この研究は、ドイツ、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:World Journal of Public Health

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研究の目的

便秘は世界の成人の約10〜15%にみられるとされる、身近な消化器の不調です。命に関わることはまれですが、生活の質や仕事の効率を下げ、不安や腹部の不快感にもつながると研究チームは指摘しています。下剤などの治療は短期的には効果があるものの、長く使うと効きにくくなる、依存が生じる、張りやけいれん、体内のミネラルバランスの乱れが起こるといった懸念があります。

研究チームが注目したのは、水溶性食物繊維と、ぬめりのもとである粘りのある多糖類を多く含むオクラです。これらの成分は便に水分を保たせて柔らかくし、かさを増すことで腸内の移動を助けると考えられています。さらに、腸内細菌の状態を整えるとされる乳酸菌の一種、ラクトバチルス・カゼイを組み合わせることで、互いに補い合う働きが期待されました。ただし、この組み合わせを人で確かめた臨床研究はまだ少ないため、著者らはオクラ抽出物とL.カゼイを含む錠剤「eLAX」の効果と安全性を、機能性便秘の成人で調べました。

どのように調べたか

対象は、国際的な診断基準(ローマIV基準)で機能性便秘と診断された18〜70歳の成人です。機能性便秘とは、病気や薬など明らかな原因がないのに便秘が続く状態を指します。中国の湘雅医院で51人が参加し、最後まで終えた49人(女性42人、男性7人、平均年齢約36歳)が分析されました。

この研究は、比較のための偽薬グループを置かず、全員が同じ製品を使って開始前の自分の状態と比べる「単群・非盲検」の試験です。参加者は10週間のあいだに、1日4錠(1〜2週目)、3錠(4〜6週目)、2錠(8〜10週目)と段階的に量を減らして服用し、それぞれの間に1週間の休薬期間を挟みました。その後の2週間は製品を使わずに経過を観察し、合計12週間で評価しました。

主な評価項目は、自然な排便(下剤や手助けなしに起こる排便)の回数が開始前より増えた人の割合です。あわせて、排便日誌に記録した便の硬さや、いきみ、腹痛、便秘症状と生活の質に関する質問票、腸内細菌の構成、血液検査などの安全性も調べ、一部の10人には大腸内視鏡検査も行いました。

主な結果

開始前の自然な排便は平均で1日0.51回、およそ2日に1回でした。これが2週目には1日1.88回、6週目には1.35回、10週目には1.12回となり、いずれの時点でも開始前より統計的に意味のある増加が報告されました。製品をやめて2週間たった12週目でも、平均0.82回と開始前より多い状態が保たれていました。排便回数が増えた人の割合は、2週目87.8%、6週目61.2%、10週目55.1%、12週目42.9%で、服用量を減らすにつれて下がっていきました。

この傾向は、開始時の状態によって大きく異なりました。開始前に自然な排便がまったくなかった24人では、服用中はほぼ全員で排便回数が増え、製品をやめた後の12週目でも87.5%で増加が続いていました。一方、開始前から1日1回の自然な排便があった25人では、多めの量を飲んでいた初期には76.0%で増えたものの、減量と休薬が進むと元の状態に戻る傾向があり、12週目に増加が続いていた人はいませんでした。

便の硬さも変化しました。便の形を7段階で表すブリストル便形状スケールでは、開始前はほぼ全員が硬い便(1〜2型)でしたが、10週目には平均で約2段階柔らかい側へ移り、理想的とされる3〜4型やより柔らかい型が中心になりました。開始時には全員にあったいきみは10週目にはみられなくなり、残便感や腹痛も減りました。ただし、多めの量を飲んでいた時期には、軟便とともに急な便意を訴える人もいました。開始前に指などでの手助けや坐薬が必要だった24人は、服用中は全員が手助けなしに排便できたと報告されています。

便秘症状の重さを測る質問票(0〜30点、高いほど重い)の合計点は、開始前の約16点から10週目には1点へと約94%低下し、12週目でも開始前より約79%低い状態でした。便秘に関する生活の質の質問票でも、10週目に約89%の改善が示されました。腸内細菌では、10週目に多様性の指標が9.65%上昇し、主要な細菌グループであるバクテロイデス門とファーミキューテス門の比率が大きく変化しました。

安全性については、製品に関連する有害事象はみられず、血液検査や肝臓・腎臓の機能も概ね正常範囲にとどまったと報告されています。内視鏡検査を受けた10人では、刺激性の下剤を長く使った場合にみられることがある、大腸の粘膜が黒っぽくなる変化(大腸メラノーシス)は確認されませんでした。

この研究が示すこと

著者らは、この12週間の研究で、オクラ抽出物と乳酸菌を組み合わせた製品の使用が、排便回数、便の硬さ、症状、生活の質、腸内細菌の指標の改善と関連しており、安全性にも大きな問題はみられなかったとまとめています。特に、もともと自然な排便がなかった人で効果が長く続いた一方、比較的軽い便秘の人では、減量後も少ない量で続ける期間が長く必要かもしれないと述べています。

一方で、著者ら自身も、参加者が49人と少ないこと、偽薬との比較がなく参加者も研究者も何を使っているか知っていたため、思い込みの効果や自然な変化を完全には否定できないこと、症状の多くが本人の申告に基づくことを限界として挙げています。また、この研究は製品を開発した企業の支援を受けて行われました。今回の結果は製品の効果を確定させるものではなく、こうした組み合わせが便秘の改善と関連しうることを人で示した、初期の手がかりとして受け止めるのが適切といえます。

著者:Sze-Man Amy Li(Gut Health Research Center,Mom's Garden Institute of Nutrition and Health, Saarbrücken, Germany)、Keying Han(Gut Health Research Center,Mom's Garden Institute of Nutrition and Health, Saarbrücken, Germany)、Qidong Lu(Gut Health Research Center,Mom's Garden Institute of Nutrition and Health, Saarbrücken, Germany)、Jing Li(Gut Health Research Center,Mom's Garden Institute of Nutrition and Health, Saarbrücken, Germany)、Kaiye Yang(Gut Health Research Center,Mom's Garden Institute of Nutrition and Health, Saarbrücken, Germany)、Jie Peng(Department of Gastroenterology, Xiangya Hospital Central South University, Changsha, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sze-Man Amy Li, Keying Han, Qidong Lu, et al. Efficacy and Safety of eLAX TM Probiotic-Botanical Supplement in Improving Constipation: A Single-Center, Single-Arm Study. World Journal of Public Health 2026-10-09. DOI: 10.11648/j.wjph.20261104.11. 原著ライセンス:CC BY.