この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
中国では過去数十年で食生活が大きく変わり、同時に過体重や肥満の人も増えてきました。中年期以降は体の組成やエネルギー代謝が変わり、慢性疾患も重なりやすいため、体脂肪の蓄積による影響を受けやすい年代とされています。一方で、この年代の食事の組み合わせが長期間にどう移り変わり、それが肥満とどう関係しているかは、十分に分かっていませんでした。
研究チームは、中国南部沿岸の広東省に注目しました。広東の伝統的な食事は、魚介類や新鮮な野菜、スープ料理が多く、多様な食材を組み合わせるのが特徴とされます。一方で、この地域は急速な経済成長と都市化を経験してきました。著者らは、45歳以上の住民を対象に2002年から2022年までの食事パターンの変化を明らかにし、その食事パターンと過体重・肥満、さらに腹部に脂肪がたまる「腹部肥満」との関連を調べることを目的としました。
何をどのように調べたか
分析には、中国全国栄養調査のうち、2002年、2012年、2015年、2022年の4回分の広東省のデータを用い、45歳以上の8502人を対象としました。食事の内容は、平日2日と休日1日の計3日間について前日に食べた物を聞き取る方法と、家庭の食品を調査日の始めと終わりに量る方法を組み合わせて把握しています。
食品は米、肉、魚介類、乳製品、果物、野菜などの23の食品群に分類しました。そのうえで、食べ方が似ている人どうしを統計的にグループ分けする「クラスター分析」を使い、典型的な食事パターンを導き出しました。肥満の判定には中国の基準を用いています。45〜79歳では、体格指数(BMI)が24.0〜27.9を過体重、28.0以上を肥満としました。腹部肥満は、腹囲が男性90センチ以上、女性85センチ以上と定義しています。
食事パターンと肥満の関連は、年齢、性別、調査年、居住地域、学歴、所得、喫煙、飲酒、身体活動量、総エネルギー摂取量などの影響を統計的に考慮して分析しました。結果は「オッズ比」で示されています。オッズ比は、比較の基準となる集団と比べて、ある状態がどの程度見られやすいかを表す指標です。
主な結果
分析の結果、3つの食事パターンが見いだされました。1つ目は、米や米製品、動物性油脂、塩が多く、植物油、魚介類、乳製品、肉、果物が比較的少ない「伝統的穀物中心型」です。2つ目は、多くの食品群で摂取量が中間的な「移行期の混合型」です。3つ目は、卵、乳製品、魚、肉といった動物性食品と果物・野菜が多く、米製品や動物性油脂が少ない「動物性食品が豊富な多様型」です。
20年間で、伝統的穀物中心型の割合は2002年の15.8%から2022年には0.4%まで減りました。反対に、動物性食品が豊富な多様型は19.2%から47.0%に増えました。移行期の混合型は期間を通じて最も多いパターンでしたが、調査年ごとに増減があり、一定方向の変化は見られませんでした。どのパターンについても、時間に伴う変化は統計的に有意だったと報告されています。
肥満との関連では、伝統的穀物中心型と比べて、移行期の混合型では過体重・肥満のオッズが約1.57倍、動物性食品が豊富な多様型では約1.42倍でした。腹部肥満でも同様の傾向があり、オッズ比はそれぞれ約1.54と約1.35でした。過体重と肥満を分けて見ると、動物性食品が豊富な多様型は肥満とは有意に関連していましたが、過体重のみとの関連は統計的に有意ではありませんでした。
食事パターンは生活背景とも結びついていました。伝統的穀物中心型の人は農村部の住民が多く、所得や学歴が比較的低く、身体活動量は高い傾向がありました。動物性食品が豊富な多様型の人は都市部の住民が多く、社会経済的な条件に恵まれていましたが、身体活動量は低い傾向にありました。
著者らは、結果を慎重に解釈する必要性も示しています。高血圧、糖尿病、脂質異常症のある人を除いて分析すると、食事パターンと過体重・肥満の関連は弱まり、統計的に有意ではなくなりました。また、この研究は各時点の状態を調べた横断的な分析です。そのため、食事が肥満の原因であると示したわけではなく、ほかの要因の影響や、肥満や病気が食事を変えたという逆向きの関係も完全には否定できないとしています。
研究が示すこと
この研究は、広東省の中高年の食事が20年間で、米中心の伝統的な食事から、動物性食品を多く含む多様な食事へと大きく移り変わったことを示しました。同時に、伝統的な食事に比べて、移行期の食事や動物性食品が豊富な食事は、過体重・肥満や腹部肥満と関連していました。
著者らは、食品の種類が多いことだけでは、より健康的な食事であるとは限らない可能性を指摘しています。肥満対策を考える際には、食事全体の構成とエネルギーの収支に目を向けることが重要になりうると論文は結論づけています。
著者:Shuaijing Zhang(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Yunkai Lin(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Jianhang Li(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Jiewen Peng(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Jian Wen(Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Zihui Chen(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Qi Jiang(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Panpan Huang(Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Xingfen Yang(NMPA Key Laboratory for Safety Evaluation of Cosmetics, Guangdong Provincial Key Laboratory of Tropical Disease Research, School of Public Health, Southern Medical University, Guangzhou 510515, China)、Guiyuan Ji(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)、Wei Wu(Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou 511400, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shuaijing Zhang, Yunkai Lin, Jianhang Li, et al. Temporal Transitions in Dietary Patterns and Their Associations with Overweight and Obesity Among Middle-Aged and Older Adults in Southern China: Evidence from Four Rounds of Nutrition Surveillance, 2002–2022. Nutrients 2026-09-29. DOI: 10.3390/nu18193222. 原著ライセンス:CC BY.