著者の所属・活動拠点の国は、ベナン、コートジボワールです。

掲載誌:Journal of Food Composition and Analysis

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食用きのこは、質の高いたんぱく質、必須の微量栄養素、生理活性をもつ代謝物を併せ持つことから、多機能な食品として注目されています。一方で著者らは、研究が世界的に偏って行われていること、また工業的な加工が栄養面や健康機能面の価値にどう影響するかが十分に分かっていないことを課題として挙げています。

そこで研究チームは、主要な食用きのこの栄養、酵素、薬理的な特性を総合的に評価することを目的としました。あわせて、研究が行われている地域の傾向や、収穫後の加工方法がきのこの機能的な価値にどう影響するかも検討しています。

何を調べたか

この研究は、既存の研究を集めて整理する文献レビューです。著者らは複数のデータベースで、PICOと呼ばれる枠組み(対象、比較、結果などの観点から検索条件を組み立てる方法)に基づいて文献を検索しました。

対象としたのは、食用きのこの栄養組成、酵素活性、健康への作用の仕組みを評価した研究で、種による違い、栽培方法、収穫後の加工技術に関するものも含まれます。なお、ここでの紹介は論文の抄録に記載された内容に基づいています。

主な報告結果

論文の発表傾向を見ると、研究はアジアに強く集中しており、次いでヨーロッパ、アフリカの順でした。著者らは、この分布が各地の食文化や産業上の優先度を反映していると述べています。

栄養面では、A. bisporus(いわゆるマッシュルーム)とC. indicaが、たんぱく質を多く含む種として挙げられ、たんぱく質含有率は最大42.5%と報告されています。これらは、含硫アミノ酸の一種であるエルゴチオネインの主要な供給源でもあり、186.1マイクログラム毎グラムという値が示されています。

酵素の面では、ヒラタケ属(Pleurotus)のきのこが、ラッカーゼという酵素を多く生産するものとして際立っていました。報告された活性は最大で1リットルあたり51,353単位です。ラッカーゼは酸化反応を進める酵素で、著者らはこの結果が、環境中の汚染物質を生物の力で処理するバイオレメディエーションや食品加工への応用可能性を裏付けるとしています。

薬理的な面では、きのこが複数の標的に作用する利点を示すことが整理されました。例として、ヤマブシタケ(H. erinaceus)で神経成長因子(NGF)を介した神経保護作用、ヒラタケ(P. ostreatus)でコレステロールの低下が挙げられています。

収穫後の加工については、加熱処理は微生物面の安全性確保には有効なものの、ビタミンCや抗酸化成分の量を30〜60%減らすことが報告されています。これに対し、凍結乾燥や発酵では、生理活性成分が保たれるか、むしろ高まるとされています。

研究が示すこと

著者らは全体として、きのこを栄養補助的な食品素材の開発や産業用酵素の生産に応用が期待できる、多用途な生物素材として位置づけています。とくに、加工方法の選び方によって栄養や機能成分の残り方が変わるという整理は、きのこの価値が種の違いだけでなく、収穫後の扱い方にも左右されることを示しています。

原著論文の著者・所属:Janvier Mêlégnonfan Kindossi(Laboratory of Nutrition and Food Sciences, Faculty of Agronomy, University of Parakou, P.O. Box 123 Parakou, Benin)、Abdoul-Azize Boukary(Research Unit Tropical Mycology and Plants-Soil Fungi Interactions, University of Parakou, Parakou, Benin)、Jacques Gnanwa(Department of Biochemistry and Microbiology, Agroforestery Unit, Jean Lorougnon Guede University, BP 150 Daloa, Côte d’Ivoire and Laboratory of Biocatalysis and Bioprocesses, Biochemistry and Food Technology Unit, Nangui Abrogoua University, 02 BP801 Abidjan 02, Côte d’Ivoire)、Ahua René Koffi(Laboratory of Microbiology and Biotechnology in Ecology Research Center, University of Nangui ABROGOUA, 08 BP 109 Abidjan 08, Côte d’Ivoire)、Franck Hongbete(Laboratory of Nutrition and Food Sciences, Faculty of Agronomy, University of Parakou, P.O. Box 123 Parakou, Benin)、Nourou Souleymane Yorou(Research Unit Tropical Mycology and Plants-Soil Fungi Interactions, University of Parakou, Parakou, Benin)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Janvier Mêlégnonfan Kindossi, Abdoul-Azize Boukary, Jacques Gnanwa, et al. Edible mushrooms: Nutritional composition, bioactive compounds, enzymatic potential, health benefits and post-harvest processing technologies. Journal of Food Composition and Analysis 2026-09-21. DOI: 10.1016/j.jfca.2026.109523. 原著ライセンス:CC BY.