著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:International Journal of Food Properties
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
冷凍した肉は、解凍後に品質が落ちることがあります。研究チームは、この品質低下が凍結の速さによってどう変わるのか、またその背景にある仕組みを調べることを目的としました。
著者らは牛肉を対象に、ゆっくり凍らせる「緩慢凍結」と、短時間で凍らせる「急速凍結」を比較しました。
何を調べたか
抄録によると、研究チームは二つの凍結方法で処理した牛肉を、三つの観点から比較しました。一つ目は、水分を保つ力や色、食感といった肉の品質です。二つ目は、肉に含まれるタンパク質の物理的・化学的な性質です。三つ目は、タンパク質と水の結びつきの強さです。
分子レベルの分析では、筋肉の繊維を形づくる「筋原線維タンパク質」が取り上げられています。
主な結果
論文によると、急速凍結では、食品中の水分が盛んに氷へと変わる温度帯(最大氷結晶生成帯)を通過する時間が、緩慢凍結より短くなりました。その結果、できる氷の結晶は小さく、大きさもそろっており、肉の微細な構造が受ける損傷も少なかったと報告されています。
分子レベルでは、急速凍結のほうが筋原線維タンパク質の本来の形をよく保っていました。具体的には、タンパク質の中のらせん状の構造(αヘリックス)の割合が高く、タンパク質が水に溶けやすい性質(溶解性)も高く、タンパク質と水の結びつきもより強かったとされています。
著者らは、その結果として急速凍結した牛肉の品質が有意に優れていたと報告しています。解凍時や加熱時に失われる水分が少なく、水分を保つ力が高かったほか、色の安定性も向上していました。食感の評価では、硬さと弾力性が高く、切断に必要な力(せん断力)は低い結果でした。
研究が示すこと
研究チームは、急速凍結によって、凍結が引き起こす品質の低下や、低温でタンパク質の形が崩れる「低温変性」を効果的に抑えられると結論づけています。
この研究は、凍結の速さの違いが、氷の結晶や肉の微細な構造、タンパク質の状態、そして冷凍・解凍後の牛肉の品質のそれぞれに差となって表れることを報告したものです。なお、氷の結晶の違いがどのような経路でタンパク質の変化につながるのかについては、抄録では述べられていません。
原著論文の著者・所属:Shuyi Qian(School of Food and Bio-Engineering, Bengbu University, Bengbu, China)、Hong Liu(School of Food and Bio-Engineering, Bengbu University, Bengbu, China)、Xuan Dong(School of Food and Bio-Engineering, Bengbu University, Bengbu, China)、Bo Tang(School of Food and Bio-Engineering, Bengbu University, Bengbu, China)、Zhengshang Chen(Sheep Industry Development Research Institute, Anhui Zhenghua Food Co., Ltd Bengbu, China)、Bin Zhang(School of Food and Bio-Engineering, Bengbu University, Bengbu, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shuyi Qian, Hong Liu, Xuan Dong, et al. Freezing induced quality deterioration and protein characteristic alterations of beef muscle: implications of freezing rate. International Journal of Food Properties 2026-08-14. DOI: 10.1080/10942912.2026.2715188. 原著ライセンス:CC BY.