鶏肉の生産現場では、抗生物質に頼らずに成長効率や肉の品質を高める工夫が求められています。その候補として近年注目されているのが、地中海沿岸や中東の乾燥地帯に自生するシソ科のハーブ、ゼータリア・ムルティフローラです。イランのシラーズ大学やオーストラリアのセントラル・クイーンズランド大学などの研究グループが、このハーブの葉を粉末にして飼料に混ぜたとき、ブロイラー(食肉用に育てる若い鶏)の成長や肉質にどのような変化が生じるかを調べました。

実験では、生まれたばかりのロス308種の雄の雛240羽を4つのグループに分け、それぞれ1kgあたり0g(対照群)、1g、2g、3gのゼータリア・ムルティフローラ葉粉末を混ぜた飼料を42日間与えました。各グループは10羽ずつのペンを6つ設ける形で管理されています。

成長と肉の性質にみられた変化

42日間の飼育期間全体でみると、葉粉末を加えたグループでは体重増加量が増え、飼料要求率(体重を増やすのに必要な飼料の量の指標)が改善したと報告されています。一方で、鶏が食べた飼料の量そのものには差がみられませんでした。

肉質に関しては、胸肉と腿肉の両方で肉の明るさを示すL値が下がり、保水力(肉が水分を保持する能力)が高まったとされています。また腿肉ではコレステロール濃度の低下も確認されましたが、胸肉のコレステロール濃度やpH、赤みを示すa値、黄色みを示すb値には変化がみられませんでした。

微生物の面では、葉粉末の量を増やすほど、肉に含まれる一般的な好気性細菌数や大腸菌群数が減り、逆に乳酸菌数は増える傾向が確認されています。さらに、酸化ストレスに関わる指標として、総スーパーオキシドディスムターゼ活性と総抗酸化能が上昇し、脂質の酸化によって生じるマロンジアルデヒドの濃度は低下したとされました。ただし、グルタチオンペルオキシダーゼという別の抗酸化酵素の活性には変化がありませんでした。脂肪酸の組成についても、飽和脂肪酸の割合が減り、多価不飽和脂肪酸の割合が増える変化が両方の部位でみられ、一価不飽和脂肪酸の割合の増加は腿肉でのみ確認されています。研究グループは、今回試した中では1kgあたり3gの添加量が、全体として最も一貫した効果を示したとまとめています。

この研究を読むうえで押さえておきたいこと

この研究は、特定の飼育条件・鶏の系統・添加量の範囲で得られた結果であり、ここで示された変化がヒトの健康にどのような意味を持つかを直接示すものではありません。あくまで飼料への添加が鶏の成長パフォーマンスや肉の物理化学的・微生物学的・脂肪酸組成にどう関わるかを検討した一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に注意が必要です。

まとめ

この研究では、ゼータリア・ムルティフローラの葉粉末をブロイラーの飼料に加えることで、成長効率の改善や、肉の保水力・抗酸化関連指標・脂肪酸組成など複数の特性に好ましい方向の変化がみられたと報告されています。今後、他の条件下での再現性や、より幅広い添加量での検証が積み重ねられていくことが期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:A. Ashayerizadeh, V. Jazi, S. Kargar, et al. Zataria multiflora leaf powder in broiler diets: effects on growth performance and meat quality traits. ポウルトリー・サイエンス (2026). DOI: 10.1016/j.psj.2026.107586. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.