著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

栄養疫学では、「何をどれだけ食べるか」に加えて、食品の選び方、調理法、包装や容器の使い方といった行動の組み合わせが、健康や環境化学物質へのばく露(体に取り込まれること)とどう関わるかに関心が広がっています。研究チームは、食事や食に関わる行動が、有害な化学物質が体内に入る経路に関係している可能性に着目しました。

対象にした物質は三つのグループです。一つ目はPFAS(有機フッ素化合物)で、食品や飲料水を通じて体に入り、体内に長くとどまる性質があります。二つ目はビスフェノール類で、プラスチックや缶の内側の樹脂など食品に触れる素材に関係する物質です。三つ目はカドミウムや鉛といった金属です。

この研究の目的は、特定の栄養素と病気の因果関係を確かめることではありません。著者らは、データそのものから食事・行動のパターンを集団単位で描き出し、パターンごとに有害物質の体内濃度がどう違うかを比べることを目指しました。

どのように調べたか

研究チームは、韓国の全国調査である韓国国民環境保健調査の第4期(2018〜2020年)の成人データを二次的に分析しました。対象は4,239人です。ある一時点のデータを分析する横断研究にあたります。

アンケートの食事・行動項目は、次の五つの領域にまとめられました。カップ麺、ファストフード、缶詰などの超加工食品・加工食品の摂取、穀物、野菜、果物、キムチ、豆類、乳製品などの基本的な食品の摂取、魚介類や海藻の摂取、焼く・あぶるといった高温調理、熱い食べ物をプラスチック容器に入れる、コーティングされた調理器具を使う、包装食品や出前を利用するといった包装・容器との接触行動です。「月1回」「週1回」などの回答は、年あたりのおおよその回数に置き換えてから分析に使われました。

続いて著者らは、UMAPと呼ばれる手法で多数の項目を2次元の地図のような空間に配置しました。これは、似た食習慣の人どうしが近くに並ぶように情報を圧縮する方法です。その上で、K-means法という分類手法で似た人々を五つのグループ(クラスター)に分けました。正解の分類をあらかじめ与えずにデータ内の構造を探るため、「教師なし学習」と呼ばれます。グループ分けには年齢や性別、化学物質の濃度は使われていません。

比較した指標は、尿中のビスフェノールA・F・S、血清中のPFASであるPFOSとPFOA、尿中カドミウム、血中鉛です。年齢、性別、喫煙の指標となる尿中コチニンの影響を統計的に調整したうえで、グループ間の濃度の比を求めました。尿中カドミウムについては、尿の濃さの影響を考えるため尿中クレアチニンも調整に加えています。多くの比較を同時に行うと偶然の差を拾いやすくなるため、その補正も行われました。

見えてきた五つのグループと濃度の違い

五つのグループは、それぞれ異なる特徴を示しました。グループ1は基本的な食品の摂取が最も多く、魚介類も多い傾向でした。平均年齢は61.1歳で最も高いグループです。グループ0は基本的な食品の摂取が最も少なく、比較の基準とされました。グループ4は超加工食品の傾向が最も強く、平均年齢は40.0歳で最も若いグループでした。グループ2は包装・容器との接触行動が比較的多く、グループ3は基本食品と魚介類が多い一方で、包装・接触行動は少ない傾向でした。高温調理の頻度には、グループ間で大きな差は見られませんでした。

調整前の平均的な濃度では、PFOSとPFOAはどちらもグループ1で最も高く、グループ4で最も低い値でした。年齢・性別・喫煙指標を調整し、多重比較の補正を行った後も、グループ0と比べたPFOSはグループ1で約1.18倍でした。PFOAはグループ1で約1.16倍、包装・接触の多いグループ2で約1.13倍と、統計的に意味のある差が残りました。

一方、血中鉛はグループ2でグループ0より高い方向(約1.09倍)を示しましたが、補正後には統計的に有意とはいえませんでした。ビスフェノール類と尿中カドミウムも、調整や補正の後にはグループ間の明確な差は確認されませんでした。著者らは、尿中ビスフェノールは1回の採尿のタイミングで値が大きく変動しやすいこと、尿中カドミウムは腎臓への蓄積や尿の濃さの影響を受けることを、解釈上の注意点として挙げています。

この研究が示すこと

研究チームによれば、最も一貫したグループ間の差はPFASに見られました。基本食品と魚介類が多いグループに加え、包装や容器との接触が多いグループでもPFOAが高かったことから、何を食べるかだけでなく、包装や容器との関わり方といった行動の文脈も、集団レベルでの化学物質ばく露の違いに関係している可能性が示されました。

ただし、この研究は一時点の調査データを使った探索的な分析です。食習慣が特定の物質の発生源であることや、病気との因果関係を示したものではありません。また、アンケートによる行動の指標は、実際の摂取量や包装の種類を細かくとらえきれない点も限界として挙げられています。それでも本研究は、データから導いた行動パターンによって、ばく露の傾向が異なる人々の集まりを描き出せることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:SangHee Hong(Department of Medical Sciences, Graduate School, Soonchunhyang University, Asan, Republic of Korea)、JeongBeom Lee(Advanced Pharmacology and Physiology Integrated Sciences (AXIS), College of Medicine, Soonchunhyang University, Cheonan, 31151, Republic of Korea. [email protected]; Department of Physiology, College of Medicine, Soonchunhyang University, Cheonan, 31151, Republic of Korea. [email protected])、Hak-Jae Kim(Advanced Pharmacology and Physiology Integrated Sciences (AXIS), College of Medicine, Soonchunhyang University, Cheonan, 31151, Republic of Korea. [email protected]; Department of Pharmacology, College of Medicine, Soonchunhyang University, Cheonan, 31151, Republic of Korea. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):SangHee Hong, JeongBeom Lee, Hak-Jae Kim. Unsupervised dietary-behavioral profiling identifies PFAS (per- and polyfluoroalkyl substances) and metal exposure patterns in Korean adults. Scientific Reports 2026-08-04. DOI: 10.1038/s41598-026-64855-4. 原著ライセンス:CC BY.