著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Intellektika Jurnal Ilmiah Mahasiswa
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアには、家畜の皮を加工して揚げた「クルプック・クリット(皮のクラッカー)」という食品があります。ヒツジの皮は食肉処理の副産物ですが、たんぱく質を多く含み、食品原料として活用できる可能性があります。著者らは、インドネシア東部のヌサ・トゥンガラ・ティムール州ロテ島の在来ヒツジ(ロテヒツジ)の皮を使い、加工工程の一つである「煮る時間」が製品の品質にどう影響するかを調べました。
皮のたんぱく質の大部分はコラーゲンで、クラッカーの強さや膨らみに関わるとされています。煮ることで硬い皮がやわらかくなる一方、加熱が長すぎるとコラーゲンがゼラチン状に変化しすぎて、品質に悪影響が出るおそれがあります。豚の皮を対象とした先行研究では、煮る時間はたんぱく質やコラーゲンの量に有意な影響を与えなかったものの、15〜20分の加熱が推奨されていました。著者らは、性質の異なるヒツジの皮について個別に調べる必要があること、また煮る時間が標準化されていないため製品の品質がばらつきやすいことを研究の背景として挙げています。
どのように調べたか
研究チームは、新鮮なロテヒツジの皮を洗って石灰水に3時間浸し、毛を削り取ったあと、煮る時間を8分、10分、12分の3通りに変えて処理しました。その後、皮を2×5センチに切って乾燥させ、調味料と油で10分間下ごしらえしてから、たっぷりの油で揚げてクラッカーに仕上げました。
3通りの条件それぞれで5回ずつ、合計15回の試作を行い、条件を無作為に割り当てる実験計画で比較しました。測定したのは、たんぱく質の含有率、脂質(脂肪)の含有率、そして歩留まりの3項目です。たんぱく質は、試料に含まれる窒素の量から算出する「ケルダール法」で、脂質は溶媒で脂肪分を抽出して量る「ソックスレー法」で測りました。歩留まりは、加工前の重さに対して最終製品の重さが何割残ったかを示す値です。
主な結果
統計解析の結果、煮る時間はたんぱく質の含有率に非常に明確な差を生み、脂質の含有率と歩留まりにも統計的に意味のある差をもたらしたと報告されています。
たんぱく質の平均含有率は、8分で51.71%、10分で54.95%、12分で55.29%と、煮る時間が長いほど高くなりました。ただし、8分と他の2条件の間には差が認められた一方、10分と12分の間には統計的な差は見られませんでした。著者らは、加熱によってコラーゲンの結びつきがほどけ、たんぱく質が分析で検出されやすくなったことや、水に溶ける他の成分が流れ出てたんぱく質の割合が高まったことが関係していると考察しています。
脂質の平均含有率は、8分で17.30%、10分で18.22%、12分で19.22%でした。統計的に差があったのは8分と12分の間です。著者らは、加熱で皮の組織がやわらかく多孔質になり、揚げる際に油を吸いやすくなったことに加え、下ごしらえと本揚げの2回にわたり油で加熱する工程が影響したと推測しています。
歩留まりは、10分が86.37%で最も高く、12分が82.85%、8分が77.90%で最も低くなりました。統計的に差があったのは8分と10分の間で、著者らは10分程度の加熱が皮の組織の水分保持とやわらかさの点で適していた可能性を示しています。
研究が示すこと
著者らは、たんぱく質と脂質の含有率が最も高く、歩留まりも比較的高かったことから、今回試した条件の中では12分の加熱が総合的に最もよい処理だったと結論づけています。一方で、比較したのは8〜12分の3段階だけで、測定項目もたんぱく質・脂質・歩留まりの3つに限られるため、結果を一般化する際には慎重さが必要だと論文自身が述べています。
この研究は、地域で得られるヒツジの皮を食品に加工する際、煮る時間という身近な工程の違いが、製品の成分や得られる量に差を生むことを具体的な数値で示したものです。加工条件をそろえて品質を安定させるための手がかりとなる報告といえます。
原著論文の著者・所属:Angelina S. E. Sonputri(Universitas Nusa Cendana)、Bastari Sabtu(Universitas Nusa Cendana)、Heri Armadianto(Universitas Nusa Cendana)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Angelina S. E. Sonputri, Bastari Sabtu, Heri Armadianto Pengaruh Lama Perebusan Kulit Domba Rote terhadap Kadar Protein, Kadar Lemak dan Rendemen Kerupuk Kulit. Intellektika Jurnal Ilmiah Mahasiswa 2026-07-30. DOI: 10.59841/intellektika.v4i4.4118. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。