この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Agroteknika

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシアでは米が最も多く食べられている主食ですが、一般的な米のタンパク質含有量は100グラムあたり7%程度と比較的低いとされています。そこで、通常の米よりタンパク質の多い稲の品種が開発されてきました。インドネシアのジェンデラル・スディルマン大学が開発した「インパゴ・プロタニ」もその一つで、論文が引用する先行報告によると、この米はタンパク質を約9〜13%、亜鉛を27ppm含みます。

一方、インドネシアでの米の利用は、ご飯やおかゆ、伝統菓子などが中心で、付加価値の高い現代的な加工品への展開は十分ではないと著者らは指摘しています。その一例として研究チームが取り上げたのが、炊いた米や米粉に塩などを加えて乾燥させ、揚げて食べるスナック「ライスクラッカー」です。

ライスクラッカーの生地をまとめるには、つなぎとなる粉が必要です。研究チームは、キャッサバ(いもの一種)の粉を加工・改質した「MOCAF(モカフ)」に着目しました。モカフは小麦粉に近い性質をもち、結着力が高いとされます。また、生地を蒸す時間は、デンプンが水を吸って膨らみ糊のようになる「糊化」の進み方を左右し、仕上がりの膨らみに影響すると考えられています。しかし、インパゴ・プロタニ米、モカフの配合量、蒸し時間の三つを組み合わせて調べた研究はこれまでなかったといいます。本研究の目的は、モカフの配合量と蒸し時間がこの米で作ったライスクラッカーの物理的性質と官能特性(人が食べて感じる特性)にどう影響するかを明らかにすることです。

どのように調べたか

研究チームは、インパゴ・プロタニ米を炊いてすりつぶし、モカフ、タピオカ粉、塩、ニンニク粉、コショウなどを混ぜて生地を作りました。すりつぶしたご飯とモカフの割合は、モカフ15%、30%、45%の3段階としました。生地を直径約4センチの棒状にまとめて70℃で蒸し、蒸し時間は30分、60分、90分の3段階としました。その後、冷蔵してから約2ミリの厚さに切り、乾燥させて170℃の油で30秒揚げました。配合量3段階と蒸し時間3段階を組み合わせた9通りの条件を、それぞれ3回ずつ繰り返して試作しています。

評価項目は、揚げる前後の直径の変化から求める「膨化率」と、試料を割るのに必要な力を機器で測る「破断力」の二つの物理的性質です。破断力はサクサク感やかみ切りやすさと関係するとされます。あわせて、ある程度訓練を受けた20人のパネリスト(評価者)が、色、食感、味、全体的な好ましさを点数で評価しました。結果は統計的な検定で比較されています。

主な結果

膨化率に統計的に意味のある差(有意差)をもたらしたのは、蒸し時間だけでした。蒸し時間ごとの平均膨化率は、30分で23.62%、60分で28.14%、90分で33.99%でした。30分は60分・90分より有意に低く、60分と90分の間には有意差はありませんでした。モカフの配合量、および配合量と蒸し時間の組み合わせについては、膨化率に有意な影響は認められませんでした。著者らは、蒸し時間が長いほど糊化が十分に進んで弾力のあるデンプンの網目ができ、それが揚げる際に水蒸気を閉じ込めて生地を膨らませると考察しています。

破断力については、モカフの配合量も蒸し時間も、両者の組み合わせも有意な影響を示しませんでした。平均値は条件によって1294.95〜2215.31 N/sとばらつきましたが、同じ条件の試料の間でも値の差が大きく、統計的な差にはなりませんでした。著者らは、モカフを45%まで加えても、製品の構造は主にインパゴ・プロタニ米のデンプンの性質で決まっているためではないかと考えています。

一方、官能評価では、配合量と蒸し時間の組み合わせによって評価が有意に異なりました。色の点数は、モカフ15%・蒸し30分の試料が最も高く(4.35、黄みがかった白)、モカフ30%・蒸し90分の試料が最も低くなりました(1.55、濃い茶色)。蒸し時間が長いほど、揚げた後の色が濃くなる傾向が見られました。著者らはこの理由として、糖とタンパク質が反応して褐色になる「メイラード反応」の関与を推測しています。食感はモカフ30%・蒸し90分が最もサクサクしていると評価され、味はモカフ45%・蒸し60分が最も高い評価でした。

全体的な好ましさが最も高かったのはモカフ45%・蒸し60分の試料(4.00)で、最も低かったのはモカフ30%・蒸し30分の試料(2.40)でした。研究チームは、モカフ45%・蒸し60分を、好ましさが最も高く食感も良好な最良の条件と結論づけています。

研究が示すこと

この研究によると、インパゴ・プロタニ米のライスクラッカーでは、モカフを45%まで加えても膨らみや割れやすさに有意な変化は見られませんでした。膨らみを左右したのは蒸し時間でした。一方、食べたときの色、食感、味、好ましさは、モカフの配合量と蒸し時間の組み合わせによって異なっていました。高タンパク米と地元のキャッサバ由来の粉を組み合わせたスナックづくりについて、配合や工程を選ぶための具体的な手がかりを示した研究といえます。

著者:Mustaufik Mustaufik(Universitas Jenderal Soedirman)、Laksmi Putri Ayuningtyas(Universitas Jenderal Soedirman)、Gustia Suci Cahyani(Universitas Jenderal Soedirman)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mustaufik Mustaufik, Laksmi Putri Ayuningtyas, Gustia Suci Cahyani Karakteristik Fisik dan Sensori Rice Crackers Berbahan Dasar Beras Inpago Protani dengan Variasi Tepung MOCAF dan Lama Pengukusan. Agroteknika 2026-09-25. DOI: 10.55043/agroteknika.v9i3.597. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。