著者の所属・活動拠点の国は、中国、パキスタン、メキシコ、フランス、インドネシア、サウジアラビアです。

掲載誌:Ultrasonics Sonochemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな唐辛子の種を食品素材に

植物由来のたんぱく質への需要が世界的に高まるなか、食品加工で生じる副産物を有効に使う方法が探られています。唐辛子(トウガラシ属)の種は香辛料産業から出る副産物で、栄養に富むたんぱく質源として注目されています。しかし論文によると、種から取り出したままのたんぱく質は、水に溶けにくい、泡立ちや乳化(油と水を混ぜ合わせる働き)が十分でない、消化されにくいといった性質があり、食品への利用が限られていました。

研究チームは、加熱に頼らない加工技術でたんぱく質の構造を穏やかに変え、こうした性質を改善できないかに着目しました。使ったのは、短時間に高電圧のパルスを加える「パルス電界(PEF)処理」と、液体中に微小な気泡の生成と崩壊(キャビテーション)を起こして強いせん断力を生む「超音波(US)処理」です。両者は異なる仕組みでたんぱく質に作用するため、組み合わせる効果が期待されていました。ひよこ豆たんぱく質などでは併用の研究がありましたが、唐辛子の種のたんぱく質での効果は未検討だったと著者らは述べています。

何をどのように調べたか

研究チームは、中国・広州の市場で購入した乾燥唐辛子の種を粉砕し、脂質を除いたうえで、アルカリで溶かして酸で沈殿させる方法によりたんぱく質を分離しました。得られた「唐辛子種子たんぱく質分離物」の純度は約82%と報告されています。

このたんぱく質に、超音波のみ、パルス電界のみ、そしてパルス電界の後に超音波をかける順次処理を施し、未処理のものと比べました。比較した項目は、たんぱく質の内部に隠れていた部分がどれだけ表面に出てきたかを示す指標(遊離チオール基量や表面疎水性)、粒子の大きさや電荷、分子の立体構造、熱に対する安定性、さらに溶けやすさ、乳化性、泡立ち、保水・保油性、抗酸化活性、試験管内での消化性などです。

順次処理で最も大きな変化

論文によると、いずれの処理も未処理に比べて統計的に有意な変化をもたらしましたが、パルス電界の後に超音波をかける順次処理(論文中の条件名「PEF15+US15」)で最も大きな変化が見られました。たとえば遊離チオール基量は未処理の4.12 µmol/gから7.02 µmol/gへ、表面疎水性の指標は1870から2485へ増えました。研究チームはこれを、たんぱく質の折りたたまれた構造が部分的にほどけ、内側の部分が表に出てきたことを示すものと解釈しています。なお、処理をさらに長くした条件ではこれらの値がやや下がり、たんぱく質同士が再び集まった可能性などが考察されています。

溶けやすさ(溶解度)は、超音波のみで60.8%、パルス電界のみで58.8%だったのに対し、順次処理では75.2%に達しました。乳化に関わる指標も、乳化活性が未処理の13.3 m²/gから28.4 m²/gへ、乳化安定性が23.7%から35.4%へと向上しました。

構造面では、分子の形がより柔軟な状態へ組み変わり、結晶的な秩序が失われる方向の変化が報告されています。熱分析では、たんぱく質が熱でほどける温度が未処理の89℃から順次処理で約82℃に下がり、ほどけるのに必要なエネルギーも減っていました。これは処理によってすでに構造がゆるんでいたことを示すと著者らは説明しています。また、泡立ちや保水・保油性、抗酸化活性、試験管内での消化性も順次処理で高まったと結論づけています。消化性の計算式は唐辛子種子たんぱく質に合わせて調整されたものではなく、処理間の相対比較として用いたと論文は断っています。

この研究が示すこと

研究チームは、先にパルス電界でたんぱく質をややほぐしておくことで、その後の超音波がより効きやすくなる相乗的な働き(電気と音響の「結合」)があると考えています。ただし論文自身、この仕組みは今回の実験で直接確かめたものではなく、観察された変化と既存の知見に基づく有力な仮説だと明記しています。また、今回は実験室規模での構造と機能特性の評価にとどまっています。

それでも、加熱を伴わない穏やかな処理の組み合わせによって、副産物である唐辛子の種のたんぱく質を、溶けやすく扱いやすい素材へと変えられる可能性を示した点に、この研究の意味があります。

原著論文の著者・所属:Muhammad Faisal Manzoor(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China. Electronic address: [email protected])、Xin-An Zeng(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China; School of Food Science and Engineering, South China University of Technology, Guangzhou 510641, China. Electronic address: [email protected])、Zahoor Ahmed(Human Nutrition and Dietetics, School of Food and Agricultural Sciences, University of Management Technology Lahore, Pakistan)、Rana Muhammad Aadil(National Institute of Food Science and Technology, University of Agriculture, Faisalabad, Pakistan)、Silvia del Carmen Beristain-Bauza(Energy Engineering, Polytechnic University of Amozoc, Amozoc de Mota, Puebla, Mexico)、Abderrahmane Aït-Kaddour(Université Clermont Auvergne, INRAE, VetAgro Sup, UMRF, 63370, France; Deptartment of Food Science and Technology, IPB University, IPB Dramaga Campus, Bogor 16680, West Java, Indonesia. Electronic address: [email protected])、Muhammad Talha Afraz(School of Food Science and Engineering, South China University of Technology, Guangzhou 510641, China)、Marwa Ezz El-Din Ibrahim(Department of Food and Nutrition Sciences, College of Agricultural and Food Sciences, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Muhammad Waseem(Department of Food Science & Technology, The Islamia University of Bahawalpur, Punjab, Pakistan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muhammad Faisal Manzoor, Xin-An Zeng, Zahoor Ahmed, et al. Electro-acoustic coupling of sequential pulsed electric field-ultrasound treatment: A novel technique for modification of protein isolate extracted from Capsicum annum L. seeds. Ultrasonics Sonochemistry 2026-09-13. DOI: 10.1016/j.ultsonch.2026.108060. 原著ライセンス:CC BY.