私たちが日々口にする食品には、目に見えないほど微小なプラスチック粒子「マイクロプラスチック」が含まれていることがあるとされ、その安全性への関心が高まっています。マイクロプラスチックは体内に取り込まれたあと、どのように排出されるのか、あるいはどうすれば効率よく体外に排出できるのかについては、これまで十分な研究がなされていませんでした。今回、ヒトの腸内細菌叢とマイクロプラスチックの排出量との関係に着目した研究が報告されました。
研究でわかったこと
研究チームはまず、138人を対象とした横断的な調査を行い、マイクロプラスチックの排出能力と腸内細菌叢の構成との関連を調べました。その結果、マイクロプラスチックの排出量が少ない人と多い人とでは、「ラクチプランティバチルス・プランタルム」という乳酸菌の存在量やその遺伝的な特徴に違いがあることが観察されたと報告されています。
この知見をもとに、研究チームはマイクロプラスチックの排出量が多かった提供者(ドナー)から、ラクチプランティバチルス・プランタルムPD01株を単離しました。そして、ヒトの実際の摂取状況を反映するように配合した複数種のマイクロプラスチックを含むエサをマウスに与える実験を行ったところ、PD01株を腸内に定着させたマウスでは、腸管内に残留するマイクロプラスチックの量が、PVC(ポリ塩化ビニル)で66.90%、PET(ポリエチレンテレフタレート)で56.17%、PS(ポリスチレン)で91.35%、PE(ポリエチレン)で49.97%、それぞれ減少したとされています。
さらにこの菌株は、腸のバリア機能(腸管の壁が異物の侵入を防ぐ働き)を強化し、短鎖脂肪酸(腸内細菌が作る有用な代謝産物)の産生を促し、炎症を和らげ、マイクロプラスチックによって乱れた腸内細菌叢のバランスを整える働きも示したと報告されています。加えて、培養細胞を用いた実験ではPD01株がマイクロプラスチックを吸着する高い能力を持つこと、ヒトの腸管由来細胞(Caco-2細胞)をマイクロプラスチックによる損傷から保護すること、線虫(Caenorhabditis elegans)においてマイクロプラスチックの体内への移行を減少させることも確認されたとしています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ヒトの腸内細菌叢の特徴とマイクロプラスチックの排出量との関連を示すとともに、マウスや培養細胞、線虫を用いた実験系でPD01株の働きを検証したものです。ヒトでの排出量の違いに関する部分は横断的な観察研究であり、また実際に効果が確認されたのは主に動物・細胞・線虫を用いた実験であるため、ヒトがこの菌株を摂取した場合に同様の効果が得られるかどうかは、この要旨の範囲では示されていません。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意する必要があります。
まとめ
今回の研究では、マイクロプラスチックの排出量が多い人の腸内細菌叢に特徴的な乳酸菌が存在すること、そしてその菌株であるラクチプランティバチルス・プランタルムPD01が、マウスや培養細胞、線虫を用いた実験でマイクロプラスチックの体内残留や毒性を軽減する可能性が示唆されたと報告されています。研究チームは、マイクロプラスチックの体内蓄積や毒性を減らすためのプロバイオティクス(体に良い影響を与えるとされる微生物)を用いた戦略の一つとして、この知見を提案しています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:高排出ドナー由来のラクチプランティバチルス・プランタルムPD01はマイクロプラスチック毒性に対する天然の防御機能を持つ(エヌピージェイ・サイエンス・オブ・フード・2026年08月)