著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Bima Abdi Jurnal Pengabdian Masyarakat

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

活動の目的:設備・経理・販路という三つの課題

インドネシアでは、中小零細事業者が雇用や地域経済を支えています。なかでもコーヒー加工は、国内のコーヒー消費文化の広がりや地元産コーヒーへの関心の高まりを受けて、発展の余地が大きい分野とされています。著者らは、インドネシア・中部ジャワ州クドゥス県メナワン村で家族経営のコーヒー事業を営む「コピ・ガンサル」を対象に、大学と地域が協力する地域連携プログラムを実施し、その内容と成果を報告しました。

論文によると、この事業者には三つの課題がありました。一つ目は生産設備です。自前の焙煎機を持たず、簡素な道具で焙煎していたため、仕上がりは作業者の経験に左右されやすく、大口注文の際には他者の機械を借りる必要がありました。焙煎は豆の色、香り、味を決める重要な工程で、温度や焙煎の度合いによって仕上がりが変わります。そのため、品質をそろえるには工程を管理しやすい設備が求められていました。二つ目は、経理の記録が十分に整っていなかったことです。三つ目は、販売が従来型の方法に頼っており、顧客層が限られていたことです。

著者らは、焙煎技術の効果やデジタルマーケティングの効果はこれまで別々に論じられることが多く、家族経営規模のコーヒー事業で両者を組み合わせて支援した例は地域レベルではあまり検討されていないと指摘しています。そこで、生産、経営管理、販売の三つの面を一体的に強化することを目指しました。

何を行ったか:機械の提供だけで終わらせない支援

活動は2026年8月に行われ、事業者自身が計画段階から加わる参加型の方法がとられました。事業者は、プログラムの提案書を作る段階から研究チームと話し合いを重ね、優先して取り組むべき課題を一緒に決めました。

生産面では、事業者の規模や必要に見合った「適正技術」として、温度を調整できる焙煎機と粉砕機を導入しました。著者らは、機械を渡すだけでなく、機能の説明、操作手順、実際に動かしながらの実習、手入れの方法までを研修で扱ったと述べています。

経営管理面では、収入、支出、資本、売上を体系的に記録するための、コンピューターを使った会計記録の研修と継続的な支援を行いました。マーケティング管理用の情報システムのアプリも導入しています。販売面では、オンラインの通販サイトやソーシャルメディアを宣伝と販売に活用する方法について、研修と支援を行いました。研修のあとも定期的に支援を続け、最終的に焙煎機とアプリが事業者へ正式に引き渡されました。

報告された主な結果

著者らは、プログラムの前後で事業者の状況を比較しています。生産能力は月約530キログラムから約600キログラムに高まり、論文ではこれを13.2%の向上としています。導入した焙煎機は1回あたり3〜5キログラムを処理でき、自前の機械を使えるようになったことで作業が速くなり、借りた機械に頼る度合いも下がったと報告されています。また、浅煎り、中煎り、深煎りの各段階を、以前より安定して作り分けられるようになったとしています。

経営面では、売上高が月約8000万ルピアから約9000万ルピアへ12.5%増え、利益は実施前を100とした指数で112となり、12%改善したと報告されています。従業員数は5人から6人に増えました。著者らは、この増員を生産、包装、デジタル販売、事務といった業務が増えたことに伴うものと説明しています。

さらに、事業者は焙煎機をより自立して操作できるようになり、経理の記録も整理されて事業の評価や費用管理に役立つようになったといいます。販路については、店頭などの従来の販売に加えてオンラインの販売経路を持つようになり、商品が人の目に触れる機会や届く範囲が広がったと述べています。

この報告が示すこと

著者らは、生産技術、財務記録、デジタル販売を組み合わせて支援したことが、コピ・ガンサルの生産性と競争力の向上につながったと結論づけています。あわせて、成果を左右するのは機械があるかどうかだけではなく、事業者がそれを使いこなし、手入れを続け、販売や経理の道具も自分たちで扱えるようになることだと強調しています。

この報告は、一つの家族経営事業者で行われた支援の記録です。小規模な事業を支える際には、設備の提供と人の力を育てることを同時に進め、生産から販売までを一体として考えることが大切だという著者らの考え方が、具体的な実践を通じて示されています。

原著論文の著者・所属:Noor Latifah(Universitas Muria Kudus)、Akhmad Zidni Hudaya(Universitas Muria Kudus)、Fajar Nugraha(Universitas Muria Kudus)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Noor Latifah, Akhmad Zidni Hudaya, Fajar Nugraha. Implementasi Teknologi Produksi dan Digital Marketing dalam Meningkatkan Produktivitas UMKM Kopi Gangsal Kabupaten Kudus. Bima Abdi Jurnal Pengabdian Masyarakat 2026-09-19. DOI: 10.53299/ba-jpm.v6i3.5344. 原著ライセンス:CC BY.