著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:Toxicology Reports

ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ポテトチップスは子どもから大人まで幅広く親しまれているスナック菓子ですが、原料となるじゃがいもや製造・流通の過程で、金属、農薬、カビ毒(マイコトキシン)といった汚染物質がわずかに混入する可能性が指摘されています。今回紹介する研究は、こうした複数種類の汚染物質を同時に取り上げ、ポテトチップスを食べることでどの程度の量を体内に取り込む可能性があるのかを、統計的な手法を使って評価したものです。研究を行ったのは、イランのマシュハド医科大学に所属する研究者たちです。

何を、どうやって調べたのか

この研究では、ポテトチップスに含まれ得る金属、農薬、そしてカビ毒による経口曝露(口から体内に取り込まれること)を対象に、モンテカルロシミュレーションという統計手法を用いてリスクを評価しています。モンテカルロシミュレーションは、摂取量や汚染物質の濃度など不確実な要素に幅を持たせて何度も計算を繰り返すことで、平均的な値だけでなく高濃度側の可能性まで含めた推定を行える手法です。評価はイランの消費者を想定し、大人と子どもの両方について行われました。

研究でわかったこと

まず鉛への曝露について、子どもにおける発がんリスク(生涯にわたって発がんの可能性が生じる指標であるILCR)の平均値は、大人で算出された値と同程度であったと報告されています。次に農薬への曝露については、大人・子どものいずれについても、高い側のパーセンタイルで算出されたHI(複数物質の影響を積み上げて評価する指標)の値が、中程度のリスクを示すものであったとされています。

特に注目すべき結果として挙げられているのが、カビ毒(マイコトキシン)への経口曝露です。大人・子どもともに、耐容一日摂取量(TDI)に対する割合が許容できない水準に達していたと報告されています。さらに、アフラトキシン類(AFB1、AFB2、AFG1、AFG2)による発がんリスクについては、子どものほうが大人と比べて有意に高い累積リスクが算出されたとされています。これらの結果を踏まえ、著者らは、ポテトチップス中のこれらの汚染物質の発生を抑えるための厳格な対策が必要であり、特に子どもによる消費が広く行われている点を踏まえた曝露低減の重要性を指摘しています。

この研究を読むうえで押さえておきたいこと

この研究はイランの消費者を対象とした评価であり、対象となった汚染物質の濃度データや摂取量の設定など、評価の前提となる条件によって結果は変わり得ます。今回提供された情報の範囲では、対象製品の具体的な入手方法や検体数、日本の食品や消費実態への言及は見当たりません。モンテカルロシミュレーションによるリスク評価はあくまで統計的な推定であり、個々の消費者が実際にどの程度の健康影響を受けるかを直接示すものではない点にも留意が必要です。一つの研究として示された知見であり、これをもって結論が確定したわけではありません。

まとめ

この研究は、ポテトチップスという身近なスナック菓子について、金属・農薬・カビ毒という複数の汚染物質による経口曝露をモンテカルロシミュレーションで評価し、特にカビ毒への曝露や子どものアフラトキシン関連リスクについて注意を促す結果を報告しています。今後、汚染物質の低減に向けた取り組みや、他地域・他集団を対象とした追加の研究が待たれるところです。

原著論文の著者・所属:Hamid Ahmadpourmir(Medical Toxicology Research Center, Faculty of Medicine, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Seyedeh Faezeh Taghizadeh(Applied Biomedical Research Center, Basic Sciences Research Institute, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Ramin Rezaee(Applied Biomedical Research Center, Basic Sciences Research Institute, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Hamid Ahmadpourmir, Seyedeh Faezeh Taghizadeh, Ramin Rezaee. Metals, pesticides, and mycotoxins oral exposure via potato chips ingestion: A Monte Carlo-simulation risk assessment for Iranian consumers. トキシコロジー・リポーツ (2026). DOI: 10.1016/j.toxrep.2026.102327. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.