著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Pengabdian Manajemen
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
原料販売にとどまるココナッツをどう生かすか
インドネシア中部スラウェシ州バンガイ諸島県のパラム村では、多くの住民がココナッツで生計を立てています。しかし著者らによると、ココナッツは新鮮な実や品質の低いコプラ(乾燥させた果肉)として、原料のまま売られることがほとんどでした。収穫後の加工がなく取引も買い手に有利なため、利益の多くは村外の仲買人に渡り、農家は価格の変動にも左右されやすい状況だったと論文は述べています。
そこで研究チームは、地域貢献活動として住民向けのココナッツ加工研修を行いました。目的は、加工品の種類を増やすこと、身近な機材でも使える「適正技術」を取り入れて加工を近代化すること、そして加工によって付加価値を高めることです。果肉だけでなく、これまで放置されたり野焼きされたりしていた殻や繊維質の外皮も資源として使い、廃棄物を減らす「ゼロウェイスト」の考え方も取り入れました。
住民参加型で進めた研修の流れ
活動は2026年7月29日、村の住民の住宅で行われました。住民が計画段階から関わる参加型の手法を採り、現地観察、関係者との調整、説明会、実演、実習、継続的な支援という段階を踏んでいます。
最初の現地調査では、収穫量、農家の売り値、集荷業者までの流通経路、外皮や殻といった廃棄物の状況、加工設備の有無を確認しました。調べ方は、住民の活動に加わりながらの観察と、質問をある程度決めたうえで自由に話してもらう聞き取りです。続いて村長、村の協議会、村営企業、ココナッツ農家グループ、女性の地域組織と話し合い、日程や実習場所を決め、中心となる参加者20〜30人を選びました。
説明会では、原料のまま売る場合と加工品にした場合の利益の違い、バージンココナッツオイル(VCO、加熱せずに作るココナッツオイル)などの市場性、廃棄物の活用、食品衛生の大切さを伝えました。実習では、ココナッツミルクからクリーム層を分ける作業、発酵や簡易な遠心分離によるVCO作り、衛生的なろ過を行いました。さらに、簡易なドラム缶炉で殻を炭にし、粉砕してタピオカ由来ののりと混ぜ、固形燃料のブリケットに成形する工程や、外皮を細かくして園芸用土の「ココピート」にする工程も実習しました。
報告された主な成果
著者らは、パラム村には果肉から殻・外皮までを一体で生かす加工の可能性が十分にあると報告しています。実習の場では、VCO、ココナッツ油、ココナッツミルク、加工食品といった食品と、炭、ブリケット、園芸用土、手工芸品といった非食品が作られました。論文はこれらを販売できる段階の製品としています。製品の種類が増えることで、原料販売に頼る状態を減らし、新しい収入源や事業の機会につながると述べています。
組織面では、村のココナッツ加工共同事業グループが1つ立ち上がりました。役員などの運営体制、基本的な加工の標準手順、簡単な現金出納の記録が整えられたとされ、著者らは活動が設定した目標を達成したとしています。
今後の課題として論文は、事業者登録や家庭内食品製造の許可、ハラール認証の取得支援を挙げています。また、半工業規模の搾り機や乾燥用オーブンなど、天候に左右されにくい設備の整備も必要だとしています。
この活動が示すこと
この報告は、村の所得がどれだけ増えたかを数値で示したものではありません。研修の内容と、そこから生まれた製品や組織を伝えるものです。そのうえで著者らは、製品の多様化、身近な技術の活用、住民の技能向上、共同事業組織の強化を組み合わせることが、自立した持続的な農村経済への道筋になると結論づけています。ココナッツを丸ごと資源として捉え、作るだけでなく加工・包装・販売までを住民自身が担う形へ移ろうとする、地域の取り組みの一例といえます。
原著論文の著者・所属:Muh Haikal Mudin(Universitas Muhammadiyah Luwuk)、moh.ichwan Al Rizky Syah(Universitas Muhammadiyah Luwuk)、Siswanto(Universitas Muhammadiyah Luwuk)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muh Haikal Mudin, moh.ichwan Al Rizky Syah, Siswanto Pelatihan Pengelolaan Hasil Kelapa Untuk Peningkatan Nilai Tambah Ekonomi Masyarakat Di Desa Palam. Jurnal Pengabdian Manajemen 2026-08-19. DOI: 10.30587/jpm.v6i01.12476. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。