この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:World Nutrition Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

頭頸部がん(口やのど、鼻など頭と首の領域に生じるがん)の患者は、低栄養や身体機能の低下が起こりやすい集団だと、著者らは説明しています。治療にともなって食事が十分にとれなくなることが背景にあります。

たんぱく質と、その構成要素である分岐鎖アミノ酸(BCAA。ロイシン、イソロイシン、バリンの総称で、筋肉のたんぱく質がつくられる際に重要とされる栄養素)は、筋肉づくりの鍵になる栄養素であり、身体機能に影響する可能性があると論文は述べています。そこで研究チームは、化学放射線療法(抗がん剤と放射線を組み合わせた治療)を受けている低栄養の頭頸部がん患者を対象に、たんぱく質およびBCAAの摂取量と身体機能との関連を調べることを目的としました。

調べ方と参加者

研究は、放射線治療の外来クリニックで行われた横断研究です。横断研究とは、ある一時点の状態をまとめて調べる方法で、時間の前後関係を追いかけるものではありません。対象は、化学放射線療法を受けている低栄養の頭頸部がん患者で、治療の第4〜5週の時期に評価が行われました。

エネルギーとたんぱく質の摂取量は、連続しない3日分の24時間思い出し法(前日に食べたものを詳しく聞き取る方法)で評価されました。BCAAの摂取量は、半定量食物摂取頻度調査票(どの食品をどれくらいの頻度でどの程度食べるかを尋ねる質問票)を使って推定されています。身体機能は6分間歩行試験(6MWT。6分間でどれだけの距離を歩けるかを測る検査)で評価され、関連の分析にはスピアマンの相関検定が用いられました。

参加者は94人で、平均年齢は46.9±11.9歳、61.7%が男性でした。診断時の病期は大半がステージIVだったと報告されています。

報告された主な結果

論文によれば、たんぱく質摂取量の中央値は1日あたり40.65g(体重1kgあたり1日0.79g)で、参加者の74.5%がたんぱく質摂取不足に分類されました。BCAA総摂取量の中央値は1日あたり9.08gでした。6分間歩行試験の平均距離は332.9±123.9mでした。

解析の結果、たんぱく質摂取量と6分間歩行距離との間(r = 0.444、p < 0.001)、およびBCAA摂取量と6分間歩行距離との間(r = 0.419、p < 0.001)に、統計的に意味のある中程度の正の相関が認められたと報告されています。正の相関とは、一方が多いほどもう一方も大きい傾向がある、という関係を指します。

ただしこれは一時点で両者の関連を観察した研究であり、著者らも関連(association)として報告しています。摂取量が多いことが歩行距離を伸ばした、という因果関係を示したものではありません。

この報告が示すもの

研究チームは、化学放射線療法を受けている低栄養の頭頸部がん患者において、たんぱく質とBCAAの摂取量が身体機能と中程度の関連を示したと結論づけています。そして、これらの結果は、がん治療中の身体機能を保つうえでたんぱく質とBCAAの摂取を最適化することの重要性を裏づけるものだと述べています。

参加者の4分の3近くがたんぱく質摂取不足と分類されたという報告は、治療のさなかにある患者の食事の状況そのものに目を向ける必要があることを示しています。

著者:Tarafainy Basalamah(Faculty of Medicine Universitas Indonesia – Dr. Cipto Mangunkusumo Hospital)、Nurul Ratna Mutu Manikam(Faculty of Medicine Universitas Indonesia – Dr. Cipto Mangunkusumo Hospital)、Tirza Z. Tamin(Faculty of Medicine Universitas Indonesia – Dr. Cipto Mangunkusumo Hospital)、Wiji Lestari(Faculty of Medicine Universitas Indonesia – Dr. Cipto Mangunkusumo Hospital)、Krisadelfa Sutanto(Faculty of Medicine Universitas Indonesia – Dr. Cipto Mangunkusumo Hospital)、Ibrahim Agung(Faculty of Medicine Universitas Indonesia – Dr. Cipto Mangunkusumo Hospital)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tarafainy Basalamah, Nurul Ratna Mutu Manikam, Tirza Z. Tamin, et al. Protein and branched-chain amino acid intake are associated with functional capacity in malnourished head and neck cancer patients undergoing chemoradiotherapy. World Nutrition Journal 2026-08-31. DOI: 10.25220/wnj.v010.i1.0003. 原著ライセンス:CC BY.