貧困や飢えを理由に子どもが学校に通い続けられない、という問題は世界各地の教育現場で長く課題とされてきました。ネパールでは、こうした状況を改善する取り組みのひとつとして、コミュニティスクール(地域立学校)で昼食を提供する『ミッドデイ・ミール(学校給食)プログラム』が導入されています。この制度はネパールにおいてはまだ比較的新しい実践であり、実際に現場でどのように機能しているのかを検証した研究が、トリブバン大学ダンクタ・マルティプル・キャンパスのラメシュ・プラサド・ルイテル氏によってまとめられ、学術誌『チンタン・ダーラ』に2026年9月に掲載予定です。
この研究は、『万人のための教育』という理念のもと、給食が生徒の通学状況にどのような変化をもたらしているのかを明らかにすることを目的としています。
どのように調べたのか
調査の対象はネパール東部のダンクタ郡内にあるコミュニティスクールに限定されています。研究は質的研究の手法を中心に据えており、一次データと二次データの両方を用いています。一次データの収集にあたっては、対象校の校長・教員・生徒への聞き取りや話し合いを行うとともに、研究者自身が食堂(キャンティーン)の設備状況や給食の配膳の様子を直接観察しています。
研究でわかったこと
調査の結果、給食プログラムを効果的に実施するうえでいくつもの課題が存在することが指摘されています。まず、調理に必要な地元産の食材の供給が不安定であることが挙げられています。また、政府が生徒一人あたりに割り当てている給食費が15ネパールルピーにとどまっており、これが十分な量や質の食事を用意するには不足していると報告されています。
さらに、食堂の運営体制が十分に整っていないことや、調理を担当する人員が食材の扱いや調理技術についての研修を受けていないことも課題として挙げられました。加えて、食堂の広さが不足し混雑しがちであるため、生徒全員が落ち着いて座り、秩序立てて食事をとれるような環境整備が必要だとされています。
この研究の読み方
この研究はネパール国内でもダンクタ郡という特定の地域のコミュニティスクールを対象にした質的調査であり、聞き取りと観察を中心とした手法に基づいています。そのため、ここで示された課題や傾向がネパールの他地域や異なる制度環境にそのまま当てはまるとは限らない点には注意が必要です。あくまで一つの地域における一つの研究であり、給食プログラムと生徒の通学継続との関係について確定的な結論を示すものではありません。
まとめ
この研究では、ネパールのコミュニティスクールにおける学校給食プログラムについて、食材供給の不安定さ、給食費の不足、食堂運営体制や調理人員の研修不足、食堂スペースの狭さといった複数の運営面の課題が指摘されています。学校給食という仕組みが子どもの通学継続を支える可能性を持つ一方で、その効果を十分に発揮するためには現場レベルでの体制整備が欠かせないことがうかがえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Ramesh Prasad Luitel. Mid-day Meal Policy and Student Retention in Nepalese Community Schools. チンタン・ダーラ (2026). DOI: 10.3126/cd.v19i01.99326.