魚をよく食べる日本人の食生活は、心血管疾患のリスクが低いことと関連づけられることがあります。ただし「魚」とひとくくりにしても、青魚のようにn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)を多く含む魚もあれば、塩蔵品のように加工された魚介類もあり、その種類によって健康との関連が異なるのかは十分にわかっていませんでした。今回、日本公衆衛生センター研究(JPHC研究)のデータを用いて、魚介類の種類別の摂取量と死亡リスクとの関連を調べた研究が、ニュートリション・ジャーナル(栄養学誌)に2026年8月に掲載予定です。
この研究は、著者らが指摘するように、魚介類の摂取・魚の種類・n-3 PUFAという複数の要因を同時に検討した研究がこれまで少なく、アジア圏、とりわけ魚をよく食べる日本人集団での結果も一貫していなかったことを踏まえて行われました。
どのように調べたのか
研究対象は、1995〜1998年に検証済みの食物摂取頻度調査票に回答した男性42,150人・女性48,794人、合計90,944人です。エネルギー摂取量で調整した魚介類の摂取量を5段階(五分位、Q1〜Q5)に分け、塩蔵していない魚介類、n-3 PUFAを多く含む魚、魚由来のn-3 PUFA摂取量それぞれについて、全死因死亡および原因別死亡(脳血管疾患死亡など)との関連を、Cox比例ハザードモデルという統計手法を用いて解析しました。解析では、結果に影響しうる他の要因(交絡因子)を調整したうえでハザード比(HR)と95%信頼区間が算出されています。JPHC研究は国立がん研究センターなどが関わる日本国内の追跡調査であり、今回の解析にも日本の研究機関に所属する研究者が携わっています。
わかったこと
女性では、塩蔵していない魚介類の摂取量と全死因死亡との間に直線的ではない関連がみられ、摂取量が中程度のQ4群で死亡リスクが最も低くなりました(ハザード比0.92、95%信頼区間0.86〜0.98、非線形性の検定でP=0.022)。つまり「多いほど良い」という単純な関係ではなく、ある程度の摂取量で最もリスクが低いという結果でした。
男性では、塩蔵していない魚介類の摂取量が多いほど脳血管疾患による死亡リスクが低い傾向がみられ、Q3を除くQ2・Q4・Q5で統計的に有意な関連が示されました(Q2のハザード比0.78、Q4のハザード比0.77、Q5のハザード比0.84、非線形性の検定でP=0.017)。
n-3 PUFAを多く含む魚の摂取については、女性で摂取量が多いほど全死因死亡(傾向性のP=0.012)および脳血管疾患死亡(傾向性のP=0.005)のリスクが低い傾向が示されました。
これらの結果から著者らは、魚介類の種類によって死亡リスクとの関連の現れ方が男女で異なる可能性があると結論づけています。
この研究を読むうえでの注意
この研究は、特定の集団を一定期間追跡して要因と結果の関連を調べる観察研究であり、魚介類の摂取が死亡リスクを直接下げると証明するものではありません。また、今回示された関連は解析した交絡因子を調整した後のものですが、食事調査に基づく摂取量の推定には限界があり、男女で異なる結果が得られた背景も含め、今後さらなる研究による検証が必要と考えられます。一つの研究の結果であり、これをもって結論が確定したわけではない点に留意してください。
まとめ
今回の研究では、日本人を対象とした大規模追跡調査のデータから、塩蔵していない魚介類やn-3 PUFAを多く含む魚の摂取量と、全死因死亡・脳血管疾患死亡との関連が、性別や魚介類の種類によって異なる形で示されました。魚介類といっても一様ではなく、種類ごとの違いに着目する視点が今後の研究でも重要になりそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Mio Fujimaki, Junko Ishihara, Rieko Kanehara, et al. Different Fish Types Are Differentially Associated with All-Cause and Cause-Specific Mortality in the Japan Public Health Center–Based Prospective Study. ニュートリション・ジャーナル(栄養学誌) (2026). DOI: 10.1016/j.tjnut.2026.101772. 原著ライセンス: cc-by.