この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Current Nutrition Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

スナック菓子や清涼飲料、即席食品など、工業的に高度に加工された「超加工食品(UPF)」の摂取が肥満や糖尿病などの慢性疾患と関連することが近年多く報告されています。イタリア栄養・臨床栄養学会(ADI)は、超加工食品と代謝の健康への影響について、これまでの研究をまとめたポジションペーパー(学会としての見解をまとめた文書)を発表しました。この記事では、その内容を紹介します。

超加工食品とは何か、どう調べられたのか

この文書では、食品を加工度によって4段階に分類する「NOVA分類」という枠組みが使われています。第1群は未加工または最小限の加工にとどまる食品(果物、野菜、豆類、全粒穀物、生肉、魚、牛乳、卵など)、第2群は調理や味付けに使う加工食品原材料(食用油、バター、砂糖、はちみつ、塩など)、第3群は第1群の食品に塩・砂糖・油を加えて保存性や嗜好性を高めたもの(パン、チーズ、缶詰野菜など)です。そして第4群が超加工食品で、家庭での調理にはあまり使われない複数の原材料からなる工業的な調合品とされ、水素添加や加水分解といった化学的な処理や、香料・着色料・乳化剤・安定剤・増粘剤・人工甘味料などの添加物を含み、嗜好性を極限まで高める(ハイパー・パラタブル)ことを狙って設計されているとされています。包装スナック、加糖飲料、工業的な焼き菓子、朝食用シリアル、即席食品、ファストフード、加工肉製品、菓子類、乳幼児・子ども向け食品の多くがこの分類に含まれるとされています。

著者らは2025年1月から2026年1月にかけて、PubMed/MEDLINE、Embase、Scopus、Web of Scienceのデータベースを用い、主に2018年1月から2026年1月に発表された文献を対象に検索を行いました。これはNOVA分類が広く採用されて以降、前向きコホート研究やランダム化比較試験、系統的レビューが急増した時期にあたるとされています。観察研究、ランダム化比較試験、系統的レビュー・メタ解析、分類法に関する合意文書などを対象に含め、成人・小児いずれの集団も検討対象とされました。なお、この文書は形式的なバイアスリスク評価は行っておらず、証拠の質を点数化する手続き(デルファイ法や投票による合意形成など)も用いず、専門家間の議論による全会一致で作成されたナラティブレビュー(見解をまとめた総説)である点が明記されています。

報告されている関連と、考えられている仕組み

本文中では、超加工食品の摂取量が多いことが、肥満、インスリン抵抗性、心血管疾患、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、がん、神経炎症、免疫の乱れなどと関連づけられて報告されています。具体的な数値としては、超加工食品の摂取量が多い人(1日平均7.4サービング)は少ない人(約3サービング)に比べて死亡率が4%高いとする推計や、30〜69歳では超加工食品の摂取が10%増えるごとに死亡リスクが3%上昇するという報告、米国のように摂取エネルギーの50%以上を超加工食品が占める国では早期死亡の約14%が超加工食品の過剰摂取に起因すると推計されるとの記述があります。また、心血管疾患リスクが17%、冠動脈疾患が23%、脳卒中が9%、それぞれ高い摂取と関連していたとも報告されています。がんについては、防腐剤として使われるソルビン酸カリウムの摂取が全体のがんリスクを14%、乳がんリスクを26%高めることと関連し、亜硝酸ナトリウムの摂取は前立腺がんリスクの32%上昇と、硝酸カリウムの摂取は全体のがんリスク13%・乳がんリスク22%の上昇と関連していたなど、個別の添加物ごとの関連も紹介されています。

国・地域による摂取量の違いにも触れられており、イタリアでは超加工食品は食品購入量(重量)としては全体の約6%にとどまる一方、成人・高齢者の総摂取エネルギーの最大23%を占め、2005年の時点で既に増加傾向にあったとされています。米国では総摂取エネルギーの50%超、カナダでは約48%、オーストラリアでは40%超、日本では30%未満と報告されています。ヨーロッパ全体では平均約27%で、英国やスウェーデンでは40〜50%を超え、青少年では60%を超える場合もある一方、ポルトガル・ルーマニア・ドイツでは40%未満にとどまるとされています。

関連する仕組みとしては、腸内細菌叢の多様性低下や腸管透過性の亢進、ミトコンドリア機能障害(酸化的リン酸化の低下、ATP産生の減少、活性酸素種の過剰産生)、炭水化物と脂質のエネルギー利用を切り替える「代謝の柔軟性」の低下、慢性的な低度の炎症などが挙げられています。動物モデルでは、超加工食品中心の食事がAMPKやmTORという細胞のエネルギーセンサーの働きを乱し、脂肪酸のβ酸化を低下させることが示されているとされていますが、著者らはヒトでの直接的な証拠は限られており、これらの経路は「生物学的にもっともらしいが、ヒトで完全に確立された因果関係というよりも、今後さらに検証が必要な仕組みである」と位置づけています。食品添加物についても、カルボキシメチルセルロース(E466)やポリソルベート80(E433)といった乳化剤、スクラロース(E955)やアセスルファムK(E950)といった人工甘味料が腸内細菌叢や糖代謝に影響しうると報告されている一方、多くはヒトでの介入研究が限られ、動物実験や試験管内(ex vivo)の研究に基づく知見であるとも明記されています。また、複数の添加物を日常的に同時に摂取することで単独の安全域を超える可能性がある「カクテル効果」についても言及されていますが、これも「懸念すべき仮説であり、ヒトで確立された機序ではない」とされています。

さらに、超加工食品は砂糖・脂肪・塩・香料・食感調整剤を組み合わせて嗜好性を最大化する「至福点(ブリスポイント)」を狙って設計されているとされ、この高い嗜好性が脳の報酬系(腹側被蓋野や側坐核を含む中脳辺縁系のドーパミン経路)を過剰に刺激し、満腹感の調節やGLP-1・PYY・レプチン・インスリンなどのホルモンによる食欲調節を乱すことで過食を助長する可能性が述べられています。特に子どもや青少年は、実行機能に関わる前頭前皮質が発達途上にあることや、デジタル広告・学校の食環境への曝露が大きいことから影響を受けやすい集団として挙げられています。なお「食品への依存(food addiction)」という概念自体は科学的に議論が続いており、物質依存と同列に扱えるかは意見が分かれるため、本文書ではこの語を「制御不能感や渇望を伴う行動パターン」を指す限定的な意味で慎重に用いていると説明されています。

この研究を読むうえでの注意点

著者ら自身がいくつかの限界を指摘しています。まず、超加工食品と病気リスクとの関連を示す証拠の多くは観察研究に基づくものであり、残余交絡(他の要因の影響を排除しきれないこと)を否定できないとされています。超加工食品の摂取量が多いことは、社会経済的地位の低さ、教育水準の低さ、喫煙、運動不足、睡眠時間の短さ、心理的ストレス、食事の質全体の低さとも関連しやすく、これらの要因が観察された関連にある程度寄与している可能性があると述べられています。また、NOVA分類自体にも限界があるとされ、栄養素や添加物、加工度についての定量的な閾値が定められていないこと、国や文化、食事評価の方法によって分類にばらつきが生じうること、原材料表示が不完全・曖昧な場合に評価者間で判断が分かれうることが挙げられています。加えて、超加工食品に分類される食品群自体が非常に多様であり、エネルギー密度や食物繊維量、たんぱく質の質、添加糖分、脂質組成などが製品ごとに大きく異なるため、栄養価の高い工業製品が超加工食品に分類される一方、最小限の加工の食品でもエネルギー密度が高いものは超加工食品に分類されない、という食い違いが起こりうるとされています。著者らは、NOVA分類は栄養素に基づく従来の評価法に代わるものではなく、それを補完する枠組みとして位置づけるべきだとしています。

まとめ

このポジションペーパーは、超加工食品の摂取が多いことが肥満やインスリン抵抗性、心血管疾患、脂肪肝、がん、神経炎症などのリスクと関連して報告されていることをまとめ、腸内細菌叢の変化や腸管透過性の亢進、ミトコンドリア機能障害、慢性的な低度の炎症などが考えられる仕組みとして挙げられています。著者らは、超加工食品への曝露を減らすことを公衆衛生上の優先課題と位置づけ、予防的な栄養戦略や食品分類制度の改善、教育・規制面での取り組みが必要だとしています。ただし、多くの知見は観察研究や動物実験・in vitro研究に基づくものであり、ヒトでの因果関係を証明するにはさらなる縦断研究や介入研究が必要である点にも著者ら自身が言及しています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):超加工食品と代謝機能障害:メカニズム、臨床的意義、公衆衛生上の視点—イタリア栄養・臨床栄養学会(ADI)ポジションペーパー(カレント・ニュートリション・レポーツ・2026年08月)

著者:Giovanna Trinchese(Department of Biology, University of Naples Federico II, Naples, Italy)、Barbara Paolini(Azienda Ospedaliera Universitaria Senese, Siena, IT, Italy)、Fabiano Cimmino(Department of Biology, University of Naples Federico II, Naples, Italy)、Filippo Valoriani(Azienda Ospedaliero Universitaria di Modena-Policlinico, Modena, Italy)、Lucio Lucchin(Dietetics and Clinical Nutrition, Bolzano Health District, Bolzano, Italy)、Carmela Bagnato(Italian Association of Dietetics and Clinical Nutrition (ADI), Rome, Italy)、A.M. Sabbatini(Dietetic and Clinical Nutrition Unit, IEO European Institute of Oncology IRCSS, Milan, Italy)、Massimiliano Petrelli(Endocrinology and Metabolic Disease Clinic, Azienda Ospedaliero-Universitaria delle Marche, Ancona, Italy)、Pietro Losignore(Italian Association of Dietetics and Clinical Nutrition (ADI), Rome, Italy)、Francesca Marino(Department of Neuroscience, Reproductive Science and Odontostomatology, University of Naples Federico II, Naples, Italy)、Giulia Tavella(Azienda Ospedaliera Universitaria Senese, Siena, IT, Italy)、Sebastiano Banni(Department of Biomedical Sciences, Division of Physiology, University of Cagliari, Monserrato, Cagliari, Italy)、Luigi Barrea(Dipartimento Di Psicologia E Scienze Della Salute, Centro Direzionale, Università Telematica Pegaso, Naples, Italy)、Maria Pina Mollica(Department of Biology, University of Naples Federico II, Naples, Italy)