私たちが食べる牛肉は、牛が何を食べて育つかによって性質が変わることが知られています。特に近年注目されているのが「人間も食べられる穀物を家畜の餌にどれだけ使うか」という問題です。牛に穀物を大量に与えることは、人間の食料と競合する可能性があるため、持続可能性の観点から議論されてきました。今回紹介する研究は、乳用種由来の肥育牛(ベルジアンブルー×ホルスタイン種)を対象に、従来型の穀物飼料と、農産副産物などヒトが食べにくい原料を活用した飼料を比較し、肉質や経済性、持続可能性への影響を調べたものです。

研究でわかったこと

研究チームは、体重205kg前後のベルジアンブルー×ホルスタイン去勢牛24頭を2つのグループに分け、8か月間飼育しました。一方は従来型の穀物ベースの飼料(CTRL群)、もう一方はヘーゼルナッツの皮、スペルト小麦のふすま、コーン胚芽、小麦ミドリングスといった農産副産物と、そら豆(ファバビーン)を組み合わせた低ヒト可食部飼料(EXP群)です。両方の飼料はエネルギーと粗タンパク質の量をそろえてありますが、EXP群の飼料はでんぷんが少なく、食物繊維と脂質が多いという違いがありました。

結果として、EXP群の飼料は動物の成長成績や枝肉の特性を損なうことなく、ヒトが食べられる飼料の摂取量や、枝肉1kgあたりに必要なヒト可食部の投入量を減らせることが示されました。また、EXP群では飼料コストが削減され、資源循環性を示す指標(マテリアル・サーキュラリティ・インデックス)も改善したと報告されています。

肉質については、EXP群の肉はトランス型の18:1脂肪酸やn-3系多価不飽和脂肪酸の割合が高く、18:1 t10/t11比やn-6/n-3系多価不飽和脂肪酸比が低いという結果が示され、これは第一胃内での脂肪酸の水素化(バイオハイドロジェネーション)のパターンが、繊維や植物由来のフェノール類の摂取量の増加によって変化した可能性が示唆されています。さらに、EXP群の肉はCTRL群の肉に比べて抗酸化能が高かったことも報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、農産副産物や牧草を穀物や大豆粕の代わりに用いることで、飼料コストやヒトの食料との競合を抑えつつ、動物の成長成績を維持し、肉質の一部を改善できる可能性を示したものです。ただし、これは特定の牛種・飼料設計・期間で行われた一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。異なる飼料原料や飼育条件、牛の品種によって結果が変わる可能性もあります。また、肉質の変化が実際の健康への影響を意味するかどうかについては、この要旨だけでは判断できません。

まとめ

今回紹介した研究では、農産副産物やそら豆を活用した低ヒト可食部飼料が、乳用種肥育牛の成長成績を保ちながら、飼料コストの削減や資源循環性の改善、さらに脂肪酸組成や抗酸化能といった肉質面での変化につながる可能性が示されました。人間の食料と競合しない飼料資源の活用は、畜産の持続可能性を考えるうえで一つの選択肢として注目されている分野であり、今後さらなる研究の積み重ねが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ヒト可食部投入量の多い飼料と少ない飼料の比較:乳用種肥育牛における肉質と持続可能性への影響(ミート・サイエンス・2026年07月)