著者の所属・活動拠点の国は、ウガンダです。

掲載誌:Journal of Food Innovation, Nutrition, and Environmental Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

麺は世界で広く食べられている主食で、これまで主に小麦粉から作られてきました。小麦に含まれるたんぱく質のグルテンが網目構造を作り、麺の弾力やまとまり、ゆでても崩れにくい性質を支えているためです。一方、セリアック病(グルテンによって起こる自己免疫疾患)やグルテン過敏の人が増え、栄養に富む食品への関心も高まっていることから、小麦を使わないグルテンフリー麺の開発が求められています。ただし、市販のグルテンフリー製品は小麦製品に比べて食感や調理特性が劣る場合が多いと指摘されています。

研究チームが注目したのは、グルテンを含まず、乾燥に強く、やせた土地でも育つ穀物ソルガム(モロコシ)です。ウガンダではソルガムが多く栽培され、国立の研究機関が改良品種を開発してきましたが、伝統的なかゆや飲料以外への加工利用は限られていました。また、ウガンダの改良品種が麺づくりにどう向くかについての情報は乏しいといいます。そこで著者らは、粒の色が異なる3品種、NASARRI-M060(赤)、NASARRI-MS001(白)、NASARRI-M003(茶)を使って麺を作り、品種によって調理特性や色、風味、消費者の好みがどう違うかを調べました。

どのように調べたか

3品種の粒をそれぞれ製粉してふるいにかけ、すべて同じ配合で麺を作りました。グルテンの代わりに生地をまとめる材料として、増粘剤のキサンタンガムとカルボキシメチルセルロース(CMC)、さらに全卵を加え、脱脂粉乳やマーガリン、調味料も使っています。生地を薄く伸ばして機械で押し出し、細い麺に成形した後、65℃で3時間乾燥させました。著者らは、この工程は加熱と加圧を伴う押し出し調理ではなく、機械的な成形であると説明しています。製造は品種ごとに3回繰り返しました。

測定したのは、ゆでたときに麺から湯へ溶け出す固形分の割合(調理損失)、芯がなくなるまでの最適なゆで時間、ゆでた麺の重さの増え方(吸水率)、乾燥麺の水分量、機器で測ったゆでる前とゆでた後の麺の色です。調理損失が小さいほど、ゆでても形が崩れにくい麺だといえます。なお、調理損失は標準法に従って5分間ゆでて測っており、各品種の最適ゆで時間より長いため、値がやや大きめに出る可能性があると論文は述べています。

味や食感の評価は2種類の方法で行われました。1つは訓練を受けた10人のパネルが、茶色の濃さ、塩味、ソルガムの風味、渋み、苦み、香り、ざらつき、硬さ、かみごたえなどの強さを数値で評価する方法です。もう1つは麺をふだん食べる20人の参加者が、見た目、味、香り、食感、総合的な好ましさを9段階(1が「非常に嫌い」、9が「非常に好き」)で評価する予備的な消費者試験です。

主な結果

品種によってはっきりした差が出たのは調理損失でした。赤のNASARRI-M060が1.69%と最も小さく、茶のNASARRI-M003が2.67%、白のNASARRI-MS001が5.25%でした。著者らは、赤品種の麺は構造のまとまりがよく、ゆでても崩れにくいことを示すとしています。その理由として、色の濃いソルガムに多いタンニンなどのポリフェノールがでんぷんやたんぱく質と結びつく可能性を挙げていますが、この研究ではこれらの成分を測っていないため、あくまで仮説だと明記しています。

一方、最適ゆで時間(3.33〜4.00分)と吸水率(143.0〜148.5%)には品種による統計的な差は見られませんでした。ゆで時間は短いものの、蒸したり揚げたりする前処理をしていないため、インスタント麺には当たらないと論文は注意しています。乾燥麺の水分量は5.83〜6.35%で、茶品種が白品種より多く水分を保っていました。色は品種ごとに異なり、ゆでる前の乾燥麺では茶品種の黄色みが最も強く、赤品種はより濃い赤橙色でした。

訓練パネルの評価では、3品種の麺の風味や食感の特徴は全体としてよく似ていました。統計的な差があったのは茶色の濃さとざらつきの2項目だけでした。茶色の濃さは白、茶、赤の順に強くなり、ざらつきは茶品種で最も強く、白品種で最も弱く感じられました。味、香り、後味には差が見られませんでした。

消費者試験では、見た目の評価は白のNASARRI-MS001が7.1と最も高くなりました。総合的な好ましさは、茶のNASARRI-M003の5.0から白のNASARRI-MS001の6.0までの範囲でした。

研究が示すこと

著者らは、今回の試験条件のもとでは、ゆでても崩れにくかった赤のNASARRI-M060と、見た目と総合評価が高かった白のNASARRI-MS001が、グルテンフリー麺づくりに有望だと結論づけています。同時に、ソルガム粉の成分分析、配合の最適化、より多く多様な消費者による評価が必要だとも述べています。この研究は、同じ穀物でも品種の選び方によって麺の仕上がりや受け止められ方が変わることを、ウガンダの改良品種を使って具体的に示したものです。

原著論文の著者・所属:Olive Katoke Nzigire、Robert Mugabi(Makerere University)、Ivan Mukisa Muzira

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Olive Katoke Nzigire, Robert Mugabi, Ivan Mukisa Muzira. Techno-Functional and Sensory Performance of Ugandan Sorghum (Sorghum bicolor) Varieties in Gluten-Free Mechanically Formed Noodles. Journal of Food Innovation, Nutrition, and Environmental Sciences 2026-08-01. DOI: 10.70851/jfines.2026.3(3).223.235. 原著ライセンス:CC BY.