著者の所属・活動拠点の国は、クロアチアです。

掲載誌:Microorganisms

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

テナシバキュラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)は海水魚に病気を起こす重要な細菌で、世界各地の養殖場で病気の集団発生を引き起こしています。抗菌薬が効きにくくなる「薬剤耐性」への懸念もあります。

研究チームは、クロアチアの海水魚養殖場から分離されたこの細菌について、遺伝的な多様性、表面の構造から予測される型(血清型)、抗菌薬への効きやすさ(感受性)を調べました。

調べた内容と方法

対象は、ヨーロピアンシーバスの稚魚とタイセイヨウサケから得られた8株です。研究チームは各株の全ゲノム(すべての遺伝情報)を解読し、複数の遺伝子の配列パターンで株を分類する手法(MLST)や、系統関係・株間で共有される遺伝子群の解析を行いました。

さらに、細菌表面の「O抗原」をつくる遺伝子群の型から血清型を予測しました。また、実際に細菌を培養して抗菌薬がどの程度の濃度で増殖を抑えるか(最小発育阻止濃度)などを調べ、あわせてゲノム上で薬剤耐性や病原性に関わる遺伝子を探索しました。

主な結果

8株は遺伝的に非常によく似ており、ゲノム全体の塩基配列の一致度を示す指標(ANI)は99%を超えていました。一方で、MLSTでは6つの配列型に分かれ、そのうち4つはこれまで報告されていない新しい型でした。

予測された血清型は2種類で、8株中6株がO3型、残る2株がO2型でした。

抗菌薬の試験では、多くの薬剤で低い濃度でも増殖が抑えられ、全体として効きやすい傾向が見られました。ただし、すべての株でゲンタマイシンという抗菌薬への感受性が低下しており、増殖を抑えるのに必要な濃度が高く、試験で生じる増殖阻止の範囲も一貫して小さいものでした。

ゲノム解析では、薬剤耐性に関連しうる遺伝子は限られた種類しか見つからず、いずれも株間で保存されたものでした。調べた株の間で、外部から獲得した薬剤耐性遺伝子が広く存在する証拠は見られなかったと報告されています。また、細菌が他の細胞へタンパク質を送り込む仕組み(VI型分泌系)に関わるものを含め、病原性に関連する遺伝子はよく保存されていました。

この研究が示すこと

著者らは、今回の結果をクロアチアの海面養殖場に由来するテナシバキュラム・マリティマムについての初期的な、遺伝情報と性質の両面からの特徴づけと位置づけています。そのうえで、より大規模で代表性のある株の集団を用いた今後の調査の土台になるものだとしています。

原著論文の著者・所属:Dorotea Grbin(Laboratory for Aquatic Animal Diseases, Croatian Veterinary Institute, Savska Cesta 143, 10000 Zagreb, Croatia)、Snježana Zrnčić(Laboratory for Aquatic Animal Diseases, Croatian Veterinary Institute, Savska Cesta 143, 10000 Zagreb, Croatia)、Matea Alfier(Laboratory for Aquatic Animal Diseases, Croatian Veterinary Institute, Savska Cesta 143, 10000 Zagreb, Croatia)、Dražen Oraić(Laboratory for Aquatic Animal Diseases, Croatian Veterinary Institute, Savska Cesta 143, 10000 Zagreb, Croatia)、Ivana Giovanna Zupičić(Laboratory for Aquatic Animal Diseases, Croatian Veterinary Institute, Savska Cesta 143, 10000 Zagreb, Croatia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dorotea Grbin, Snježana Zrnčić, Matea Alfier, et al. Genomic Diversity, Predicted Serotype Distribution, and Antimicrobial Susceptibility of Tenacibaculum maritimum from Croatian Marine Aquaculture. Microorganisms 2026-11-03. DOI: 10.3390/microorganisms14112522. 原著ライセンス:CC BY.