この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:The Scientific World Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

インスタント麺や乾麺はアジアを中心に広く親しまれている食品ですが、一般的に食物繊維や抗酸化成分が少ないという課題があります。健康志向の高まりとともに、麺のような日常的な主食に機能性を持たせようとする研究が世界各地で進められています。今回紹介するのは、マングローブ植物の一種であるオヒルギ(Acanthus ilicifolius)の葉から作った粉末を小麦粉に混ぜ込み、乾麺の栄養や抗酸化特性がどう変化するかを調べた研究です。オヒルギの葉には生理活性成分が豊富に含まれているとされ、機能性食品の材料としての可能性が注目されています。

研究チームは、小麦粉(WF)に対してオヒルギ葉粉末(AF)を混ぜる割合を変えた4種類の麺を用意しました。オヒルギ葉粉末を全く使わないF0(小麦粉100%)に加え、F1(小麦粉92%・オヒルギ葉粉末8%)、F2(同84%・16%)、F3(同76%・24%)という具合に、置き換える割合を段階的に増やしています。これらの麺について、一般成分(栄養成分の基本組成)、食物繊維量、そしてDPPH法という手法を用いた抗酸化活性を分析したほか、食べたときの好ましさを評価する官能評価(嗜好調査)や、味や食感が「ちょうどよいか」を尋ねるJust-About-Right法によるテストも行われました。

研究でわかったこと

オヒルギ葉粉末の割合を増やすほど、麺に含まれる炭水化物とエネルギー(カロリー)は有意に減少したと報告されています。一方で、灰分(ミネラル分の指標)、タンパク質、粗繊維、そして食物繊維の総量は増加する傾向が見られました。脂質の含有量については、置き換えの割合によらずほぼ一定であったとされています。

抗酸化活性についても顕著な変化が示されました。抗酸化力の指標であるIC50値(数値が小さいほど抗酸化活性が高いことを示す)は、小麦粉100%のF0で25,167.79ppmであったのに対し、オヒルギ葉粉末を24%配合したF3では4324.72ppmまで低下したと報告されています。これは、オヒルギ葉粉末の配合量が増えるほど、麺の抗酸化力が高まったことを示唆しています。

一方で、官能評価では置き換えの割合が高くなるほど、消費者からの評価(嗜好性)が下がる傾向が示されました。ただし、食感については置き換えの割合による影響がみられなかったと報告されています。こうした結果を踏まえ、研究チームは8%の置き換え(F1)が、健康面でのメリットと消費者の受け入れやすさのバランスが最も良い、いわば最適な配合であるとしています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、乾麺という身近な食品にマングローブ植物由来の材料を活用する可能性を示した一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。栄養成分や抗酸化活性の分析結果、官能評価の結果はあくまで今回の実験条件下で得られたものであり、実際の健康への効果を保証するものではない点に留意が必要です。また、抗酸化活性の測定はDPPH法という特定の手法によるものであり、他の抗酸化活性の指標や、実際に人が摂取した場合の生体内での影響については、要旨からは明らかになっていません。

今回紹介した研究は、廃棄されがちなマングローブ植物の葉を食品素材として活用する、持続可能な食品開発の一例として位置づけられています。今後、こうした未利用資源を使った機能性食品の研究がどのように発展していくのか、注目されるところです。

まとめ

オヒルギの葉粉末を小麦粉に混ぜて作った乾麺は、置き換える割合が増えるほど炭水化物とエネルギーが減り、タンパク質や食物繊維、抗酸化活性が高まったと報告されています。ただし置き換え割合が高いほど嗜好性は下がる傾向があり、研究チームは8%程度の置き換えが栄養面と食べやすさのバランスに優れるとしています。マングローブ由来の未利用資源を日常食に取り入れる試みとして、今後の研究の広がりが期待されるテーマといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):オヒルギ(Acanthus ilicifolius)葉粉末の活用による持続可能な食品開発に向けた乾麺の栄養・抗酸化特性の改善(ザ・サイエンティフィック・ワールド・ジャーナル・2026年01月)

著者:Diana Nur Afifah(Department of Nutrition Science, Faculty of Medicine, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)、Katarina Aletta Sahara(SDGs Center, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)、Bagas Naufal Pudyastungkara(SDGs Center, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)、Laurensia Aldora Bachtiar(SDGs Center, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)、Denny Nugroho Sugianto(Department of Oceanography, Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)、Dessy Ariyanti(Department of Chemical Engineering, Faculty of Engineering, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)、Bulan Prabawani(Department of Business Administration, Faculty of Social and Political Sciences, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)、Wiwandari Handayani(Department of Urban and Regional Planning, Faculty of Engineering, Universitas Diponegoro, Semarang, Central Java, Indonesia, undip.ac.id)