「終末糖化産物(AGE)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。AGEはタンパク質や脂質が糖と結びつくことでできる物質で、体内でつくられるだけでなく、食品にも含まれています。特に高温で焼いたり揚げたりした食品には多く含まれるとされ、食品から摂取するAGEは「食事性AGE(dAGE)」と呼ばれます。今回紹介する論文は、この食事性AGEの摂取量が、食事パターンを変えることでどの程度変化するのかを調べた研究です。

この研究の土台となっているのは、アメリカで行われた大規模な臨床試験「女性健康イニシアチブ(WHI)」の食事介入試験です。この試験では、閉経後の女性48,835人が「低脂肪食パターンを実践する介入群」と「普段通りの食事を続ける対照群」に、40対60の割合でランダムに割り付けられました。もともとこのWHIの食事介入試験では、低脂肪食パターンの介入によって乳がんによる死亡が減少したという結果(P=0.02)が報告されています。また、別の研究では食事性AGEの摂取量が多いほど乳がんの発症率が高い可能性が指摘されているとのことです。こうした背景から、研究チームは「そもそも低脂肪食パターンの介入は、食事性AGEの摂取量そのものを減らしていたのだろうか」という点を検証しました。

研究でわかったこと

解析対象となったのは、ベースライン(試験開始時点)と、その後5〜7年間にわたって食物摂取頻度調査票に回答した40,209人のデータです。この調査票の回答をもとに、よく用いられるデータベースを使って、1000キロカロリーあたりの食事性AGEスコア(単位:kU/1000kcal)が推定されました。そのうえで、繰り返し測定された食事性AGEスコアについて、割り付けられた群(介入群か対照群か)による違いが統計的に検討されています。

まず試験開始時点では、介入群の平均食事性AGEスコアは7542kU/1000kcal(標準偏差912)、対照群は7514kU/1000kcal(標準偏差917)と、両群でほぼ同じ水準でした。ところが試験開始後5〜7年間を通してみると、介入群のスコアは5361〜6236kU/1000kcalの範囲で推移したのに対し、対照群は7159〜7669kU/1000kcalの範囲で推移しており、介入群の方が一貫して低い値を示しました(P<0.0001)。つまり、低脂肪食パターンを実践するよう促された群では、対照群に比べて食事性AGEの摂取量が長期間にわたって低く保たれていたことになります。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は、WHIという大規模な食事介入試験のデータを用いた「二次解析」であるという点に注意が必要です。つまり、もともと乳がん死亡率などを主要な目的として行われた試験のデータを、食事性AGEという別の切り口から改めて解析したものです。今回の結果は、低脂肪食パターンの介入が食事性AGEの摂取量を下げる方向に働いたことを示すものであり、食事性AGEの摂取量が減ることで具体的にどのような健康上の変化が生じるかを直接検証したものではありません。要旨の中でも、食事性AGEと乳がん発症率との関連については「その可能性がある」という位置づけで触れられているにとどまります。あくまで一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではない点を踏まえて読むとよいでしょう。

まとめ

今回紹介した研究では、WHIの食事介入試験において、低脂肪食パターンを実践するよう促された女性たちは、通常の食事を続けた女性たちに比べて、試験開始時点では同程度だった食事性AGEの摂取量が、その後5〜7年間にわたって明確に低く保たれていたことが示されました。食事パターンを変えることが、食品由来のAGE摂取量という観点でも実際に測定可能な違いを生み出しうることを示すデータといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:低脂肪食パターンと食事性終末糖化産物摂取:女性健康イニシアチブランダム化試験の二次解析(ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー・2026年07月)