植物由来の代替肉(プラントベースミート)は環境負荷の低さなどから注目されていますが、実際の肉に比べて「うま味が薄い」「独特の食感に欠ける」といった課題がよく指摘されます。今回紹介する研究では、肉らしい血のような風味(ブラッディテイスト)を持つ「ヘムタンパク質加水分解物」という素材に着目し、加熱と糖の反応(メイラード反応)を組み合わせることで、代替肉パティの機能性と味わいを底上げできるかどうかが調べられました。
ヘム鉄由来の素材にメイラード反応を起こす
この研究では、ヘムタンパク質を分解して得られる「ヘムタンパク質加水分解物(HH)」に、糖の一種であるキシロースを加えてメイラード反応(加熱によりタンパク質と糖が結びつき、褐変や新しい風味成分を生み出す反応)を起こさせています。検討の結果、HHとキシロースを2対1の割合で混ぜ、80℃で6時間加熱する条件が最適とされました。この反応で得られた生成物は「MHHX」と名付けられ、単にHHとキシロースを混ぜただけの「HHX」、そして未処理の「HH」と比較されています。
分析の結果、MHHXはHHXに比べてタンパク質と糖の結合度(グラフト度)や褐変の度合いが高く、構造的な変化も安定して起きていたと報告されています。さらにMHHXでは、タンパク質の溶けやすさ(溶解性)、乳化する力、熱に対する安定性がいずれも向上したとされています。加えて、アミノ酸組成の変化によって、うま味が増し苦味が抑えられる方向に変化したことも示されています。
実際のパティに加えるとどうなるか
この研究では、実際に植物性パティへMHHXを1%加えて評価も行われています。その結果、パティの硬さは12.54ニュートンから15.95ニュートンへと増加し、うま味が高まる一方で、もともとの血のような風味(ブラッディテイスト)は保たれたとされています。つまり、加工によってタンパク質の機能性を高めつつ、代替肉として重要な「肉らしさ」の一部である風味特性は損なわれなかったという結果です。
研究チームは韓国・建国大学(Konkuk University)、韓国食品研究院(Korea Food Research Institute)、啓明大学校(Keimyung University)、世界キムチ研究所(World Institute of Kimchi)に所属しています。
この研究をどう読むか
この研究は、特定の条件(HHとキシロースの比率2対1、80℃・6時間の加熱、パティへの添加量1%)で得られた結果であり、他の配合や加熱条件、あるいは他の代替肉製品への応用で同じ効果が得られるかは、この論文の範囲だけでは分かりません。また、うま味や苦味の変化はアミノ酸組成の分析や物性測定に基づくものであり、一般消費者による官能評価がどこまで行われたかは要旨からは明確ではありません。一つの研究成果として、今後さらなる検証が積み重ねられていく段階にあると理解するのがよいでしょう。
まとめ
この研究では、ヘムタンパク質加水分解物にキシロースを用いたメイラード反応を施すことで、タンパク質の溶解性や乳化力、熱安定性が向上し、うま味の増加と苦味の低減、そして植物性パティに添加した際の硬さ向上とうま味増強が報告されました。血のような風味は維持されたとされており、代替肉の品質改良に向けた一つの技術的な選択肢として位置づけられる研究といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Jong Hyeon Han, Hyun Ju Lee, Ji Hwan Ryoo, et al. Maillard reaction of heme protein hydrolysate and xylose: A strategy for improving protein solubility, umami taste, and texture in plant-based patties. フード・ケミストリー・エックス (2026). DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104272. 原著ライセンス: cc-by-nc.