この研究は、オーストラリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Clinical Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食品を「工業的な加工の程度と目的」によって分類する枠組みに、Nova分類と呼ばれるものがあります。この分類から導かれた公衆衛生上の提言、すなわち「超加工食品はできるだけ減らすべきだ」という考え方は、現在では各国の食事指針や規制の設計にまで影響を及ぼしています。

著者らは、この枠組みがうまく当てはまらない製品群が臨床の現場に存在することを出発点としています。経口栄養補助食品(ONS)と呼ばれる、病気などで十分に食べられない人が飲む栄養補給用の飲料やゼリーなどの製品です。本論文は、この製品をめぐって生じる緊張関係を検討することを目的としたレビューです。

何を検討したか

著者らはまず、ONSがNova分類の基準に照らして、どの項目から見ても超加工食品(グループ4)に該当することを指摘します。タンパク質分離物、マルトデキストリン、精製油脂、乳化剤、安定剤、香料、添加された微量栄養素などから工業的に組み立てられた製品だからです。特別な医療用途向けの食品(FSMP)も同様です。

ところがこれらの製品は、欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)をはじめとする臨床栄養の専門団体によって、疾患に関連した低栄養の予防と治療のために推奨されています。つまり同一の製品が、加工の度合いを基準とする枠組みでは避けるべきものとされ、臨床上の成果を基準とする枠組みでは処方されるべきものとされる、という状況が生まれます。

本レビューはこの食い違いを検討対象とし、ONSがなぜ明確にグループ4に分類されるのかを整理したうえで、臨床的なエビデンスを評価し、さらに、集団レベルでは欠点と見なされる製品特性のいくつかが、臨床ケアの場ではなぜ治療上の道具になりうるのかを考察しています。

主な報告

著者らの評価によれば、エビデンスは栄養摂取量というレベルでの利益については一貫して支持しており、低栄養と判定された特定の集団については臨床的なエンドポイントでの利益も支持しています。一方で、いくつかの重要なアウトカム(hard outcomes)については結果が一貫していない、とされています。

同時に著者らは、ONSへの過度の依存、食物繊維の問題、通常の食事が置き換えられてしまうことへの懸念を、正当な留意点として挙げ、これらは退けるのではなく正面から検討されるべきだとしています。

そのうえで著者らは、利益をもたらしている性質は製品の組成と使用される文脈にあり、工業的な加工はそれを実現するための手段として位置づけられる、と論じます。結論として提案されるのは「文脈を考慮した枠組み」です。Nova分類は集団レベルのシグナルとして保持しつつ、個々の患者のケアにおいては栄養学的な充足性と臨床上の目的を判断の主軸に据える、という考え方であり、著者らはこれが指針づくり、規制、そして情報の伝え方に対して含意を持つと述べています。

この検討が示すこと

同じ製品が、見る枠組みによって「避けるべきもの」にも「必要なもの」にもなりうる。本論文が取り上げたのは、そうした分類の枠組みそのものの適用範囲をめぐる問題です。

集団全体に向けた食事の助言として妥当なことが、特定の状態にある個人の医療の場でもそのまま妥当とは限らない——著者らの議論は、加工という一つの軸だけでは捉えきれない判断の領域があることを示しています。

著者:Jimmy Chun Yu Louie(Department of Biomedical, Health and Exercise Sciences, School of Health Sciences, Swinburne University of Technology, Hawthorn, VIC, Australia. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jimmy Chun Yu Louie. When ultra-processed food is clinically indicated: Oral nutritional supplements and the limits of the nova paradigm in clinical nutrition. Clinical Nutrition 2026-08-26. DOI: 10.1016/j.clnu.2026.106769. 原著ライセンス:CC BY.