著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

渋柿の規格外品をどう活かすか

スペインは、柿の品種「ロホ・ブリリャンテ」の普及によって世界第2位の柿の生産国になりました。一方で生産が急拡大したことで、時期によって供給が過剰になり、収穫後に売り物にならない果実も増えています。傷や生理的な障害があるもの、渋抜きが不十分なものは生食用の市場に出せません。

ロホ・ブリリャンテはもともと渋柿で、渋みのもとになる「可溶性タンニン」を多く含みます。可溶性タンニンは唾液中のたんぱく質と結びつき、口の中がざらざらと乾くような渋みを生みます。そのため加工品への利用が難しく、加熱によって渋みが戻ってしまうことも、これまでの研究で報告されてきました。

研究チームは、廃棄される渋いままの果実を原料にして、マルメロ(西洋かりん)のペーストのように、硬めのゼリー状で日持ちのよい柿ペーストを作れないかを調べました。加熱温度と砂糖の量が、渋みのもとである可溶性タンニンの量や、品質、冷蔵保存中の変化にどう影響するかを検証することが目的です。

温度と砂糖の量を変えて4種類を試作

研究チームは、規格外として出荷されなかった渋柿を使い、加熱温度(70℃または100℃)と砂糖の割合(柿と砂糖を混ぜた最初の材料に対して30%または50%)を組み合わせた4種類のペーストを作りました。微生物の増殖を抑えるため、レモン果汁を加えて酸性度を示すpHを4未満に調整し、糖度がおよそ65度になるまで煮詰めています。

できたペーストは4℃で2か月間冷蔵保存し、0日、15日、30日、60日の時点で、可溶性タンニンの量、pH、糖度、水分の状態、色、硬さなどを測定しました。また、ある程度の訓練を受けた20人の評価者が保存15日目の4種類を食べ比べて順位をつけ、買いたいかどうか、どれを最も買いたいかも答えました。

渋みのもとは大きく減り、保存中も増えなかった

論文によると、原料の生の柿には1グラムあたり7.3ミリグラム(没食子酸という物質に換算した値)の可溶性タンニンが含まれていましたが、完成したペーストでは0.44〜1.01ミリグラムでした。著者らは、果実の組織が壊れる過程で、タンニンがペクチンなどの細胞壁成分と結びつき、溶けにくい形に変わったことが考えられると説明しています。

製品1グラムあたりで比べると、砂糖50%のペースト(約0.44〜0.45ミリグラム)は砂糖30%のペースト(約0.96〜1.01ミリグラム)より低い値でした。ただし、使った柿の量あたりに換算し直すと4種類の間に差はなく、この違いは主に砂糖が多いぶん柿の割合が少ないことによるものだと著者らは分析しています。加熱温度による明確な差は見られませんでした。

重要な点として、冷蔵保存中に可溶性タンニンは途中で一時的に増減したものの、保存開始時と60日後の値に統計的な差はなく、保存中に渋みのもとが徐々に戻るという兆候は確認されませんでした。また、同じ研究グループが以前に二酸化炭素で渋抜きした柿から100℃・砂糖50%で作ったペーストは、可溶性タンニンが1グラムあたり1.15ミリグラムで、はっきりした渋みがあったと報告されています。今回、渋いままの果実を同じ条件で加工したペーストは0.44ミリグラムで、著者らは原料のタンニンの状態によって加熱時のふるまいが異なる可能性を指摘しています。

品質面では、すべてのペーストが保存期間を通して、酸性食品の目安とされるpH4.6未満を保ちました。砂糖30%のペーストはより硬く、しっかりとしたゼリー状の構造になり、70℃・砂糖50%のものだけは明確な構造を示しませんでした。色は保存中にどのペーストも変化しましたが、100℃で加熱したもの、特に砂糖50%のものは変化が小さく、著者らは高温で褐変にかかわる酵素の働きが抑えられたためと考えています。食べ比べでは、70%の評価者が購入に前向きな意向を示し、最も買いたいものとして選ばれたのは100℃・砂糖50%のペースト(60%)でした。

廃棄果実に価値を与える一つの道

この研究は、渋みが強く加工に向かないとされてきた渋柿の規格外品から、渋みのもとが少なく、冷蔵保存中もその状態が保たれる柿ペーストを作れることを示しました。著者らは、こうしたマルメロ風の柿ペーストが、廃棄される「ロホ・ブリリャンテ」を有効に活用する持続可能な手段になりうると結論づけています。

原著論文の著者・所属:Virginia Larrea(Instituto Universitario de Ingeniería de Alimentos–FoodUPV, Universitat Politècnica de València, Camino de Vera, s/n, 46022 Valencia, Spain)、Alexandre Tormos(Instituto Universitario de Ingeniería de Alimentos–FoodUPV, Universitat Politècnica de València, Camino de Vera, s/n, 46022 Valencia, Spain)、Isabel Hernando(Instituto Universitario de Ingeniería de Alimentos–FoodUPV, Universitat Politècnica de València, Camino de Vera, s/n, 46022 Valencia, Spain)、Gemma Moraga(Instituto Universitario de Ingeniería de Alimentos–FoodUPV, Universitat Politècnica de València, Camino de Vera, s/n, 46022 Valencia, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Virginia Larrea, Alexandre Tormos, Isabel Hernando, et al. From Waste to Value: Producing a Non-Astringent Persimmon Paste from Discarded ‘Rojo Brillante’ Fruit. Foods 2026-10-01. DOI: 10.3390/foods15193522. 原著ライセンス:CC BY.