著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Agritechno
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、製糖の副産物である糖蜜を原料に、うま味調味料のグルタミン酸ナトリウム(MSG)を年間7万6,000トン生産する工場について、技術面と採算面から建設の実現可能性を検討しました。
背景には、インドネシアでのMSG需要の増加と輸入への依存があります。著者らは、糖蜜を使う商業規模のMSG工場について、製造工程の設計から投資額、収益性までを一体的に評価する研究が限られているとしています。
何を、どのように調べたか
この研究は、実際の工場の稼働成績を調べたものではなく、工程設計と計算に基づく事業性の評価です。年間330日、1日24時間の操業を想定し、原料の糖蜜には重量の50%の糖が含まれると設定しました。
設計した工程では、まず糖蜜中のショ糖を分解し、細菌のコリネバクテリウム・グルタミカムによる発酵でグルタミン酸をつくります。続いて菌体を除き、水酸化ナトリウムを加えてMSGに変え、脱色・濃縮した後、結晶を取り出して乾燥させます。発酵は35℃、48時間とし、グルコースからグルタミン酸への転換率を98%、グルタミン酸からMSGへの転換率を80%と仮定しました。
研究チームは、各工程に出入りする物質量と必要なエネルギーを計算し、設備の大きさや原料・電力・水などの必要量を見積もりました。経済評価では事業期間を25年、将来の収支を現在の価値に換算する割引率を10.8%、税率を30%とし、投資額、製造費用、利益、投資回収期間などを算出しました。また、原料価格や製品販売価格が変わった場合の影響も調べました。
主な報告結果
研究チームの計算では、年間7万6,000トンのMSGを生産するために、糖蜜が年間約21万9,096トン必要でした。MSGを1キログラムつくるのに糖蜜を2.88キログラム使う計算で、糖蜜の重量に対して得られるMSGの割合は34.7%と報告しています。
総投資額は6兆4,440億インドネシアルピア、年間製造費用は3兆9,430億ルピアと見積もられました。MSGの販売価格を1キログラム当たり7万ルピアとした場合、年間売上高は5兆3,200億ルピアでした。
将来の収支を現在の価値に換算して投資額を差し引く正味現在価値(NPV)は、1兆3,500億ルピアのプラスでした。収益性を示す内部収益率(IRR)は14.3%で、評価基準とした割引率10.8%を上回りました。税引き後の投資回収期間は5.07年、売上と総費用が等しくなる損益分岐点は生産能力の56.82%、年間4万3,183トンと報告しています。
価格変動の分析では、収益性は特にMSGの販売価格に左右されました。ただし、販売価格が想定より10%下がっても、NPVはプラスにとどまると著者らは報告しています。
この報告が示すこと
著者らは、設定した工程と経済条件の下では、この工場は技術的にも経済的にも成立すると結論づけています。その意味は、製糖の副産物をMSGの原料として活用し、国内生産によって輸入への依存を減らす選択肢を、工場規模の設計と費用計算で示したことにあります。
一方、著者らは事業上の課題として、複数の製糖工場などから継続的に糖蜜を調達する必要性、供給元や収穫期による糖蜜の品質の違い、水酸化ナトリウムやアンモニアの価格変動、既存メーカーとの競争を挙げています。報告された事業性は、こうした原料調達や販売の条件に関わる評価です。
原著論文の著者・所属:Muh. Rezky Fahlevi(Program Studi Teknologi Kimia Industri, Politeknik Negeri Ujung Pandang)、Nadila Diza Fatiha、Zulmanwardi、Zakiyah Darajat
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muh. Rezky Fahlevi, Nadila Diza Fatiha, Zulmanwardi, et al. Analisis Kelayakan Tekno-Ekonomi Pabrik Monosodium Glutamat dari Molase dengan Kapasitas 76.000 Ton/Tahun. Jurnal Agritechno 2026-10-31. DOI: 10.70124/at.v19i2.2159. 原著ライセンス:CC BY.