大きく高めていました。泡の安定性は対照群7、電解水群18.3、超音波群21、併用群13でした。著者らは、超音波によってタンパク質の溶けやすさや表面の性質が変わることが起泡力の向上に関係していると説明しています。
また、すべての処理で卵黄膜の強度が改善した一方、超音波を用いた群では卵殻の破壊強度がわずかに低下しました。著者らはこれを、超音波が液中で微小な気泡を発生・崩壊させる「キャビテーション」による機械的な作用によるものと推測しています。
この報告が示すこと
著者らの結論は、電解水と超音波を組み合わせることで、どちらか一方を使うよりも卵の品質保持と機能性の向上が進む——つまり相乗的な効果がみられた、というものです。殻の表面を清浄化する働きと、殻の微細構造に変化を与える働きが同時に作用することが、その背景として挙げられています。
熱をかけずに、常温での貯蔵中の劣化をどこまで抑えられるかを、内部品質と加工特性の両面から一つの試験でそろえて比べた点に、この報告の意味があります。同時に、超音波を使うと卵殻の強度がわずかに下がるという結果も示されており、効果と引き換えになる側面も併せて報告されています。
著者:Orhan Atakan(Department of Food Engineering Canakkale Onsekiz Mart University Canakkale Türkiye)、Cengiz Caner(Department of Food Engineering Canakkale Onsekiz Mart University Canakkale Türkiye)、Muhammed Yüceer(Department of Food Processing Canakkale Onsekiz Mart University Canakkale Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Orhan Atakan, Cengiz Caner, Muhammed Yüceer. Sustainable preservation of shell eggs using ultrasound and electrolyzed water: individual and synergistic effects. Journal of the Science of Food and Agriculture 2026-09-17. DOI: 10.1002/jsfa.71077. 原著ライセンス:CC BY.