著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
思春期から青年期にかけては、体が急速に成長し、学業や人間関係の負担が増え、気持ちが揺れやすい時期です。研究チームは、この年代の不安や抑うつの症状、そして自分の体への満足感が、ふだんの食事の取り方とどう結びついているのかを調べました。
著者らによると、これまでの研究は気分の症状と体のイメージを別々に扱うことが多く、個々の食品に注目したものが中心でした。食事全体の傾向と、体への満足感、不安症状、抑うつ症状を一つの枠組みでまとめて検討した研究は、中国の若者についてはまだ限られていました。そこで本研究は、親の仕事と家庭の両立の難しさなど、独特の家庭環境に置かれている可能性がある医療従事者の子どもを対象に、これらの関連を検討しました。
何をどのように調べたか
調査は2025年7〜9月に、中国・浙江省の4つの病院を通じて対面で行われました。分析の対象は、世界保健機関(WHO)が「若者」と定義する10〜24歳に当たる医療従事者の子ども584人です。ある一時点の状態を調べる横断研究のため、どちらが原因でどちらが結果かは判断できません。
食事については、過去1か月に10種類の食品をどのくらいの頻度で食べたかを尋ね、点数にしました。肉、魚、野菜、果物、卵、大豆製品、乳製品をよく食べるほど点数が高くなり、漬物、甘い食べ物や飲み物、揚げ物は、食べる頻度が低いほど点数が高くなる仕組みです。この「食事頻度スコア」は10〜40点の範囲をとります。
体への満足感は、外見や体型、体重などについて今どう感じているかを尋ねる質問票で測りました。そして、参加者全体の中央値以上の人を「体への満足感が高い」群としました。不安症状と抑うつ症状は、よく使われる短いスクリーニング用の質問票で評価し、一定の点数以上を「症状あり」としています。これは症状の有無をふるい分ける目安であり、病気の診断ではありません。
分析では、性別、年齢、学校段階、居住地、親の学歴、家庭の経済状況、睡眠時間、SNSの利用時間、座っている時間、運動時間、体型、親の生活習慣などの影響を統計的に調整しました。そのうえで、食事頻度スコアが1標準偏差(集団の中でのばらつきの目安となる幅)高いごとに、各結果の起こりやすさ(オッズ)がどう変わるかを推定しました。さらに、食事と気分の症状の関連のうち、どの程度が体への満足感を介して統計的に説明できるかも調べました。
主な結果
参加者のうち、不安症状のスクリーニングで陽性だった人は23.1%、抑うつ症状で陽性だった人は33.6%でした。
さまざまな要因を調整した後でも、食事頻度スコアが高い人ほど、体への満足感が高い群に入るオッズが高いという関連がみられました。スコアが1標準偏差高いごとに、そのオッズは約1.21倍でした。一方、不安症状があるオッズは約0.65倍、抑うつ症状があるオッズは約0.84倍で、スコアが高いほど症状を持つ人の割合が低い傾向が示されました。これらの関連は、スコアの範囲全体でおおむね直線的でした。また、年齢、性別、生活習慣などで分けたグループの間で、関連の強さに明確な違いは認められませんでした。
体への満足感を介した部分は小さいものでした。著者らの推定では、食事頻度スコアと不安症状の関連のうち約6.8%、抑うつ症状との関連のうち約17.3%が、体への満足感を通じた経路として統計的に説明されました。ただし、逆向きの経路を想定した追加の分析では、気分の症状が先にあって食事や体への満足感に影響するという逆方向、あるいは双方向の関係も否定できないと報告されています。
食品ごとにみると、関連は一様ではありませんでした。体への満足感とは乳製品、魚、果物との関連が比較的強くみられました。不安症状とは肉、魚、野菜、果物をよく食べることや揚げ物の少なさとの関連が、抑うつ症状とは果物、肉、魚との関連が目立ちました。なお、著者らは、肉については赤身肉や加工肉などを区別していないため、慎重な解釈が必要だとしています。
この研究が示すこと
この研究は、医療従事者の子どもである中国の若者の間で、さまざまな食品をよく食べ、甘いものや揚げ物、漬物を控える食べ方をしている人ほど、体への満足感が高く、不安や抑うつの症状が少ない傾向にあることを示しました。また、その関連のごく一部は、体への満足感と結びついている可能性があることも示されました。
ただし、これは一時点の調査でみられた関連であり、食事を変えれば気分が良くなるといった因果関係を示したものではありません。著者らは、今回の結果を中国のほかの若者に一般化することはできないと述べています。食事と体のイメージ、心の状態が互いに関わり合っている姿を、特定の集団について一つの枠組みでとらえた報告といえます。
著者:Tingke Xu(Department of Health Information, Sir Run Run Shaw Hospital, Zhejiang University School of Medicine)、Rongxiu Ding(School and Hospital of Stomatology, Wenzhou Medical University)、Chao Lin(Department of Clinical Laboratory, Key Laboratory of Clinical Laboratory Diagnosis and Translational Research of Zhejiang Province, The First Affiliated Hospital of Wenzhou Medical University)、Qiuhua Zhang(Department of Health Information, Sir Run Run Shaw Hospital, Zhejiang University School of Medicine)、Pan Ding(School of Public Health, Wenzhou Medical University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tingke Xu, Rongxiu Ding, Chao Lin, et al. Dietary frequency, body satisfaction, anxiety symptoms, and depressive symptoms among offspring of healthcare workers in China. Frontiers in Nutrition 2026-10-15. DOI: 10.3389/fnut.2026.1908874. 原著ライセンス:CC BY.