著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:BMC Public Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:シフト勤務の日に食事はどう変わるか
工場で大量に作られ、添加物や加工工程を多く経た食品は「超加工食品」と呼ばれます。菓子類、甘い飲料、加工済みの軽食などがその例です。超加工食品は多くの国で毎日のエネルギー摂取に占める割合が大きく、肥満や心血管疾患、2型糖尿病などのリスクと関連することが報告されてきました。
夜勤を含む交替制で働く医療従事者は、食事の時間が不規則になりやすい職種です。夜間の病院では自動販売機など手軽に買える軽食に頼りがちで、その多くは高エネルギーの加工食品です。ただし、シフト勤務と食事の関係を調べたこれまでの研究の多くは、ある時点で異なる人どうしを比べる横断研究でした。この方法では、もともとの個人差の影響を取り除きにくいという問題があります。
そこで研究チームは、同じ人をシフト勤務日と通常勤務日の両方で調べる「被験者内デザイン」を用いました。各参加者が自分自身の比較対照になるため、個人差の影響を減らせます。研究の目的は、2種類の勤務日で、超加工食品から摂るエネルギーの割合と食事の質を比べることでした。
何をどのように調べたか
対象は、トルコで交替制勤務に就く医療従事者60人です。参加者は自発的な参加者の中から集められ、平均年齢は約34.5歳でした。65%が男性で、半数余りが看護師でした。全員が週40時間勤務しています。通常勤務日は8時から16時までの日勤、シフト勤務日は16時から翌朝8時までの16時間勤務と定義されました。
食事内容は、訓練を受けた栄養士が対面で聞き取りました。方法は、前日24時間に食べたものを思い出してもらう「24時間思い出し法」です。各参加者について、シフト勤務日2日と通常勤務日2日の計4日分を記録しました。聞き取りの際は、夜食や職場での飲み物のように忘れられやすいものを特に確認しました。季節による違いを避けるため、調査は夏の2か月間に行われました。
食品は、加工の度合いで食品を4群に分ける「NOVA分類」で整理されました。そのうえで、1日の総エネルギーのうち超加工食品が占める割合を計算しました。食事の質は「国際食事質指標(DQI)」で評価しました。DQIは、食品の多様さ、栄養の充足、摂りすぎの抑制、全体のバランスを合計して0〜100点で表す指標で、点数が高いほど質の良い食事を意味します。さらに、年齢、性別、BMI、栄養教育の有無を考慮した回帰分析で、超加工食品の割合と食事の質の関連を勤務日ごとに調べました。
主な結果:シフト勤務日は超加工食品の割合が増え、食事の質との負の関連が目立った
シフト勤務日には、ほとんどの参加者がカフェイン飲料(96.7%)や甘い軽食(88.3%)の摂取が増えたと答えました。主な食事の回数は減り、シフト勤務日には昼食を抜く人が多くみられました。
1日の平均エネルギー摂取量は、通常勤務日の約2827kcalに対し、シフト勤務日は約2625kcalと少なくなっていました。一方で、栄養の中身は変化していました。エネルギーに占める炭水化物の割合は約51.9%から約47.6%に下がり、脂質は約33.0%から約37.3%に上がりました。飽和脂肪酸は増え、多価不飽和脂肪酸と食物繊維は減っていました。ビタミンB6、鉄、亜鉛の必要量を満たさない人も、シフト勤務日のほうが多くなっていました。
加工度で見ると、未加工・最小限加工の食品がエネルギーに占める割合は48.5%から42.4%に下がりました。超加工食品の割合は8.6%から11.8%に上がりました。
回帰分析では、シフト勤務日に超加工食品の割合が高い人ほど、食事の質の点数が低いという関連がみられました。年齢などの要因を考慮した後も、この関連は統計的に有意でした。具体的には、超加工食品由来のエネルギー割合が1ポイント高いごとに、DQI総合点が約0.41点低いという関係でした。一方、通常勤務日には、この関連は統計的に有意ではありませんでした。
この研究が示すこと
著者らは、シフト勤務日に摂取エネルギーが減ったことを、意図的な食事の節制と受け取るべきではないと述べています。主な食事を抜いた分が、病院で手に入りやすい高脂肪の軽食や甘い飲料で補われている可能性があると考察しています。
ただし、この研究で示されたのは関連であり、因果関係が確かめられたわけではありません。著者ら自身も限界を挙げています。思い出し法による報告には記憶違いの可能性があり、疲労によって夜食が少なく報告された可能性もあります。また、対象はトルコの1つの医療機関から集めた少人数で、生体指標による裏付けも行われていません。
それでも、同じ人どうしで比べたこの研究は、シフト勤務の日に超加工食品への依存が高まり、それが食事の質の低下と結びついている姿を示しました。著者らは、夜勤中に加工度の低い健康的な食事を手に入れやすくする職場の取り組みが必要だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Azad Ilhan(Faculty of Health Sciences, Department of Nutrition and Dietetics, Van Yüzüncü Yıl University, Van, Tuşba, 65080, Türkiye)、Muhammet Faruk Yiğit(Faculty of Health Sciences, Department of Nursing, Van Yüzüncü Yıl University, Van, Türkiye)、Yücel Büyükdere(Kulu Faculty of Health Sciences, Department of Nutrition and Dietetics, Selçuk University, Konya, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Azad Ilhan, Muhammet Faruk Yiğit, Yücel Büyükdere. Ultra-processed foods consumption and diet quality during shift work among healthcare workers: a within-subject design. BMC Public Health 2026-07-29. DOI: 10.1186/s12889-026-28697-z. 原著ライセンス:CC BY.