ゴマ油を搾ったあとに残る「ゴマ粕」は、これまで主に飼料などに回されてきた副産物ですが、実はタンパク質を豊富に含んでいます。近年、動物性タンパク質の代替として植物性タンパク質への関心が高まる中、こうした副産物からタンパク質を取り出し、食品原料として活用しようとする研究が進められています。ただし、植物由来のタンパク質は、乳や卵のタンパク質と比べて溶けやすさや泡立ちやすさといった「使い勝手」の面で劣ることが多く、食品に応用するにはその性質を詳しく調べ、必要に応じて改良する必要があります。今回紹介する研究は、ゴマ粕から取り出したタンパク質の性質が、抽出方法やその後の処理によってどのように変わるのかを調べたものです。

研究チームはまず、ゴマ粕からタンパク質を取り出す方法を比較しました。基本となるのはアルカリ性の条件を使った従来型の抽出法ですが、これに加えて、超音波を使った前処理や酵素を使った前処理を組み合わせた場合との違いを検証しています。さらに、こうして得られたゴマ粕タンパク質分離物に対して「コールドプラズマ」という処理を施しました。コールドプラズマは、気体に電気的なエネルギーを加えて発生させる、熱を伴わない特殊な状態のガスで、食品分野ではタンパク質の構造を変化させる目的などで利用が検討されている技術です。

抽出法とコールドプラズマ処理で何が変わったのか

この研究では、抽出方法とコールドプラズマ処理のいずれもが、得られたタンパク質の性質に大きな影響を与えることが示されました。具体的には、タンパク質の純度、アミノ酸の構成、色、タンパク質の構造の保たれ方、熱に対する安定性、水への溶けやすさ、乳化能力(油と水を均一に混ぜ合わせる力)、泡立ちやすさといった、食品への応用を左右する多くの技術的特性が、抽出方法とコールドプラズマ処理の組み合わせによって変化したと報告されています。

さらに研究チームは、タンパク質の種類や量を網羅的に調べる「プロテオーム解析」という手法を用いて、処理前後でどのタンパク質が増減したかを詳しく調べました。その結果、超音波前処理とコールドプラズマ処理を組み合わせた場合には、アレルギーの原因となりうるタンパク質群の量が減少する方向に変化したことが確認されています。研究チームはこの変化について、ゴマ粕タンパク質が持つ望ましくない性質を和らげる可能性を示すものとしています。また、著者らはこの研究について、抽出方法によってタンパク質がコールドプラズマ処理にどう反応するかが変わるという関係性を示した研究であると位置づけています。

この研究を読むうえでの注意点

この研究は、ゴマ粕という特定の副産物を対象に、複数の抽出条件とコールドプラズマ処理を組み合わせた実験室レベルでの検証です。ここで確認された技術的な性質の変化やアレルギー関連タンパク質の減少傾向は、あくまでこの研究で用いられた条件下での結果であり、実際の食品への応用や人での効果を保証するものではありません。植物性タンパク質の分野は研究が活発に進んでいる領域であり、今回の知見も、そうした積み重ねの中の一つの成果として捉えるのが適切です。

ゴマはごま油や炒りごまなど、日本の食卓にもなじみの深い食材ですが、この研究自体は特定の国の食習慣や生産事情に言及したものではなく、ゴマ油生産に伴う副産物の有効活用という、より広い視点からの技術研究として読むのがよいでしょう。

まとめ

ゴマ油の搾りかすというありふれた副産物からでも、抽出方法や処理技術を工夫することで、食品原料として使いやすいタンパク質を得られる可能性があることが、この研究から見えてきます。植物性タンパク質の活用が広がる中で、副産物の価値を高める技術としてコールドプラズマのような新しい処理法がどう役立つのか、今後の研究の展開が注目されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Emine Gizem Acar, Ozge Nur Ozturk, Celale Kırkın, et al. Technofunctional Properties and Proteomic Profiling of Sesame Cake Protein Isolates Obtained by Green Extraction Methods and Treated with Cold Plasma. モレキュールズ (2026). DOI: 10.3390/molecules31152638. 原著ライセンス: cc-by.