著者の所属・活動拠点の国は、イギリス、トルコです。
掲載誌:Ultrasonics Sonochemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、食品の微生物を減らす非加熱技術として期待される高周波超音波について、細菌への作用と緑茶抽出物を組み合わせた際の効果を調べました。背景には、超音波がどのように抗菌作用を示し、天然の抗菌成分とどう作用し合うかが十分に分かっていないことがあります。
何を、どのように調べたか
研究チームは、細胞表層の構造が異なるグラム陽性菌とグラム陰性菌の複数の食品関連細菌を対象に、760キロヘルツの高周波超音波を単独、または緑茶抽出物と組み合わせて処理し、処理順序による違いも調べました。培養で増殖できる菌数から抗菌効果を評価するとともに、細胞を一つずつ分析するフローサイトメトリーで細胞膜の電位や物質の通りやすさを測定し、走査電子顕微鏡で細胞表面の変化を観察しました。また、大腸菌とリステリア・イノキュアでは、培地条件を変えた培養によって、死に至らない細胞の損傷も調べました。
主な報告結果
著者らによると、超音波単独で培養可能な菌が減る程度は小さく、全体としてグラム陰性菌のほうが影響を受けやすい傾向がありました。一方、細胞膜には大きな変化が見られ、特にサルモネラ・エンテリカでは膜の電位が失われたり、物質が通りやすくなったりしました。顕微鏡では、細胞全体が壊れるよりも、表層の局所的な変化が主に観察されました。緑茶抽出物との併用では、サルモネラ・エンテリカとプロテウス・ミラビリスで相乗作用が見られた一方、緑膿菌では互いの効果を弱める拮抗作用が報告されました。一部の菌種では、先に超音波処理を行うと、その後の緑茶抽出物の作用が高まりました。また、大腸菌とリステリア・イノキュアでは、通常の菌数測定だけでは十分に捉えられない、死に至らない損傷が相当程度認められました。
この報告が示すこと
研究チームは、この条件の高周波超音波を、複数の処理を組み合わせる食品保存法の一要素になり得ると位置づけています。ただし、その作用は広範な殺菌よりも、程度の異なる細胞損傷が中心でした。著者らは、処理条件を菌種ごとに調整し、培養できるかどうかと細胞の損傷の両方から効果を評価する必要があると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Irem Soyler(School of Chemistry and Chemical Engineering, Department of Chemical and Process Engineering, University of Surrey, Guildford, United Kingdom; School of Technical Sciences, Konya Technical University, Konya, Turkiye)、Jorge Gutierrez-Merino(School of Veterinary Medicine, Faculty of Health and Medical Sciences, University of Surrey, Guildford, United Kingdom)、Madeleine Bussemaker(School of Chemistry and Chemical Engineering, Department of Chemical and Process Engineering, University of Surrey, Guildford, United Kingdom)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Irem Soyler, Jorge Gutierrez-Merino, Madeleine Bussemaker. Bacterial pathogen-dependent responses to high-frequency ultrasound-based hurdle treatments. Ultrasonics Sonochemistry 2026-11-01. DOI: 10.1016/j.ultsonch.2026.108141. 原著ライセンス:CC BY.