著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

収穫したばかりの農産物に残る農薬の濃度は、実際に食べる段階の食品の濃度と同じとは限りません。米はもみ殻を取り除き、さらに外側の層を削って精米し、洗って炊いたり餅に加工したりしてから食べられます。その途中で、農薬の残留量は減ることもあれば、一部の部分に集まることもあります。

研究チームは、稲の害虫対策に使われる殺虫剤ブプロフェジンとエトフェンプロックスを対象に、米の加工の各段階で残留濃度がどう変わるかを調べました。あわせて、加工係数と、米や米製品を通じて人が日常的に摂取する量の推定も行いました。加工係数とは、加工後の食品の残留濃度を加工前の原料の濃度で割った値です。1より小さければ加工で濃度が下がり、1より大きければその部分で濃度が高くなったことを示します。

二つの農薬はどちらも水に溶けにくく、油になじみやすい性質を持ちます。エトフェンプロックスのほうがその傾向がより強いとされています。著者らは、米の部位ごとの分布や加工中のふるまいについて、特にブプロフェジンのデータを補う必要があると述べています。

どのように調べたか

研究は韓国・京畿道安城の水田で、品種「サムグァン」を用いて行われました。市場の米を調べる監視調査ではなく、条件を管理した圃場で加工実験を行う設計です。各農薬について独立した3つの区画を設け、収穫した米は区画ごとに分けて加工・分析しました。

加工の各段階で残留を確実に測定できるよう、農薬は韓国の適正農業規範(GAP)で推奨される使用量の3倍を目標に、10日間隔で3回散布しました。最終散布は、ブプロフェジンが収穫7日前、エトフェンプロックスが収穫14日前です。

収穫した米は乾燥させた後に精米機で加工しました。もみ殻を除いた玄米と、さらに外側の層を削った白米を作り、加工中に出たもみ殻や内側の殻も集めました。玄米と白米は洗って浸水させ、圧力炊飯器と電気炊飯器で炊きました。白米からは餅も作りました。稲わらも含め、各試料の残留濃度を液体クロマトグラフィー質量分析法で測定しました。この方法で確実に数値化できる下限(定量下限)は0.01 mg/kgです。

主な結果

精米によって、食べる部分の残留濃度は大きく下がりました。収穫時のもみ(籾つきの穀粒全体)と比べると、ブプロフェジンは玄米で91.9%、白米で99.0%減少しました。エトフェンプロックスはそれぞれ96.8%と99.5%の減少でした。濃度で見ると、ブプロフェジンはもみの6.30 mg/kgが白米では0.06 mg/kgに、エトフェンプロックスは8.31 mg/kgが0.04 mg/kgになりました。

一方、もみ殻の濃度はもみより高く、加工係数はブプロフェジンで6.45、エトフェンプロックスで3.60でした。残留濃度の順位は3つの区画すべてで「もみ殻>もみ>内側の殻>玄米>白米」と一致しました。著者らは、収穫時の残留の多くが穀粒の外側の部分に付いていたことを示すと解釈しています。

炊飯でも、玄米に残った農薬の濃度はさらに下がりました。ブプロフェジンは圧力炊飯で62.7%、電気炊飯で58.8%減少しました。エトフェンプロックスは14.8%と25.9%の減少にとどまり、この研究の条件ではブプロフェジンのほうが大きく減りました。白米を炊いたご飯と餅では、どちらの農薬も定量下限未満でした。ただし著者らは、炊飯中の吸水による薄まりと実際の除去を区別できていないと述べています。そのため、示された減少は濃度の変化として読むべきだとしています。

稲わらには、ブプロフェジンが19.30 mg/kg、エトフェンプロックスが10.53 mg/kgと比較的高い濃度が残っていました。稲わらは人の食品ではありませんが、家畜の飼料に使われることがあるため、別に考慮すべきだと論文は指摘しています。

食事からの長期的な摂取量は、韓国の食品摂取量データと国際機関の評価に基づく1日許容摂取量(ADI)を用いて推定されました。推奨量の3倍で散布した条件でも、ADIに対する割合の最大値はブプロフェジンで1.303%、エトフェンプロックスで0.261%と低い値でした。炊いたご飯については生米の摂取量を代わりに用いたため、比較には注意が必要だと著者らは述べています。

この研究が示すこと

この研究は、米に残る二つの殺虫剤の濃度が、主に精米の段階で大きく下がることを示しました。炊飯はその後の追加的な低減として働いていました。収穫時の穀粒で測った濃度だけでは、実際に食べる米の濃度を正しく表せないことが、具体的なデータで確かめられたといえます。

一方で、結果は単一の品種と特定の精米・調理条件で得られたものです。著者ら自身も、ほかの品種や加工条件へそのまま当てはめられるとは限らないと注意を促しています。

原著論文の著者・所属:Dongju Kim(Department of Environmental and Biological Chemistry, College of Agriculture, Life and Environment Sciences, Chungbuk National University, Cheongju 28644, Republic of Korea)、Seunghyeon Jo(Republic of Korea Institute of Toxicology, Jeongeup 56212, Republic of Korea)、Hyeonwoo Shin(NongHyup Chemical, Okcheon 29008, Republic of Korea)、Youngjin Ham(Residue Study Division, AB Solution, Hwaseong 18514, Republic of Korea)、Junyoung Kim(Republic of Korea Conformity Laboratories, Incheon 21999, Republic of Korea)、Eunbeen Oh(Dongbang Agro Corporation, Buyeo 33216, Republic of Korea)、Mihyun Cho(Department of Food Engineering, College of Engineering, Daegu University, Gyeongsan 38453, Republic of Korea)、Moohyeog Im(Department of Food Engineering, College of Engineering, Daegu University, Gyeongsan 38453, Republic of Korea)、Keesung Kyung(Department of Environmental and Biological Chemistry, College of Agriculture, Life and Environment Sciences, Chungbuk National University, Cheongju 28644, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dongju Kim, Seunghyeon Jo, Hyeonwoo Shin, et al. Residue Behavior, Processing Factors, and Dietary Exposure of Buprofezin and Etofenprox During Rice Processing. Foods 2026-10-27. DOI: 10.3390/foods15213846. 原著ライセンス:CC BY.