この研究は、ポルトガルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Sci

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ「肝臓ケア」サプリメントを調べたのか

植物由来のサプリメントは広く使われており、その中には肝臓の健康を支えるとうたう製品が数多く流通しています。しかし研究チームは、「天然だから安全」という印象が先に立ち、副作用や医薬品との相互作用、製品ごとの品質の違いが見過ごされやすいと指摘しています。

著者らによれば、肝臓ケアをうたう製品がどれだけ使われているかを示す製品特有のデータは限られています。米国の全国代表データ(2017年〜2020年3月)では、成人の57.6%が過去30日間にハーブ系やサプリメントを使用し、4.7%が肝毒性の可能性で選ばれた6種類の植物成分のうち少なくとも1つを使っていたと推計されています。欧州6か国の消費者調査では、調査対象者の18.8%が過去12か月に植物性食品サプリメントを使用していたと報告されていますが、都市単位・便宜的な抽出のため集団全体への一般化には限界があると論文は述べています。いずれも「肝臓ケア」製品に限った使用率を示すものではなく、比較可能な世界的データは現時点で存在しないとされています。

そこで研究チームは、臨床・規制・製品品質・分析化学の知見を結びつける焦点を絞った総説(ナラティブレビュー)をまとめました。成分そのものを論じる従来型の総説とは違い、臨床結果の解釈を製品の同一性、処方、製造ロットの特性評価、そして分析上の判断につなげることを狙いとしています。

どのように調べたか

著者らは、PubMed/MEDLINEとEurope PMCを収載開始時点から検索し、2026年8月3日までの更新を行いました。あわせて欧州医薬品庁(EMA)、欧州食品安全機関(EFSA)、米国食品医薬品局(FDA)、世界保健機関(WHO)、EUの食品・飼料に関する緊急警告システム(RASFF)などの一次資料も用いています。優先されたのは、使用した製剤・用量・比較対照・期間・肝関連の結果が読み取れる対照のあるヒト試験、規制当局の評価、そして目的に見合った分析研究でした。

取り上げる植物は網羅ではなく、それぞれ異なる製品レベルの問題を示す例として意図的に選ばれています。ミルクシスル(オオアザミ)は成分に関する豊富な研究と製品の規格化との隔たりを、アーティチョークの葉は短期間の代替指標に頼る証拠の限界を、ターメリック(ウコン)は処方によって体内に入る量が変わり肝障害の報告もあることを、緑茶は飲料と濃縮エキスを区別する必要性を示す事例として扱われました。

結果の評価にあたり、著者らは指標の段階を区別しています。血液中の酵素ALT・ASTや画像検査の変化は「代替指標」であり、組織を調べる生検は病気の活動性や線維化をより直接的に反映し、肝不全や移植、肝がん、肝関連死といった実際の重大な出来事が最も重要だとされます。なお論文は、肝疾患の呼称が従来のNAFLD/NASHから、代謝機能障害に関連する用語であるMASLD/MASHへ置き換わっていることにも触れ、過去の研究については当時の診断名を保ったまま現在の枠組みで解釈する方針を採っています。

この総説は事前登録されたプロトコルを持たず、重複スクリーニング、統計的な統合、形式的なバイアス評価、確実性の格付けも行っていないと明記されており、網羅性と因果の推論には限界があると著者ら自身が述べています。

主な報告内容

著者らの結論として、検討したいずれの製剤についても、病気の進行そのものを変える効果(disease-modifying efficacy)は確立されていませんでした。選ばれた証拠は、小規模または短期間の試験、ばらつきの大きい製剤、代替指標、そして製造ロットの特性評価の不足に支配されていたと報告されています。

ミルクシスル由来のシリマリンについては、48週間にわたり肝組織を調べた2つのランダム化試験が主要評価項目を達成しませんでした。1つは700mgを1日3回服用した成人99人でNAFLD活動性スコアの30%以上の低下を、もう1つは420mgまたは700mgを1日3回服用した78人で2点以上の改善を目標としたものです。後者では、主要評価項目を満たした人の割合が420mg群で19%、700mg群で15%、プラセボ群で12%(p=0.79)と、用量に応じた有意な改善は示されませんでした。

アーティチョークの葉については、1日600、2600、2700mgを用いた短期間の試験で酵素値や脂質、画像指標の変化が報告され、メタ解析ではALTとASTの低下が示唆されていますが、組織学的な証拠や重大な臨床転帰の証拠はありません。EMAが認めているのは消化不良症状の伝統的な緩和であり、慢性肝疾患の効能ではないと論文は注意を促しています。ある術前の予備的研究では画像指標が改善した一方でASTは上昇しており、肝臓を小さくする食事も併せて導入されていたと記されています。

ターメリックでは、吸収を高めた製剤を用いた8週間の試験で超音波による肝脂肪や酵素値、代謝指標の改善が、12か月の試験では炎症指標と肝硬度測定の改善が報告されています(ただし後者の主要評価項目は腫瘍壊死因子で、肝臓の指標は副次的でした)。同時に、まれではあるものの重篤になりうる肝細胞障害の報告があります。EMAの最終追補文書は、報告例の多くで他の医薬品やサプリメントの併用があり、用量や製剤の情報が不十分なため因果関係は確定できないとしつつ、吸収を高めた製剤や高用量のクルクミン(あるいはその両方)では肝毒性のリスクが示唆されると述べています。EUのハーブモノグラフに記載された用法用量での肝毒性の報告はないとされています。薬剤性肝障害ネットワークの症例では、発症は服用開始から1〜4か月で現れることが多く、HLA-B*35:01という遺伝的要因との関連があり、急性肝不全を含む例もありました。

緑茶については、飲料と濃縮エキスを同じものとして扱えないことが強調されます。ミネソタ緑茶試験では1日843mgのエピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)でALTとASTが上昇し、エキスを摂取した513人のうち26人に一定以上の肝機能検査値異常が生じ、服用中止と再開による裏づけも得られました。EFSAは普遍的に安全といえるエキスの用量を特定できず、1日800mg以上を懸念すべき水準としましたが、より少ない摂取量でも障害が起きていると記されています。また健康な人を対象とした研究では、特定の緑茶の水性エキスが医薬品フェキソフェナジンの体内量を大きく減らしており、これは製剤と対象薬に固有の相互作用で、緑茶全般に共通する作用ではないと解釈されています。

製品そのものに由来するリスクも整理されています。別の植物へのすり替え、表示の不正確さ、汚染、表示されていない配合成分、微生物規格への不適合はいずれも体内に入る量を変えうるとされます。ターメリック由来製品では合成クルクミンや人工着色料、鉛を含む混ぜ物などが記録され、混入の傾向は製品の種類や地域市場によって異なると報告されています。一方で著者らは、肝臓ケア製品に限って医薬品成分の混入が繰り返し起きているという裏づけはないと明言し、疑わしい機能性食品50ロット中41ロットで違法薬物が検出された2024年の研究は、分析能力の高さを示すものであって肝臓ケア製品における発生率の推定ではないと注意しています。同様に、マイコトキシンやピロリジジンアルカロイド、トロパンアルカロイドなど79種の天然汚染物質を測り、合計で最大5.3mg/kgを検出した2024年の調査も、汚染の幅広さを示す例として位置づけられています。

これらを踏まえ、研究チームは単一の手法では十分でないとして、化学分析、微生物試験、DNAなどを用いる分子的手法、花粉を調べる花粉学的分析を組み合わせた段階的で定性的な、リスクに基づく作業手順を提案しています。製品とロットの特定から、リスクの問いを立て、ふるい分けを行い、重要な所見を確認試験で裏づけ、文脈情報と統合して判断するという流れです。これは妥当性が検証された定量的なリスク評点ではなく、概念的な枠組みだと明記されています。あわせて、サプリメントによる肝障害が疑われる場合の実務的な手順(疑わしい製品の中止、製品名・製造業者・ロット・用量・服用期間などの記録、ALT・AST・ALP・ビリルビン・INRの測定、他の原因の除外、残った製品と容器の保管)も示されています。

この総説が伝えること

論文が示すのは、成分の名前と表示された用量だけでは製品を評価できないという点です。植物のどの部分を使ったか、どう抽出したか、原料と抽出物の比率、指標成分の含有量、処方、吸収を高める添加物、併用成分が研究間で異なるため、同じ「○○mg」でも体内に入る植物由来成分は同じではなく、著者らは選んだ研究全体を通じて一貫した用量と効果の関係は読み取れないと述べています。選ばれた報告のいずれもロット単位の完全な化学的指紋を示しておらず、研究で使われた製剤と市販品が同等であることは前提とせず証明すべきものだとされています。

また、吸収を高めたターメリック製品や濃縮緑茶エキスの例は、もっともらしい利益と肝障害のリスクが同時に存在しうることを示しています。血液中のALTやASTの改善だけでは肝臓を守る効果の主張を裏づけられず、MASLDでは重要な肝炎や進行した線維化があっても酵素値が正常であり得ることにも注意が必要だと論文は指摘します。

著者らは結論として、肝臓ケアという幅広い効能の主張が成り立つには、製品とロット単位の特性評価、試験報告の透明性、有害事象の調査、そして市販後の監視が必要だと述べています。

著者:Zoé Enderlin Vaz da Silva(Egas Moniz Center for Interdisciplinary Research (CiiEM), Quinta da Granja, 2829-511 Caparica, Portugal)、Aline Vidal Varela(Egas Moniz School of Health & Science, Quinta da Granja, 2829-511 Caparica, Portugal)、Patrícia Serra(Egas Moniz Center for Interdisciplinary Research (CiiEM), Quinta da Granja, 2829-511 Caparica, Portugal)、Nuno R. Neng(Centro de Química Estrutural, Institute of Molecular Sciences, Departamento de Química e Bioquímica, Faculdade de Ciências, Universidade de Lisboa, 1749-016 Lisboa, Portugal)、Paulo Mascarenhas(Egas Moniz Center for Interdisciplinary Research (CiiEM), Quinta da Granja, 2829-511 Caparica, Portugal)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zoé Enderlin Vaz da Silva, Aline Vidal Varela, Patrícia Serra, et al. Authenticity, Safety, and Quality Assessment of Plant-Based Dietary Supplements Marketed for Liver Support. Sci 2026-09-03. DOI: 10.3390/sci8090237. 原著ライセンス:CC BY.