著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

成分だけでなく、消化のされ方を比べる

研究チームは、母乳と乳児用ミルクで、たんぱく質や脂質が消化される過程にどのような共通点と違いがあるかを調べました。成分の配合だけでなく、消化中にできるたんぱく質の塊や、脂質の分解で生じる脂肪酸まで合わせて比較することが目的です。

対象は、配合の特徴が異なる市販の乳児用ミルク5種類、全粉乳、乳由来のたんぱく質原料4種類、母乳の計11試料です。母乳は産後4〜5か月の健康な授乳者5人から集め、等量ずつ混合しました。研究チームは乳児の胃と小腸の消化条件を実験室で再現し、各試料の変化を調べました。

たんぱく質は、分解の程度が近くても残り方に違い

胃の段階では、試料によってたんぱく質の分解の程度に大きな違いがありました。一方、小腸の段階では、多くの乳児用ミルクが母乳と同程度の見かけのたんぱく質消化率を示しました。母乳の値は約91%でした。この指標は、特定の処理で沈殿するたんぱく質がどれだけ減ったかを示すもので、体内に吸収された割合ではありません。

ただし、消化率が近くても、残ったたんぱく質の種類は同じではありませんでした。小腸の段階で、母乳では分析上のたんぱく質の帯がほぼ消失したのに対し、一部の乳児用ミルクでは乳清たんぱく質の帯が残りました。また、消化液を静置すると、母乳と乳児用ミルクは緩く浮く塊をつくり、全粉乳は底に沈む密な塊をつくりました。

脂質の分解でも、母乳への近さは一様ではない

消化前と胃の段階では、脂肪酸の組成に原料由来の特徴が強く残っていました。小腸の段階になると、一部の乳児用ミルクでは脂肪酸組成や、脂質の分解によって遊離した脂肪酸の構成が母乳に近づきました。母乳では遊離脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の寄与が比較的高く、全粉乳では飽和脂肪酸の割合が高いという違いも報告されました。

研究チームは、たんぱく質の構成、粒子の変化、たんぱく質消化率、遊離脂肪酸の放出、脂肪酸組成の5つの観点から、母乳との近さをまとめました。その結果、試料コードQCは全体として最も母乳に近く、粒子の変化やたんぱく質消化率、脂肪酸組成で近さを示しました。一方、遊離脂肪酸の放出では別の試料MSが最も近く、すべての観点で同じミルクが母乳に近いわけではありませんでした。

母乳との類似性は、ひとつの指標では捉えきれない

著者らは、この比較を製品の品質順位として解釈すべきではないとしています。各ミルクは複数の原料や配合が同時に異なるため、特定の成分だけが結果を生んだとは判断できません。また、実験モデルは乳児の胃内容物の排出や腸での吸収、個人差まで再現するものではありません。

この研究が示すのは、母乳との消化上の類似性には複数の側面があるということです。成分量や最終的な消化率だけでなく、たんぱく質の残り方、塊の構造、放出される脂肪酸にも目を向けることで、それぞれのミルクの消化の特徴が見えてきます。

原著論文の著者・所属:Bingyu Chen(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Qi Qi(Feihe Research Institute, Heilongjiang Feihe Dairy Co., Ltd., Beijing 100015, China)、Xuteng Wang(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Xinyi Zhang(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Xuchun Zhu(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Chao Yan(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Huiwen Guan(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Rong Jin(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Yu An(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)、Jie Yang(Feihe Research Institute, Heilongjiang Feihe Dairy Co., Ltd., Beijing 100015, China)、Fei Xu(Feihe Research Institute, Heilongjiang Feihe Dairy Co., Ltd., Beijing 100015, China)、Hongzhi Liu(Key Laboratory of Geriatric Nutrition and Health, School of Food and Health, Beijing Technology and Business University, Beijing 100048, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bingyu Chen, Qi Qi, Xuteng Wang, et al. Integrated Protein–Lipid Digestion Profiles of Human Milk, Infant Formulas, and Dairy Ingredients Under Infant In Vitro Digestion. Foods 2026-08-26. DOI: 10.3390/foods15172999. 原著ライセンス:CC BY.