著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。

掲載誌:Archives of Pediatrics and Pediatric Surgery

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が損なわれることで炎症が慢性的に続き、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。子どもでは食物アレルギーを伴うことがあり、原因となる食品を食事から除く「除去食」が治療の重要な柱とされています。一方で、どの年齢でどのように食事を調整するかという臨床上の手順は、整理を続ける必要があると著者らは指摘しています。

「感作」とは、特定の食品に対して体がアレルギー反応を起こしうる状態になっていることを指します。研究チームは、食物への感作や食物アレルギーを伴うアトピー性皮膚炎の子どもに対して、現在どのような食事療法が行われているかを年齢層ごとに分析することを目的としました。

何を調べたか

著者らは、eLibrary、PubMed、EMBASE、Web of Scienceという医学文献データベースを使い、2016年5月から2026年5月までの約10年間に発表された研究を対象に系統的レビューを行いました。系統的レビューとは、決められた条件で文献を網羅的に探して整理する方法です。食事とアトピー性皮膚炎の経過との関係を扱った研究や、予防・治療に関するランダム化臨床試験を検討し、21件の資料を選んでいます。

分析では、診断に用いられる指標、食事療法の段階、そしてロシア国内の指針と欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI)などの国際的な指針との違いを比べました。

主な報告内容

論文によると、ロシアと海外の指針は基本的な原則ではおおむね一致していました。どちらも、除去食を始める前に感作を客観的に確かめる必要があるとし、離乳食(補完食)を生後4〜6か月で始めるという時期についても共通していました。

診断については、食品を実際に少量ずつ食べて反応を確かめる「食物経口負荷試験」が標準的な方法とされる一方、ロシアではこの試験が公的に認証されていないため、疑わしい食品を一定期間除いて症状の変化を見る診断的除去食や、食品を慎重に再び与えて反応を見る方法が重視されていると紹介されています。論文はまた、食事療法を、診断の段階、治療としての除去食の段階、食事を広げていく段階、季節的な悪化などに備える維持の段階の4つに分けて整理しています。

違いが大きかったのは、手順の細かさです。ロシアの指針は乳児期について、より厳格で幅広い除去を定めていました。母乳で育てている場合は母親の食事からも多くの食品を除くことや、牛乳たんぱくアレルギーの乳児に対して、たんぱく質を細かく分解した治療用ミルクから始め、2週間で改善しなければアミノ酸を主成分とするミルクに切り替えるといった段階的な選び方が詳しく示されています。著者らは、乳児期にはアレルギー検査の精度や実施できる検査に年齢による制約があることが、この厳格さの背景にあると説明しています。国際的な指針には、このような年齢による明確な区分は見られないとされています。

1歳を過ぎると診断の手段が広がるため、方針は、検査で原因と確認された食品だけを狙って除く方向へ移り、その際には栄養が不足しないよう支えることが欠かせないとされています。論文では、鶏卵、大豆、穀物、魚介類、ピーナッツなど食品ごとに、交差反応や、除去したときに不足しやすい栄養素とその補い方も整理されています。

この研究が示すこと

著者らは、根拠がまだ十分でない点として、プロバイオティクス(体に有益とされる生きた菌)の使い方、除去していた食品を再び食べ始める最適な時期、腸内細菌叢が食物への耐性の獲得にどう関わるかの3点を挙げ、いずれも合意が得られていないと報告しています。

このレビューは、食物アレルギーを伴うアトピー性皮膚炎の子どもの食事療法が、年齢に応じて一人ひとりに合わせて組み立てられるべきものであること、そして国内外の指針が基本では一致しつつも、乳児期の手順の細かさに違いがあることを示しています。

原著論文の著者・所属:T. Y. Maksimycheva(Research Clinical Institute of Childhood of the Moscow Region)、V. V. Shadrina(Research Centre for Medical Genetics named after acad. N. P. Bochkov; Research Clinical Institute of Childhood of the Moscow Region)、N. I. Lozko(Research Clinical Institute of Childhood of the Moscow Region)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):T. Y. Maksimycheva, V. V. Shadrina, N. I. Lozko. Current Issues in the Nutrition of Children with Atopical Dermatitis Accompanied by Food Sensitization. Archives of Pediatrics and Pediatric Surgery 2026-10-24. DOI: 10.66825/2949-4664-apps-4-3-40-49. 原著ライセンス:CC BY.