著者の所属・活動拠点の国は、モルドバです。

掲載誌:Ukrainian Food Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

果汁や油をしぼった後に残る果実の搾りかすには、色素や抗酸化成分がまだ多く含まれています。モルドバ工科大学の研究チームは、こうした食品加工の副産物を有効に使う方法として、シーバックソーン(サジー、学名ヒッポファエ・ラムノイデス)の搾りかすに着目しました。

シーバックソーンの果実は、黄色やオレンジ色の色素であるカロテノイドを豊富に含みます。カロテノイドは油に溶けやすく水には溶けにくい性質を持ち、光や酸素にさらされると分解しやすいことが知られています。そこで著者らは、搾りかすから植物油を使ってカロテノイドに富む抽出物を取り出し、脂肪分の多い食品であるバターに加えることを試みました。抽出の条件が成分にどう影響するか、また抽出物を加えたバターの品質がどう変わるかを調べています。

抽出のしかたと成分の違い

研究チームは、乾燥させて細かく粉砕した搾りかすを、ひまわり油と食品用エタノールを混ぜた液に入れ、超音波を当てて成分を抽出しました。油とエタノールの比率を65対35から35対65まで5段階に変え、油だけで抽出した場合とも比べています。抽出後はエタノールを取り除き、成分がひまわり油に移った抽出物を得ました。

抽出物については、ルテインやゼアキサンチンといった個別のカロテノイド、カロテノイドの総量、ポリフェノールなどのフェノール類の総量を測定しました。あわせて、試験管内でフリーラジカルと呼ばれる不安定な分子を消去する力を2種類の方法で調べ、抗酸化能の指標としています。

論文によると、エタノールの割合を増やすほど、得られる抽出物の量(抽出収率)は減りました。収率が最も高かったのは油の多い65対35の条件で、約81%でした。一方、エタノールの多い35対65の条件では、抽出物1グラムあたりの有効成分の濃度が最も高くなりました。カロテノイド総量は1グラムあたり74.2ミリグラム、ルテインは1.73ミリグラム、ゼアキサンチンは4.44ミリグラムで、フェノール類の量と抗酸化能もこの条件で最も高い値でした。油だけで抽出した場合と比べると、ルテインは約2.7倍、ゼアキサンチンは約2.8倍に増えたと報告されています。

著者らはこの結果を、たくさん取り出すことと、有用成分を濃く取り出すことのあいだにトレードオフがある、と整理しています。油が多い条件は全体の回収量を増やし、エタノールが多い条件は有用成分の選択的な濃縮に向いていました。

バターに加えたときの変化

次に研究チームは、牛乳から分離したクリームに抽出物を0.5%から2.5%の濃度で加え、撹拌してバターを作りました。抽出物を加えないバターと比較し、見た目や味の評価、脂肪の酸化の程度、微生物の状態、硬さなどの食感、色、抗酸化能を調べています。

9人のパネルによる官能評価と、脂肪の酸化の初期段階を示す過酸化物価の測定から、著者らは1.0%を最も適した添加量と判断しました。この濃度で好ましさの評価が最も高く、過酸化物価は最も低い値(脂肪1キログラムあたり0.52ミリ当量)でした。添加量をそれより増やすと香りや味の評価が下がり、酸化の進行も大きくなりました。著者らは、成分を多く加えすぎると製品の品質がかえって下がる可能性があると述べています。

抽出物を加えるほどバターは柔らかくなり、硬さは13〜45%低下しました。色は明るさと黄色みが増しています。融ける温度や、融ける温度と固まる温度の差も、添加量とともに大きくなりました。一方、脂肪の性質を示す指標の一つであるけん化価や、微生物学的な安全性の項目には変化が見られませんでした。バターから油に溶けやすい成分と水に近い性質の成分を別々に取り出して抗酸化能を比べたところ、油に溶けやすい成分の側で活性が高く、脂溶性成分の寄与が大きいことが示されたと報告されています。

この研究が示すこと

この研究は、食品加工で出るシーバックソーンの搾りかすから、食品に使える油とエタノールを用いてカロテノイドに富む抽出物を得られること、そしてそれをバターという脂肪の多い食品に組み込めることを示しました。抽出では回収量と成分の濃さが両立しにくいこと、バターへの添加では多ければよいわけではなく適量があることも、具体的に報告されています。副産物を食品素材として生かすうえで、条件の選び方が品質を左右することを伝える結果といえます。

原著論文の著者・所属:Tatiana Cușmenco(Technical University of Moldova , Chisinau , Republic of Moldova)、Irina Dianu(Technical University of Moldova , Chisinau , Republic of Moldova)、Natalia Netreba(Technical University of Moldova , Chisinau , Republic of Moldova)、Vladislav Reșitca(Technical University of Moldova , Chisinau , Republic of Moldova)、Artur Macari(Technical University of Moldova , Chisinau , Republic of Moldova)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tatiana Cușmenco, Irina Dianu, Natalia Netreba, et al. Vegetable oil-based recovery of carotenoids from sea buckthorn pomace for butter fortification. Ukrainian Food Journal 2026-09-01. DOI: 10.24263/2304-974x-2026-15-3-5. 原著ライセンス:CC BY.