著者の所属・活動拠点の国は、パキスタン、オーストラリア、サウジアラビア、ベトナムです。

掲載誌:Cogent Food & Agriculture

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ菌類に注目するのか

持続可能で栄養があり、環境への負担が小さい食料システムへの需要が世界的に高まっています。こうした中、家畜に頼る従来の食料生産に代わる手段として、菌類を活用するバイオテクノロジーへの関心が強まっています。著者らは、この分野の最近の進展をまとめるために本総説を発表しました。総説とは、新しい実験の報告ではなく、既存の研究成果を集めて整理・議論する種類の論文です。

論文によると、菌類はこの目的に適しています。成長が速く、物質を作り変える代謝の働きが多様で、安価で再生可能な材料を栄養源にして育つことができるからです。菌類はすでに、代替タンパク質、工業用の酵素、機能性食品の原料などの生産に使われています。

総説が取り上げた内容

抄録によれば、本総説は主に五つの話題を扱っています。菌類を使った加工技術の最近の進展、菌類が物質を変換する仕組み、代替タンパク質の生産、食品安全上の注意点、そして今後の技術革新です。

加工技術としては三つの発酵法が挙げられています。固体発酵は、水分の少ない固体の材料の上で菌を育てる方法です。液内発酵は、液体の培地の中で菌を育てる方法です。精密発酵は、微生物に特定の成分を作らせることを目指す発酵法です。

主な論点

著者らは、これらの技術の進展によって、農業や食品産業から出る残さを、タンパク質を多く含む菌体やその他の価値ある製品に変える効率が高まってきたと述べています。こうした取り組みは、廃棄物を資源として生かすことにもつながります。さらに、資源を循環させる「循環型バイオエコノミー」に基づく食料システムづくりにも役立つと位置づけています。

一方で、論文は食品安全を引き続き重要な課題としています。菌類の発酵では、ほかの微生物の混入、菌が作るかび毒(マイコトキシン)、アレルギーを起こす性質への厳しい管理が求められます。規制を守ることも必要です。著者らは、これらが消費者に受け入れられるための前提になると指摘しています。

この総説が示すこと

本総説は、菌類を持続可能な食料システムに欠かせない担い手と位置づけています。そのうえで、生産技術の可能性と、安全性を確保する必要性の両面を整理しています。菌類による食品づくりを考えるうえで、技術の進展と安全管理を一緒に見ることの大切さを伝える内容といえます。

原著論文の著者・所属:Zainab Javed(Institute of Molecular Biology and Biotechnology (IMBB), The University of Lahore)、Ayesha Farooq(Institute of Molecular Biology and Biotechnology (IMBB), The University of Lahore)、Abdul Wahab(Faculty of Biological Sciences, Department of Biotechnology, Quaid-i-Azam University)、Maira Farooq(Institute of Molecular Biology and Biotechnology (IMBB), The University of Lahore)、Rafay Ali Syed(Faculty of Biological Sciences, Department of Biotechnology, Quaid-i-Azam University)、Zeshan Younas Abbasi(Department of Biological Sciences, International Islamic University, Islamabad, Pakistan)、Thao T. Ninh(Centre for Horticultural Science, Queensland Alliance for Agriculture and Food Innovation, The University of Queensland)、Jameel M. Al-Khayri(Department of Agricultural Biotechnology, College of Agriculture and Food Sciences, King Faisal University)、Nguyen Thi Phuong Thao(VinUni Bigdata Research Institute, VinUniversity)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zainab Javed, Ayesha Farooq, Abdul Wahab, et al. Fungal bioprocessing for sustainable food systems: Mechanisms, food safety, and alternative protein production. Cogent Food & Agriculture 2026-10-22. DOI: 10.1080/23311932.2026.2735493. 原著ライセンス:CC BY.