著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Foods (Basel, Switzerland)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の目的:ジャガイモ繊維を安全で使いやすい素材にするために

フライドポテトやでんぷんなどを作る過程では、でんぷんやたんぱく質、食物繊維を含む副産物が大量に出ます。そのうち「ジャガイモ繊維」は、水や油をよく抱え込み、味に癖が少ないため、パンや肉製品、植物性食品などの食品素材として期待されています。一方で、水を使う工程で回収されるため水分が多く、微生物が増えやすいことが実用化の課題とされています。

微生物を減らす一般的な方法は加熱ですが、加熱は色の変化や構造の劣化を招き、繊維が水を抱える性質などを損なう可能性があります。また、粘りがあり不均一な繊維の懸濁液は熱が均一に伝わりにくいとされます。そこで研究チームは、加熱に頼らない技術として「パルス電界(PEF)処理」に注目しました。これは高電圧の電気パルスを極めて短時間かけ、細胞の膜に小さな穴を開ける(電気穿孔)技術です。論文によると、ジャガイモ繊維にPEFを使った場合の影響は、これまで体系的に調べられていませんでした。本研究の目的は、PEF処理がジャガイモ繊維の微生物数、成分、そして水や油を保持する機能にどう影響するかを評価することです。

何を調べたか

研究チームは生のジャガイモを粉砕し、遠心分離とふるいによる洗浄を繰り返して、繊維を含む懸濁液を作りました。まず少量ずつ処理する装置で予備試験を行い、その結果を踏まえて、懸濁液を流しながら連続的に処理する試験規模の装置を使いました。電界の強さは1センチ当たり24キロボルト、パルスの長さは6マイクロ秒です。処理液1リットル当たりに加えるエネルギーを0(対照)、50キロジュール、100キロジュールの3段階に設定しました。電気を通しやすくするため、塩化カルシウムで導電率を調整しています。なお、100キロジュールの条件では、装置出口で液温が50〜55℃に達しました。

処理後の繊維は、外部の認定検査機関で微生物数を測定しました。また、洗浄して凍結乾燥した繊維について、でんぷん、たんぱく質、水分、灰分(ミネラル分)の量、水と油をどれだけ抱え込めるか(保水力・保油力)を測りました。さらに電子顕微鏡で微細な構造を観察しました。繊維の含有量は直接測ったのではなく、100%から他の成分を差し引いて推定しています。

主な結果

微生物については、100キロジュールの処理で一般生菌数(空気のある条件で育つ細菌などの総数)が約1.6log減りました。これは約96%の減少に当たります。50キロジュールでは、対照との間に統計的に意味のある差はありませんでした。酵母は最も影響を受けやすく、50キロジュールで約1.5log(96%)減りました。100キロジュールでは検出限界未満となり、2.5logを超える減少となりました。カビは50キロジュールで約0.5log(70%)、100キロジュールで約1.6log(97%)減少しました。PEFへの感受性は、酵母、カビ、一般生菌の順に高かったと報告されています。ただし、今回の繊維からは大腸菌、サルモネラ、リステリアが検出されませんでした。そのため、これらの病原菌に対する効果は評価できていません。

成分については、100キロジュールの処理で、繊維に残るでんぷんが31.7%から26.8%に減りました(相対的には約15.5%の減少)。たんぱく質は、50キロジュールと100キロジュールのどちらでも対照より少なくなりました。その結果、推定繊維含有量は54.9%から59.3%へ上がりました。著者らは、これは繊維の絶対量が増えたのではなく、でんぷんなど繊維以外の成分の割合が減ったことによる相対的な変化だと説明しています。

機能面では、保水力はどちらの処理でも対照と比べて統計的に意味のある差がありませんでした。保油力は100キロジュールで対照より約5.5%高く、わずかに向上しました。灰分にも差はありませんでした。乾燥後の水分は処理後に増えましたが、凍結乾燥のため値はいずれも低く、乾燥方法を考慮して解釈する必要があるとしています。電子顕微鏡では、一部で細かく砕けた構造が見られました。しかし繊維自体がもともと不均一なため、PEFによる一貫した形の変化とは結論づけられませんでした。また著者らは、これらの変化は電気穿孔と、通電に伴う発熱の両方の影響によるもので、両者を切り分けることはできないと述べています。

研究が示す意味

この研究は、連続式のパルス電界処理によって、ジャガイモ繊維の微生物数と残ったでんぷんを同時に減らせることを示しました。しかも、水や油を抱え込むという素材としての重要な性質は保たれていました。加熱に大きく頼らずに、より品質の高いジャガイモ繊維素材を作るための技術的な可能性を示した成果といえます。

原著論文の著者・所属:Sadeghi R(Department of Chemistry and Biochemistry, College of Arts & Sciences, Boise State University, Boise, ID 83725, USA.)、Rattray OC(Department of Chemistry and Biochemistry, College of Arts & Sciences, Boise State University, Boise, ID 83725, USA.)、McDougal OM(Department of Chemistry and Biochemistry, College of Arts & Sciences, Boise State University, Boise, ID 83725, USA.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sadeghi R, Rattray OC, McDougal OM. Continuous-Flow Pulsed Electric Field Treatment of Potato Fiber: Effects on Microbial Load, Physicochemical Properties, and Functional Characteristics. Foods (Basel, Switzerland) 2026-09-24. DOI: 10.3390/foods15193415. 原著ライセンス:CC BY.