この研究は、ブルガリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Open Access International Journal of Academic Research UNIVERSES
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
「登録済み」は何を意味するのか
サプリメントはカプセルや錠剤の形で手軽に買える一方、栄養素や植物成分などを濃縮した形でとるため、量によっては健康上の問題が起こり得ます。また、消費者が、想定された使い方では確かめられていない効果を期待してしまうおそれもあります。
製品を売り出す前の行政手続きは、国によって大きく異なります。しかし、それらはまとめて「登録」と呼ばれがちです。そのため、当局が情報を受け取っただけなのか、販売前に適合性を審査したのか、許可の判断を下したのかが見えにくくなります。著者らはこの点に着目し、ドイツ、ブルガリア、北マケドニア、中国本土の仕組みを比較しました。目的は、各国の市場参入の仕組みが科学的な安全性評価とどう関係しているかを整理し、過剰な行政負担をかけずに健康を守るための実践を見いだすことです。
論文によると、中国の「保健食品」は欧州でいうフードサプリメントと重なる部分はあるものの、法律上の同じ区分ではありません。そのため比較は、法的な定義が同じだという前提ではなく、制度が果たしている役割に注目して行われています。
どのように調べたか
研究チームは、各国の法令、判決、行政当局の公式ガイダンスを、ブルガリア語、ドイツ語、マケドニア語、英語、中国語で調べました。各国について、所管当局、手続きの要件、期間、必要書類、手数料、製品を変更したときの扱い、EU法との関係を整理しています。資料の確認は2026年9月までに入手できたものが対象です。
あわせて医学文献も参照し、安全性の問題を説明する例として三つを取り上げました。ビタミンB6、緑茶抽出物、紅麹です。これらは4か国で同じ製品を比べたものではなく、説明のための例と位置づけられています。また、この研究は網羅的な系統的レビューではなく、対象を絞った叙述的レビューです。人や動物を対象とした調査は含まれていません。
4か国・地域の仕組みと安全性の事例
論文によると、ドイツは届出制です。事業者は遅くとも最初の販売時までに、連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)にラベル見本を提出します。手数料はかかりません。ただし、当局が届出を受け付けたことは、製品が法令に適合していると認めたことを意味しません。効能や安全性を個別に保証するものでもなく、適合の責任は事業者に残ります。
ブルガリアでは、販売前に食品安全庁の登録簿に記載されることが必要です。申請しただけでは登録の代わりになりません。公式の行政サービス案内には、処理期間17日、手数料なしと記載されています。ただし、決まった日数が過ぎれば自動的に販売できるわけではありません。また、製品名や組成が変わった場合は以前の登録が削除の対象となり、改めて登録が必要か検討することになります。
北マケドニアでは、食品獣医庁が組成、量、表示、宣伝資料を審査して「意見」を出し、承認された製品が電子登録簿に記載されます。形式上は意見書ですが、実質的には販売前の適合性審査を経て登録する仕組みだと著者らは整理しています。手数料は1製品あたり2,000マケドニア・デナールです。組成や表示を変えると新しい製品として扱われ、改めて意見を得る必要があります。
中国本土には二つの経路があります。一つは「登録」で、安全性、健康機能、品質管理の可能性を審査します。もう一つは、認められた原料目録に沿った製品向けの「届出(備案)」です。届出でも技術資料や試験が求められるため、ドイツのラベル届出と同じものではありません。2023年の健康機能目録には24の機能が定められています。ラベルには、製品が医薬品の代わりにならないことの記載が求められます。さらに当局の指針では、最小販売包装の主要表示面の20%以上を警告表示に充てるよう定めています。
安全性の事例について、論文は次のような報告を紹介しています。欧州食品安全機関(EFSA)は2023年、末梢神経障害を根拠に、成人のビタミンB6の耐容上限量を1日12mgと定めました。これは食事も含めた総摂取量の目安で、個々のサプリメントに自動的に適用される上限ではありません。緑茶抽出物については、成分EGCGを1日800mg以上補給した介入研究で肝機能の指標の上昇がみられ、安全な補給量は特定できませんでした。EUは対象となる抽出物について1日800mg未満という制限を設けましたが、著者らは、この数値を科学的に確立した安全な値と言い換えてはならないと注意しています。紅麹については、モナコリンKが1日3mgという少ない摂取量でも筋肉や肝臓への重い影響が報告されており、それより少ない量での安全性も確かめられていません。
このほか論文は、米国の救急外来データからサプリメント関連の有害事象による受診が年間約2万3,000件と推計した研究を紹介しています。ただし、この推計を今回の4か国に当てはめることはできないとしています。また、ビタミンD3を1日2,000IU摂取しても、研究対象集団でがんや主要な心血管イベントが有意に減らなかった臨床試験も取り上げました。これらを通じて、販売が認められていることと、臨床的な効果が示されていることは別だと説明しています。
研究が示すこと
著者らは、行政上の位置づけや規制上の用量の上限があっても、それだけで誰にとっても安全だとは言えず、治療効果が示されたことにもならないと結論づけています。安全性は具体的な用量と使い方に照らして、効果は具体的な表示内容と対象者に照らして、それぞれ評価する必要があるという考え方です。
そのうえで論文は、望ましい実践として次の点を挙げています。規制上の位置づけを分かりやすく示すこと、求める証拠を明確で釣り合いのとれたものにすること、警告をはっきり表示すること、製品の変更を管理すること、最新の毒性学的知見に基づいて定期的に見直すこと、販売後の監視を行うことです。中国の健康機能評価は比較のための独自の視点を加えるものの、健康上の成果で優れていることを示すものではないとしています。
4か国・地域の手続きの違いと実際の健康被害との関係を比べられるデータはなく、どの制度が優れているかは今回の研究では判断できない、と著者ら自身が限界として述べています。この研究から読み取れるのは、「届出済み」や「登録済み」という表示が何を確認したもので、何を保証していないのかを正しく理解することの大切さです。
著者:Mihail Petrov Mihaylov(Skin Line, Sofia, Bulgaria)、Kire Stojkovski(PSI-CRO,Sofia,Bulgaria)、Stanislav Malchev(Faculty of Public Health “Prof. Dr. Tzecomir Vodenitcharov”, Medical University of Sofia, Bulgaria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mihail Petrov Mihaylov, Kire Stojkovski, Stanislav Malchev. Food supplement safety and market entry in Germany, Bulgaria, North Macedonia and China. Open Access International Journal of Academic Research UNIVERSES 2026-10-01. DOI: 10.59710/oaijoaru264332pm. 原著ライセンス:CC BY.