著者の所属・活動拠点の国は、タイ、アメリカです。
掲載誌:Food & Nutrition Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
砂糖を加えた甘い飲料(加糖飲料)の摂取は、肥満や心血管の健康問題との関連が指摘されています。著者らによると、タイはアジアで肥満の割合が最も高い国で、国の報告では1日あたりの砂糖摂取量が推奨量を上回っています。若い成人は加糖飲料を特に多く飲む層とされており、研究チームは大学生の飲み物の摂り方を把握する手段が必要だと考えました。
飲食の内容を詳しく知るには、前日に食べたものを聞き取る方法や、食べるたびに記録する方法があります。ただし、どちらも手間と人手がかかります。そこで、飲み物の種類と頻度を短く尋ねる質問票が使われてきました。一方で、既存の質問票には砂糖の含有量の情報が少ないものや、新しい種類の飲料に対応していないものがありました。研究チームは、既存の飲料質問票「BEVQ-15」をタイの大学生向けに改良した質問票(ModBEVQ)を用意しました。そして、この質問票が飲み物の種類・頻度・量を、再現性よく、また妥当に捉えられるかを調べました。
どのように調べたか
調査は2024年2月から4月にかけて、タイのマヒドン大学サラヤキャンパスで行われました。参加を完了した学生は122人です。年齢は18〜34歳で、約8割が女性でした。回答はタイ語と英語のオンラインフォームで集めました。
改良した質問票では、タイの若者に人気のある作りたてのスムージーや、機能性をうたう新しいタイプの飲料などの項目が加えられました。人工甘味料入り、無糖、砂糖入りの区別もはっきりさせ、タイでよく見られる容量を写真で示しました。回答から1日の飲料量を求め、さらに既存の研究にもとづく飲料ごとの砂糖含有量を使って、飲み物からとる砂糖の量を推定しました。
比べる基準には「4日間の飲料記録」を使いました。参加者は4週間にわたり週1日ずつ、平日3日と週末1日、飲んだものとその量を、その時点かできるだけ早く記録しました。飲み物の写真の提出も求められました。質問票は1週目と最終週の2回実施しました。2回の回答がどれだけ一致するか(再現性)と、記録の結果とどれだけ対応するか(相対的妥当性)を、相関や一致度を示す統計指標で評価しています。
主な結果
飲料の総量について、質問票1回目と2回目の相関係数は0.74、質問票と記録の相関は0.56でした。飲み物由来の砂糖の総量では、それぞれ0.72と0.61でした。著者らの基準では、2回の回答の再現性は「強い」、記録との対応は「良好」の範囲にあたります。加糖飲料についても、量と砂糖量の両方で同じような水準の結果が報告されました。
飲み物の種類による差もはっきり出ました。水、炭酸飲料、ミルク入りのお茶・コーヒーミックスのように日常的によく飲まれるものは、2回の回答の一致度が高めでした。これに対し、果汁飲料やエネルギー飲料・スポーツ飲料、新しいタイプの飲料では、一致度や記録との対応が低くなりました。著者らは、こうした飲み物はたまにしか飲まれず、時期によって摂取量が大きく変わりやすいことが一因かもしれないと述べています。
質問票と記録の差を個人ごとに調べると、平均では質問票の値がやや少なめに出る傾向がありました。ただ、その差は小さいものでした。一方、個人ごとの差のばらつきは大きく、特に飲料の量で目立ちました。飲む量が多い人ほど差が広がる傾向も見られました。
この研究が示すこと
著者らは、この質問票は大学生の集団の平均的な飲料量や飲み物由来の砂糖摂取量を推定する用途には役立つ可能性があると結論づけています。その一方で、個人の食事評価や臨床的な判断に使えるほどの精度はないとしています。
この研究からは、短い質問票でも集団の傾向をつかむ手がかりになることが分かります。同時に、たまにしか飲まない飲み物ほど正確に捉えにくいという課題も見えてきます。なお、参加者は1つの大学の学生で女性が多く、調査は暑季と試験期間に重なっていました。著者らは、結果をほかの集団や季節へ広げて考えるには限りがあることにも触れています。
原著論文の著者・所属:Win Lai Khine(Master of Science Program in Nutrition and Dietetics, Institute of Nutrition, Mahidol University, Nakhon Pathom, Thailand)、Wantanee Kriengsinyos(Institute of Nutrition, Mahidol University, Nakhon Pathom, Thailand)、Tippawan Pongcharoen(Institute of Nutrition, Mahidol University, Nakhon Pathom, Thailand)、Nattapol Tangsuphoom(Institute of Nutrition, Mahidol University, Nakhon Pathom, Thailand)、Aree Prachansuwan(Institute of Nutrition, Mahidol University, Nakhon Pathom, Thailand)、Sabri Bromage(nstitute of Nutrition, Mahidol University, Nakhon Pathom, Thailand; Department of Nutrition, Harvard T.H. Chan School of Public Health, Boston, MA, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Win Lai Khine, Wantanee Kriengsinyos, Tippawan Pongcharoen, et al. Comparative validity and reproducibility of questionnaires in assessing types, frequency, and quantity of sweetened beverage consumption among Mahidol University students. Food & Nutrition Research 2026-10-28. DOI: 10.29219/fnr.v70.14204. 原著ライセンス:CC BY.