ブルーベリーは収穫後すぐに傷みやすく、水分が抜けて実が柔らかくなったり、カビが生えたりしやすい果物です。この劣化をできるだけ抑えるための方法として、食品の表面に薄い膜をつくる「可食性コーティング」が世界各地で研究されています。今回紹介する研究では、ポルトガルのミーニョ大学(University of Minho)とトラス・オス・モンテス・エ・アルト・ドウロ大学(University of Trás-os-Montes e Alto Douro)の研究者らが、カルボキシメチルセルロース(CMC)というセルロース由来の食品用素材に、ブルーベリー抽出物(BE)を加えたコーティングを開発し、‘Duke(デューク)’と‘Draper(ドレイパー)’という2品種のブルーベリー(Vaccinium corymbosum L.)で、その効果を4℃の低温保存下で調べました。
どんな膜をつくり、何を調べたのか
研究チームはまず、濃度1.75%のCMCに、濃度0.25%のブルーベリー抽出物を加えたフィルム(CMC+BE)をつくり、その性質を調べました。その結果、CMC+BEはブルーベリー抽出物を加えていないCMC単体のフィルムに比べて、水蒸気を通しにくい性質(水蒸気透過性)が26%低く、また引っ張ったときに伸びる度合い(破断伸び)が50%高いことが確認されました。これは、抽出物を加えることでフィルムの機能や柔軟性が変化したことを示しています。
また、ブルーベリー抽出物そのものにも注目し、DPPHという物質を使った実験で抗酸化力を測定したところ、濃度に応じて14.04〜37.68%の範囲で活性が確認されました。さらに、果物を腐らせるカビの一種であるBotrytis cinereaに対する増殖抑制効果も調べられ、条件によって18.54〜65.99%の抑制が見られたと報告されています。
実際にブルーベリーへ塗布した結果
このコーティングを実際に‘Duke’と‘Draper’の果実に塗り、低温(4℃)で保存しながら品質の変化を追跡しました。まず、コーティングによって果実の重量減少を大きく抑える効果は統計的には確認されませんでした。一方で、果実の硬さ(硬度)については両品種でコーティングの効果がはっきりと見られ、CMC+BEを塗布した果実は無処理の対照群に比べて硬度が41〜48%高く保たれていました。
また、‘Duke’ではpH値や成熟度を示す指標(マチュリティ・インデックス)の上昇が抑えられており、コーティングが果実の代謝的な老化(追熟の進行)を遅らせている可能性が示されました。加えて、コーティング直後には果実の総フェノール含量と抗酸化能が上昇しており、これはブルーベリー抽出物に含まれる生理活性成分が果実側に加わったことによるものと考えられています。色に関しては、明度を示すL*値や鮮やかさを示すC*値がコーティングによって低下する傾向が見られましたが、これは主にコーティング自体の光学的な影響(膜による見え方の変化)によるものとされています。そのうえで、官能評価(人の感覚による評価)ではコーティングの有無によるはっきりとした差は見られず、保存期間中も食味などの受容性は保たれていたと報告されています。
この研究をどう受け止めればよいか
この研究は、ポルトガルの2つの大学に所属する研究者らによって行われたもので、対象は‘Duke’と‘Draper’という2品種のブルーベリーに限られています。今回の要旨や報告された内容には、日本の研究機関や日本の食習慣に関する言及は含まれていません。重量減少の抑制については有意な効果が確認されなかった点や、色の変化がコーティング自体の見た目の影響を含む点など、良い面だけでなく限定的な結果も報告されています。あくまで特定の品種・保存条件のもとで得られた一つの研究結果であり、コーティングを塗ればどんな果物でも同じように日持ちするといった断定はできない点に注意が必要です。
まとめ
今回の研究では、ブルーベリー由来の抽出物を加えた食べられるコーティング(CMC+BE)が、‘Duke’と‘Draper’という2品種のブルーベリーの硬さの維持や、抗酸化成分の付与、カビの増殖抑制などに関わる可能性が示されました。同時に、重量減少の抑制効果は明確でなかったことなど、限界も報告されています。研究チームは、収穫後のブルーベリーの品質保持と、果物の加工過程で生まれる副産物(ブルーベリー由来の抽出物など)の有効活用を組み合わせる一つのアプローチとして、この技術を位置づけています。 ※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Tiago Lopes, Ana Paula Silva, Vânia Silva, et al. Influence of edible carboxymethyl cellulose coatings incorporating blueberry extract on the postharvest shelf life of two Vaccinium corymbosum L. cultivars (‘Duke’ and ‘Draper’). サイエンティア・ホルティカルチュラエ (2026). DOI: 10.1016/j.scienta.2026.115094. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.