著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリア、アメリカです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ビタミンDは、カルシウムやリンの調節、骨の健康、免疫や代謝など、体内の多くの働きに関わる栄養素です。一方で、ビタミンD不足は世界的に珍しくありません。サプリメントで最もよく使われる形はビタミンD3(コレカルシフェロール)です。ただし、飲んだ量がどれだけ体内に取り込まれるかには個人差があり、製剤のつくりも影響する可能性があると考えられています。

ビタミンD3は脂に溶けやすい性質を持ちます。小腸では、胆汁の成分や食事の脂質と一緒に「混合ミセル」と呼ばれる小さな粒子に取り込まれてから吸収されます。そこで、吸収を助ける工夫の一つとして「リポソーム」が注目されています。リポソームは、細胞膜と同じリン脂質の二重の膜でできた小さな袋で、脂に溶けやすい成分を包み込めます。研究チームは、リポソーム型のビタミンD3製剤(Cymbiotika)と、リポソームを使わない一般的な錠剤とで、1回飲んだ後の短期的な吸収を比べることを目的としました。

どのように調べたか

試験の対象は18〜50歳の健康な成人です。16人が参加し、両方の期間を終えた12人が主な解析に含まれました。どちらの製品を飲んだかは、参加者にも研究者にも分からない形(二重盲検)で行いました。また、全員が両方の製品を順番に飲む「クロスオーバー」という方法をとりました。飲む順番は無作為に決め、2回の服用の間には少なくとも2週間の間隔を空けました。この方法では、一人ひとりが自分自身の比較対象になります。

2つの製品には、同じ量のビタミンD3(4,000 IU)とビタミンK2(620μg)が含まれていました。ただし、両者は形が異なります。リポソーム製品は水とグリセリンを主体とするジェルで、コエンザイムQ10(40mg)も含んでいました。比較に用いた製品は、市販されている錠剤です。参加者は一晩絶食した後に製品を水とともに飲み、約30分後に決められた朝食をとりました。

採血は服用前と、服用後48時間までの複数の時点で行いました。研究チームは、血液中のコレカルシフェロールそのものの濃度を測りました。長期的なビタミンDの状態を示す指標としては、肝臓で変換された25-ヒドロキシビタミンDが一般的です。しかし著者らは、この指標は1回の服用直後の吸収を評価するには適さないと説明しています。もともと血中にある分の影響を除くため、各時点の濃度から服用前の値を差し引きました。そのうえで、48時間に体内を巡った量の目安となる「濃度曲線下面積(AUC)」、最高濃度、最高濃度に達するまでの時間を算出しました。

主な結果

論文によると、リポソーム製品のAUCは平均199 ng·h/mLでした。錠剤の106 ng·h/mLと比べて約1.9倍で、統計的に有意な差と報告されています。最高濃度もリポソーム製品の方が高く、8.4 ng/mLに対し錠剤は6.0 ng/mLでした。服用後48時間の時点では、リポソーム製品の血中濃度はまだ服用前より高いままでした。一方、錠剤では服用前の水準に戻っていました。

ただし、最高濃度に達するまでの時間(中央値)は、錠剤が0.5時間、リポソーム製品が1.0時間でした。錠剤の方が早くピークに達しています。そのため著者らは、今回の結果を「吸収が速い」という意味ではなく、「この条件下で体内に取り込まれた総量が多かった」という意味で解釈すべきだとしています。どちらの製品でも、製品に関連する有害事象は報告されませんでした。

結果が意味すること

研究チームは、このリポソーム製品がビタミンD3の短期的な吸収を高める可能性を示したと結論づけています。一方で、注意すべき点も挙げています。2つの製品は、リポソームの有無だけでなく、ジェルか錠剤かという形、添加物、コエンザイムQ10の有無も異なっていました。そのため、差をリポソームだけによるものとは言えず、製品全体としての比較結果だとしています。

また、完了者が12人と少なかったことも挙げられています。吸収には大きな個人差があり、差の推定幅も広くなりました。このため著者らは、今回の結果を、より大規模な研究で確かめるべき仮説を示すものと位置づけています。さらに、1回だけ飲んだ後の短期的な吸収の違いが、長く飲み続けたときのビタミンDの状態の改善につながるかどうかは、この研究からは分かっていません。今回の研究は、製剤の違いによって服用直後の吸収のされ方が変わりうることを、健康な成人で示した報告といえます。

著者:David Briskey(RDC Clinical)、Sandra Rahman(RDC Clinical, Brisbane, QLD, Australia)、Shilpa Raut(Cymbiotika LLC, San Diego, CA, United States)、Chervin Jafarieh(Cymbiotika LLC, San Diego, CA, United States)、Amanda Rao(RDC Clinical)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):David Briskey, Sandra Rahman, Shilpa Raut, et al. Enhanced acute absorption of vitamin D3 with a liposomal formulation (Cymbiotika) compared to a standard formulation in healthy adults: a randomized double-blind crossover study. Frontiers in Nutrition 2026-10-13. DOI: 10.3389/fnut.2026.1858064. 原著ライセンス:CC BY.