この研究は、オーストラリア、デンマークの研究機関の研究論文です。

掲載誌:European Journal of Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ビタミンKといえば血液の凝固に関わる栄養素として知られていますが、近年では血管の健康や神経の働きにも関与している可能性が指摘されています。ビタミンKには主に、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれる「K1(フィロキノン)」と、発酵食品や動物性食品に多く含まれる「K2(メナキノン)」の2種類があり、体内での働き方が異なると考えられています。今回、デンマークで長期にわたって行われた大規模コホート研究において、これら2種類のビタミンKの摂取量と、将来の認知症発症との関連が調べられました。

研究でわかったこと

この研究は、デンマークの「Diet, Cancer, and Health」コホート研究のデータを用いたものです。1993〜1997年の時点で認知症のなかった50〜65歳の参加者54,968人(男性47.5%)を対象に、192項目からなる食物摂取頻度調査票を用いて、食事由来のビタミンK1(µg/日)とK2(µgフィロキノン当量/日)の摂取量が推定されました。その後、認知症の発症は国の登録データを通じて把握され、統計解析には摂取量を5段階(五分位)に分けた比較や、年齢・生活習慣・食事内容・持病などを考慮した統計モデルが用いられています。

追跡期間は最長28年(中央値25.5年)に及び、この間に4,802人(8.7%)が認知症を発症しました。解析の結果、ビタミンK1の摂取量が最も多いグループ(五分位で上位20%)は、最も少ないグループと比べて認知症の発症率が14%低いという関連が示されました(ハザード比0.86、95%信頼区間0.78〜0.93)。この関連は、65歳未満で発症する若年性認知症においてより強くみられたと報告されています。

一方でビタミンK2については、摂取量が最も多いグループで、最も少ないグループより発症率が14%高いという、K1とは逆方向の関連が認められました(ハザード比1.14、95%信頼区間1.04〜1.24)。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

著者らは、こうしたビタミンK1とK2で正反対の関連がみられた背景として、それぞれの栄養素を多く含む食品や、それに伴う全体的な食事パターンの違いが影響している可能性(交絡)を挙げており、さらなる検証が必要だとしています。つまり、K2そのものが認知症のリスクを高めるといった単純な結論ではなく、K2を多く摂る人の食生活全体の傾向が結果に影響している可能性が考えられるということです。この研究は観察に基づくものであり、摂取量と発症の「関連」を示したものであって、摂取量を変えることで認知症を予防できるかどうかを直接証明したものではありません。

著者らは結論として、ほうれん草やキャベツ、ブロッコリーなどビタミンK1を豊富に含む野菜を、より広い食事パターンの一部として多く摂ることが、認知機能の健康と関連している可能性があると述べています。

まとめ

今回紹介したデンマークの大規模コホート研究では、野菜由来のビタミンK1の摂取が多いほど認知症の発症率が低い一方、ビタミンK2の摂取が多いほど発症率が高いという、対照的な関連が報告されました。この結果は食事パターンなどによる交絡の可能性も指摘されており、一つの研究であり結論が確定したわけではありません。今後さらなる研究による検証が待たれます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):食事性ビタミンK1およびK2摂取と認知症発症の関連:デンマークの食事・がん・健康コホート研究の結果(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年08月)

著者:Negar Ghasemifard(Nutrition and Health Innovation Research Institute, School of Medical and Health Sciences, Edith Cowan University, Perth, WA, 6000, Australia)、Marc Sim(Medical School, University of Western Australia, Crawley, WA, Australia)、Pratik Pokharel(Nutrition and Health Innovation Research Institute, School of Medical and Health Sciences, Edith Cowan University, Perth, WA, 6000, Australia. [email protected])、Chengfeng Li(Nutrition and Health Innovation Research Institute, School of Medical and Health Sciences, Edith Cowan University, Perth, WA, 6000, Australia)、Allan Linneberg(Centre for Clinical Research and Prevention, Copenhagen University Hospital, Bispebjerg and Frederiksberg, Frederiksberg, Denmark)、Anne Ahrendt Bjerregaard(Centre for Clinical Research and Prevention, Copenhagen University Hospital, Bispebjerg and Frederiksberg, Frederiksberg, Denmark)、Anja Olsen(Department of Public Health, Aarhus University, Aarhus, Denmark)、Christina C. Dahm(Department of Public Health, Aarhus University, Aarhus, Denmark)、Simone Radavelli‐Bagatini(Nutrition and Health Innovation Research Institute, School of Medical and Health Sciences, Edith Cowan University, Perth, WA, 6000, Australia)、Simon M. Laws(Centre for Precision Health, Edith Cowan University, Joondalup, WA, Australia)、Joshua R. Lewis(Medical School, University of Western Australia, Crawley, WA, Australia)、Jonathan M. Hodgson(Nutrition and Health Innovation Research Institute, School of Medical and Health Sciences, Edith Cowan University, Perth, WA, 6000, Australia)、N. Bondonno(Nutrition and Health Innovation Research Institute, School of Medical and Health Sciences, Edith Cowan University, Perth, WA, 6000, Australia. [email protected]