日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
妊娠中の食事は、生まれてくる赤ちゃんの体格に影響するのではないかと、多くの妊婦や家族が気にするテーマです。中でも牛乳は日常的に飲まれる食品でありながら、妊娠中の摂取量が出生時の体格とどう関係するのかは、これまで十分に整理されていませんでした。今回紹介する研究は、日本の大規模な出生コホート調査のデータを用いて、妊娠中の牛乳摂取と、赤ちゃんが在胎週数に対して小さく生まれる状態(SGA)や大きく生まれる状態(LGA)との関連を調べたものです。
この研究は日本主導で行われました。筆頭著者のKazue Ishitsuka氏は産業医科大学医学部(福岡県)に所属し、責任著者のShoji F. Nakayama氏は国立環境研究所の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」プログラムオフィスに所属しています。ほかにも国立成育医療研究センターや国立がん研究センター、東邦大学、信州大学など日本国内の研究機関に属する著者が名を連ねています。
どのように調べたのか
研究チームは、日本の前向きコホート研究であるエコチル調査に参加した母子79,976組を対象としました。妊娠中の食事内容は食物摂取頻度調査票を用いて把握され、牛乳については全脂タイプと低脂肪タイプに分けて摂取量が評価されています。あわせて、牛乳に由来するタンパク質・脂質・炭水化物の摂取量も算出されました。これらの摂取量と、赤ちゃんがSGA(在胎週数に対して小さい)またはLGA(在胎週数に対して大きい)として生まれるリスクとの関連を、多重ロジスティック回帰という統計手法で解析しています。
わかったこと
対象となった妊婦の妊娠中の牛乳摂取量は、中央値でおよそ1日96.9mLでした。解析の結果、牛乳摂取量が最も多いグループ(上位五分位)は、最も少ないグループと比べてSGAのリスクが低い傾向と関連しており、そのオッズ比は0.87と報告されています。また、全脂牛乳を飲む頻度が高い妊婦ほど、SGAのリスクが低い傾向も示されました。牛乳由来のタンパク質・脂質・炭水化物についても、摂取量が多いグループでSGAリスクの低下との関連がみられています。一方で、赤ちゃんが大きく生まれるLGAについては、牛乳摂取量との明確な関連は認められなかったとされています。
この研究を読むうえでの注意
この研究は約8万組という大規模な母子データを扱っている点が特徴ですが、あくまで一つの観察研究であり、牛乳摂取が出生時体格の変化を「引き起こす」ことを直接証明したものではありません。要旨には研究の限界について具体的な記載がなく、どのような点に留意すべきかは本文の詳細を確認する必要があります。妊娠中の栄養に関する判断は、この一つの研究結果だけで決めるのではなく、医師や管理栄養士など専門家に相談しながら進めることが望ましいと考えられます。
まとめ
今回の日本主導の研究では、妊娠中の牛乳摂取量が多い妊婦や、全脂牛乳を頻繁に飲む妊婦において、赤ちゃんが小さく生まれるリスク(SGA)が低い傾向にあることが示唆されました。一方で、大きく生まれるリスク(LGA)との関連は見られていません。牛乳摂取と出生時体格の関係を示す一つの知見として注目されますが、結論を確定づけるものではなく、今後さらなる研究の蓄積が期待される分野といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Kazue Ishitsuka, Sjúrđur F. Olsen, Thorhallur Halldorsson, et al. Association between maternal milk intake during pregnancy and birth size of infants: results from the Japan Environment and Children’s Study. ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション (2026). DOI: 10.1038/s41430-026-01786-3. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.